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2019年レポ市場危機の真実 量的引き締めの「誤算」が生んだ中央銀行依存の起点

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■結論: 中央銀行依存相場は2019年9月に始まった
現在の金融市場がFRB(米連邦準備制度理事会)の政策期待に翻弄される構造は、2019年9月のレポ市場危機を起点とする。
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この危機を境に、中央銀行は短期金融市場の「最後の貸し手」から「常時の貸し手」へと変質し、市場は事実上の中央銀行依存体制へ移行した。
2019年9月17日、翌日物レポ金利は通常2%前後から一時10%近くまで急騰。FRBは量的引き締め(QT)によって銀行準備金の「量」は十分と判断していたが、規制下で実際に市場へ供給できる「質」を見誤った。
その結果、FRBは緊急介入を余儀なくされ、4カ月で約4,000億ドルのバランスシート再拡大に踏み切った。
この出来事はインフレや雇用指標が悪化する前に発生している。QTの影響はまず短期金融市場に現れ、時間差で実体経済へ波及するという因果関係を、この危機は明確に示した。
■事実: 何が起きたのか
2019年9月16日、SOFR(翌日物担保付調達金利)は2.43%だったが、翌17日には5.25%へ急騰し、取引中には最高10%を記録した。同日、FRBは緊急で750億ドルの資金供給を実施。その後、10月から月600億ドル規模の国債買い入れを再開した。
背景には、2017年以降のQTで銀行準備金が約4.5兆ドルから1.5兆ドルへ減少していたことに加え、国債発行や企業の四半期税支払いが重なり、短期的な資金需要が急増したことがある。
■背景: なぜ起きたのか――「量と質」の乖離
FRBの最大の誤算は、準備金の「量」と「質」を同一視した点にある。
金融危機後の規制強化により、銀行は流動性カバレッジ比率(LCR)や補完的レバレッジ比率(SLR)といった制約を受け、帳簿上は存在する準備金でも短期市場へ自由に供給できなかった。
そこに(1)国債の大規模発行、(2)法人税納付期限、(3)規制による銀行行動制約が同時に発生し、短期金融市場の流動性が一気に枯渇した。資金はあったが、動かせなかったのである。
■示唆: 投資家が理解すべき教訓
2019年のレポ市場危機は、金融危機の兆候は指標より先に短期金融市場に現れることを示した。QTの影響は、まずレポ市場に表れ、次に金融環境、最後に雇用や物価といった経済指標へ波及する。指標は原因ではなく結果である。
現在、FRBがQTペースや利下げ時期を慎重に探る背景には、この教訓がある。株式、債券、暗号資産、テック企業の評価に至るまで、現代の資産価格形成は「中央銀行の政策期待」を前提としている。この構造は2019年9月に確立された。
日本ではこの転換点は十分に共有されていない。しかし、グローバル金融市場を理解するうえで、レポ市場危機を知らずして現在の市場構造を語ることはできない。
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