なぜ「金(GOLD)」が今、注目を集めているのか

2025年11月15日 17:12

印刷

 今、「金」に注目が集まっている背景には、世界的なインフレの加速や金融政策の転換、そして法定通貨への信頼性の揺らぎがある。

【こちらも】「有事の金」は2026年も上昇するのか

 金は古くから価値保存手段として扱われてきたが、現代でもその役割は変わらない。むしろ経済の不確実性が高まるほど、金の存在感は増している。所謂、リスクオフの際に注目を浴びるマーケットである。

 まず金は、インフレ対策に適している資産である。一般的にインフレが進行すると、紙幣の価値は下がる。例えば、同じ1万円で買えるものが年々少なくなるように、物価上昇は貨幣価値の低下を意味する。

 しかし金は、市場価値が物価水準とともに上昇しやすく、人々が「価値が減りにくいもの」を求め始める局面において需要が高まり、価格が維持されやすいのである。

 その証拠に、金の価値が長期にわたり安定していることは歴史が証明している。例えば「1オンスの金で買えるものは1000年前も現代も大きく変わらない」と言われる。

 中世の高級な衣服一式が1オンスで買えたように、現代でも高級スーツや上質なコートなど、同等の価値があるものと交換できる。この「時間を超えた価値保存性」は、他の資産には見られない特徴である。

 紙幣(法定通貨)が価値を失いやすい理由も重要だ。法定通貨は中央銀行・政府の判断によっていくらでも数量を調整することができる。近年、金融緩和政策により世界中で貨幣供給量が拡大した結果、通貨価値の信頼性が揺らぎつつある。

 一方で金は採掘量が限られており、人為的に増やすことができない。そういった供給の制約が価値の根底にある。

 さらに注目すべきは、法定通貨や特に米ドルへの信認低下が進んでいる点である。地政学リスク、国際紛争、財政赤字の拡大などにより、国家が発行する通貨そのものの信用が揺れ動いている。

 こうした状況では、通貨価値の下落に備えて資産を金へ逃避させる動きが強まる。実際、各国の中央銀行も金保有量を増加させており、国家レベルでも「通貨へのヘッジ」として金の重要性が再確認されている。

 中央集権的な仕組みに基づく法定通貨の信任が揺らぐ一方で、金のように古代から独立した価値を持つ資産に注目が集まるのは、昨今の世界情勢の激化を鑑みると、むしろ自然な流れとも言える。通貨や金融のシステムが変化し得る現代において、人々は「どの時代でも価値が通じるもの」へ再び目を向け始めているのである。

 総じて、金が注目を集める理由は単なる投機対象としてではなく、資産価値を守る「最後の砦」としての性質にある。不確実性が続く現代において、金は今後も重要な選択肢であり続けるだろう。(記事:Osaka Okay・記事一覧を見る

関連記事