「国民の借金」の誤解を解く 国債の9割を国内が保有する「還流構造」の限界点

2026年2月21日 14:24

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記事提供元:エコノミックニュース

1000兆円超の借金、実は「貸している」のはあなた?銀行・年金を通じて国債を支える日本独自の資金循環

1000兆円超の借金、実は「貸している」のはあなた?銀行・年金を通じて国債を支える日本独自の資金循環[写真拡大]

今回のニュースのポイント

・権者の正体:国債の多くは国内の銀行、生保、年金基金、そして日本銀行が保有している

・金の還流システム:国民の預金が銀行を通じて国債に変わり、政府支出として再び国民へ戻る「国内循環」

・認のバランス:海外保有比率が低いことが安定の源泉だが、国内貯蓄の取り崩しが進む将来への懸念

 「国の借金が1000兆円を超え、国民一人当たり1000万円の借金を背負っている」。こうしたフレーズは、あたかも私たちがどこか外部の業者から金を借り、将来世代がそれを返済しなければならないという切迫感を与えます。しかし、経済の構造を紐解けば、国民の借金という表現は一面的です。実際には、多くの国民は、銀行や年金を通じて間接的に国に金を貸している側、すなわち債権者に位置しています。

 国の借金の証書である国債の保有者内訳を詳しく見ると、その資金の還流構造が浮かび上がります。2026年現在、最大級の保有者は大規模な金融緩和の結果として国債を買い支えてきた日本銀行ですが、民間部門に目を向けると、銀行、生命保険会社、そして年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が並びます。私たちが銀行に預けている預金や、将来のために払い込んでいる年金保険料。その運用先の一つとして、最も安全な資産と見なされる国債が選ばれているのです。

 ここで重要なのは、お金が国内を回っているという点です。銀行が国債を買うための原資は、私たちが預けた預金です。つまり、政府が国債を発行して公共事業や社会保障を行い、それが誰かの給料になり、また預金として銀行に戻り、再び国債の購入資金となる。この国内還流システムこそが、対名目GDP比で世界最悪水準の債務を抱えながらも、日本がデフォルト(債務不履行)の危機を免れてきた最大の物理的要因です。

 しかし、この構造には二つの大きな前提があります。一つは国内に貯蓄があること、もう一つは国債が安全な資産だと信じられていることです。現在、少子高齢化によって現役世代の貯蓄率が低下し、高齢者が生活のために貯蓄を取り崩すフェーズに入っています。国内の資金余力が縮小し、お金の巨大な回転の勢いが弱まれば、政府はこれまでのように国内の買い手だけに頼ることができず、海外投資家に買ってもらうために高い金利を提示せざるを得なくなるかもしれません。

 破綻論者はいつか限界が来ると言い、安心論者は身内での貸し借りだから問題ないと言います。しかし、どちらの議論も信認という、目に見えない共通認識の上に成り立っています。私たちは、自覚のないまま政府の最大の債権者となり、自分たちの資産の安全性を、国家の財政運営という巨大なシステムに委ねているのです。(編集担当:エコノミックニュース編集部)

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