株式分割のIHIが上場来高値更新、その要因は?

2025年10月5日 18:19

印刷

●IHIが株式分割し上場来高値更新

 総合重工業メーカーIHIの株価が、1対7の株式分割の基準日である9月30日に上場来高値を更新し、時価総額も3兆円を超えた。

【こちらも】旧村上ファンドが高島屋株取得、その狙いは?

 値がさ株の一つだったIHIが、株式分割により最低投資金額が大きく低下したことで投資しやすくなり、国内外の投資家から大きく買いが入った。

 IHIの足元の業績が好調であることも、買われる原因となっている。

 一般的に株式分割後は株価が下がると言われるが、IHIが株式分割後に上場来高値を更新した要因は何だろうか?

●IHIが好調な理由

 IHIは、1853年に江戸幕府の命令で創設された日本初の造船所「石川島造船所」が起源で、2007年にそれまでの石川島播磨重工業から、現在の社名であるIHIに社名を変更した。

 主力は民間向け航空エンジンだが、防衛事業も手掛けている。ロシア・ウクライナ戦争以降、国も防衛費を積み増す方針であり、需要の増加が見込まれる。

 2024年3月期は、開発に参画していたP&W社の不具合発生により、追加の検査費用が発生し、赤字に転落した。

 今期は採算が良い民間向け航空エンジンの補修部品の販売が伸びていることや、原子力発電の再稼働で格納容器や圧力容器等が伸びると見られており、追い風が吹いている。

●株式分割で株価上昇?

 8月には、無印を運営する良品計画や、イオンが株式分割を行っている。IHIと同じ10月1日を効力発生日としては、「ドン・キホーテ」などを運営するパンパシフィックHDや、日本製鉄、ニトリHDなど67社が株式分割を実施した。

 東証は株式投資の最低金額の引き下げを推奨しており、今後も株式分割は増えると見られている。個人投資家にとっては、新NISAで買いやすくなるなど、メリットが多い。

 ただIHIのように株式分割後に株価が上昇し、最高値更新するとは限らない。

 野村証券が6月に目標株価を引き上げていたことや、円安も株価を押し上げた原因と考えられる。防衛力強化を掲げる自民党総裁選候補の高市早苗氏が総裁選で勝利することも、念頭にあったのかもしれない。

 株式分割による上昇はあくまで“スパイス”と考えた方がよく、好業績や好材料がベースにあっての上昇と考えた方が良さそうだ。(記事:森泰隆・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事