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【QAあり】タイミー、前期比大幅増収増益 年末年始を中心とした人手不足や物流、小売業界での堅調な利用増加により高成長を持続
【QAあり】タイミー、前期比大幅増収増益 年末年始を中心とした人手不足や物流、小売業界での堅調な利用増加により高成長を持続[写真拡大]
FY25/10 1Q決算ハイライト
八木智昭氏(以下、八木):株式会社タイミー取締役CFOの八木です。本日は決算説明資料に基づいて、まずは私から財務面、数値面を中心にお話しします。その後、中長期戦略の進捗について代表取締役CEOの小川からご説明します。
2025年10月期第1四半期の決算ハイライトです。売上高は86億円でYoY36.2パーセント増の成長となりました。営業利益は14億円で、営業利益率は16.4パーセントでした。平均テイクレートは28.8パーセント、稼働率は84.6パーセントとなり、いずれも高い水準を維持しています。
流通総額は約300億円です。分解要素であるアクティブアカウント(AA)数は20万拠点超、AA当たり流通総額は14万円超となっています。
FY25/10 1Q決算概要及び2Q業績見通し
具体的な内容をスライドにまとめています。
まずは、損益計算書(PL)の概要です。売上高は86.4億円でYoY36.2パーセント増の成長となりました。営業利益は14.1億円で営業利益率が16.4パーセント、かつ成長率がYoY148.7パーセント増と、大幅な増益を達成しています。
売上高については、年末年始が第1四半期に該当するため、年末年始を中心とした深刻な人手不足を背景に、主要3業界(物流、飲食、小売)においてAA数の増加が背景となり、YoYで増収になっています。
一方で、昨年から引き続き、飲食業界はお客さま側でのコストプレッシャーの高まりがあり、従前と同様、小幅な成長にとどまっています。また、昨年12月の通期決算でもご説明したとおり、不正利用対策を今期から重点的に始めています。その影響から、小規模クライアントの利用減退があり、売上高には若干プレッシャーが発生しました。
しかしながら、物流・小売業界をはじめとして堅調な利用増加があったことから、全体としては、売上高は高成長を持続することができています。
コスト面については、2024年10月期第1四半期では、トライアルのかたちでクライアントマーケティングを大幅に実施しています。
また、BPOについてもトライアルで実施しています。こちらは、1年を通して成果が出ているものは継続し、そうでないものはストップするというかたちで、規律を持ったコストマネジメントを昨年から継続しています。
そのため、今期は売上高が増加するとともに、規律を持った投資基準をしっかり遵守していることに加えて、営業生産性の向上、不正利用対策にかかる適切なコストマネジメントを行った結果、営業利益はYoYで大幅な増益を達成しています。
次に、KPIについてです。流通総額は300億円程度と大幅に増加しています。
平均テイクレートは高い水準を維持していますが、物流業界においてボリュームディスカウントを期間限定で実施したことにより、一部でディスカウント幅が増加しています。一方で、飲食・小売業界、その他の業界では約30パーセントを維持しており、引き続き高い水準にあると考えています。
AA数とAA当たり流通総額の詳細については、後ほどご説明します。
最後に、第2四半期の見通しについてです。売上高のレンジは79億円から81億円で、YoY29.4パーセントから32.7パーセントの成長を見込んでいます。営業利益のレンジは16億6,000万円から17億円で、営業利益率は21パーセント、YoY44.2パーセントから47.7パーセント成長を見込んでいます。詳細については後ほどご説明します。
FY25/10 1Q業績見通しと実績の差異について
昨年の通期決算の際に、2025年10月期第1四半期の業績見通しを開示しました。その第1四半期の業績見通しと、今回の実績を比較した結果をスライドに記載しています。
簡単にご説明すると、売上高の見通しはレンジで開示していましたが、レンジの上限をさらに7,000万円上回って86億円で着地しました。競争環境の激化と不正利用対策の影響によりレンジ開示をしていましたが、想定の範囲内にとどまったため、レンジ上限を超過しての着地となりました。
営業利益は、第1四半期のレンジ上限を5億7,400万円上回る14億円で着地しています。こちらの詳細については、諸々分析したスライドがあるため、後ほどご説明します。
営業利益の増減要因(1Q計画対比)
営業利益の増減要因です。スライドでは、第1四半期の計画対比について示しています。左端の8億3,900万円は、レンジ上限の営業利益です。実績は、右端に記載のとおり14億1,300万円です。バーチャートの青色は計画よりコストが少なかったもので、黄色はコストが多かったものです。
大きな要因になったものは、HR費用とクライアントマーケティング費用です。ワーカーマーケティングは、2024年10月期第4四半期に積極的に行っています。その甲斐もあって、第1四半期は稼働率を維持したまましっかり売上を出すことができ、計画対比でコストが減少しています。
加えて、クライアントマーケティングのコストも大幅に減少しました。不正利用対策の影響で小規模クライアントのコンバージョンが低下することを見据えて、規律を持った水準での投資に絞ったことによるものです。
HR費用についても、生産性の向上等により計画対比で減少しました。
FY25/10 2Q業績見通し
第2四半期の業績見通しです。第2四半期は、第1四半期の実績対比では下回る見込みになっています。この要因は、季節性によるものです。
例年2月には大幅に下がる閑散期である、という季節性があります。スライドのグラフは前期の推移ですが、同様の傾向が見られます。第2四半期(2月、3月、4月)には、2月が入っています。3月、4月は一定盛り返すものの、今期も第2四半期は第1四半期よりも下がるトレンドのとおりになる見込みです。
一方で、トップラインが下がるためにコストも少なく済むため、第2四半期は比較的利益率が高く、利益が創出できる四半期になります。そのため、今年についても営業利益はしっかり創出し、営業利益率も21パーセントを見込んでいます。
以上、ハイライトについてお話ししました。続いて、詳細をご説明します。
業績推移(売上高・営業利益)
業績推移です。時間の都合もありますので、ポイントを絞ってお話しします。
第1四半期の通期業績予想対比の進捗率は、売上高が24.2パーセント、営業利益が21.1パーセントとなっています。
売上高は進捗がかなり良く、第2四半期、第3四半期、第4四半期と、引き続きしっかり進めていきたいと考えています。営業利益についても、第1四半期よりも下期に利益が出てくる季節性があるため、第1四半期で21.1パーセントという進捗率は順調だと考えています。
FY25/10 1Q実績
スライドでは、第1四半期実績を前年同期と比較しています。重複するものが多々あるため、全部は読み上げません。
2025年10月期第1四半期の当期純利益は13億円で、前年同期の3億円から、約4倍の増益となっています。この要因は、繰延税金資産の増加によるものです。
昨年は、その前の期が赤字であったこともあり、繰延税金資産を1年分で計上しています。一方で、今後についても安定した黒字を計上できる見込みが立っているため、繰延税金資産は将来分も税金資産として積み増すかたちで、法人税等合計額が減少しているため、当期純利益はYoYで大幅増益となりました。
深刻な人手不足を背景とした順調な流通総額の拡大
KPIの推移についてご説明します。
まずは流通総額です。物流・小売業界では、比較的堅調に推移しています。
スライド右側にYoYの数字を記載しているとおり、飲食業界はYoY5.6パーセント増の成長にとどまっています。昨年から続いているお客さま側でのコストプレッシャーの高まりによって、利用が伸びない状況になっています。
平均テイクレート推移
平均テイクレートは28.8パーセントになっています。こちらを業界ごとに分解したものが、スライド右側のグラフです。飲食・小売業界、その他の業界はほぼ30パーセントを維持していますが、物流業界は27.9パーセントになっています。
この要因は、年末年始に期間限定で行ったボリュームディスカウントの施策において、流通総額が想定以上に増えたことから、ボリュームディスカウント幅も連動して増加したことによるものです。
なお、この施策は期間限定のため、継続するわけではありません。月次の推移グラフのとおり1月には回復し、2月はさらに戻るというかたちで、一過性の傾向だと捉えています。
安定した平均テイクレートに裏打ちされた順調な売上高の拡大
売上高は、平均テイクレートが高い水準を維持しているため、流通総額の拡大にあわせて増加しています。
各主要業界で順調なアクティブアカウント数の積み上げを実現
AA数の推移です。不正利用対策の影響で、小規模クライアントの増加はやや弱くなっており、AA数の増加も若干弱含んでいますが、物流・小売業界を中心に順調に増加しています。
物流業界の強い伸びや小規模クライアントの縮小によりYoY下落幅は大幅縮小
AA数と対になるお話ですが、AA当たり流通総額は14万4,000円とQoQで増加し、YoYでの下落幅は大幅に改善しています。
この要因としては、小規模クライアントの割合が減っていることで、単価が改善していることが挙げられます。スライド右下のグラフのとおり、小規模クライアントの割合が減っていることが見て取れると思います。
もう1つの要因として、物流業界に強い伸びがあったことも挙げられます。昨年は暖冬の影響で物流量が減少し伸び悩みましたが、今年はその影響がなかったため、物流業界でAA当たり流通総額が比較的堅調に推移しています。
コアワーカーの拡大による安定した稼動の実現
コアワーカーの割合についてです。水準、方針、トレンドに大きな変化はありません。第1四半期ではコアワーカーの比率は54パーセントです。2024年10月期第4四半期に獲得した新規ワーカーがコアワーカーになり、順調に推移しています。
安定して高い稼働率を実現
稼働率です。繁忙期にあたる第1四半期は基本的に稼働率が低下する傾向にありますが、高い水準を維持することができています。
YoYで見たコスト比率の改善で安定した営業利益の創出を実現
YoYで見たコスト比率についてです。コストの内訳はスライドに記載のとおりですが、特徴は次の3つです。1つ目に、HR費用のコスト比率はYoYで2.7ポイント低下しています。
2つ目に、クライアントマーケティングのコスト比率が大幅に低下したため、年末年始の繁忙期でワーカーマーケティングにおいて積極的に投資する中でも、マーケティング全体で低下しました。
3つ目に、業務委託料については、BPO費用がYoYで減少するような見直しを行ったことで、コスト比率が低下したことにより、第1四半期の営業利益率が大幅に改善しました。
数字面のご説明は以上になります。
FY25/10 戦略方針(再掲)
小川嶺氏(以下、小川):みなさま、お世話になっています。株式会社タイミー代表取締役CEOの小川です。本日はご参加いただき誠にありがとうございます。ここまで八木からは、売上高の着実な達成と利益の大幅達成という、数字面についてご説明しました。
私からは、今期に関してどのような戦略で進んでいくのか、また、今後どのようにしていくのかについてお話しします。
スライドは、2025年10月期の戦略方針の再掲です。実際にどのような戦略、戦術で動いていくのか、タテ・ヨコ・ナナメの軸で示しています。
「ヨコ」では、AA数をしっかりと戦略的に拡大しています。「タテ」では、AA当たり流通総額を念頭に、ヒューマンリソースも含めて投下しながら、既存企業の深堀りを推進しています。
そして、ナナメの視点では「最大化」を掲げ、稼動率の部分でもしっかりとリフトアップに向けた取り組みを行っています。
加えて、「非連続的な成長」のために、M&Aや海外展開など、さまざまな可能性について、中長期のスパンでは考えていきます。
このような中で、しっかりと中長期成長戦略を掲げて進んでいくことが、今のタイミーが行っていることだと考えています。
AA数 既存大手顧客の拡大:営業担当の伴走による継続的なAA数の拡大
まずは、AA数からご説明します。AA数はコホートでしっかりと積み上がっている状況のため、競合環境が激化する中でも、既存クライアントのしっかりとした拡大ができています。
AA数 ホテル業界:幅広い業務で活用され順調に拡大
ホテル業界については、引き続き高い成長率を保っています。調理補助や洗い場補助、客室清掃やベッドメイキングと業務を分解し、スキマバイトでワーカーが従事している状況です。
「初めての方がホテルで働けるのか」と不安に思われるかもしれませんが、ホテル専門チームがスペシャリティを持って現場に伺い、マニュアルを作ることによって、誰もが安心して働ける環境作りを実現できています。
AA数 介護業界:慢性的な人手不足を背景に急成長。今後は政策面も追い風に
ホテル業界だけでなく、介護業界も堅調に推移しています。入浴介助、食事準備、送迎という部分で、「タイミー」のワーカーを活用いただいています。
加えて、厚生労働省が介護施設でのスキマバイトサービスなどのマッチングアプリの利用支援を発表し、政策面も追い風となっています。
日本では、少子高齢化の中で介護の2025年問題が課題となっています。「タイミー」も社会課題の解決にお力添えできるようなポジションまで高まってきたと思っています。介護業界は今後も成長が期待できる業界だと思っています。
AA数 エリアの拡大:地方自治体等との連携拡大や戦略商圏へのフォーカス
小規模クライアントが少し減っていると先ほど八木からもお話ししましたが、一気にボリュームを増やすというよりは、局地的な戦略を行いながら、今モデルケースを作っている最中です。
スライド右側に横浜市中区の状況を示していますが、「タイミー」を利用いただいているクライアントの場所にピンを立てた結果、これくらい密集度が高い状況を作れています。
「街中で『タイミー』を使える状況」と言うにはまだ少ないエリアではありますが、戦略商圏といったかたちで一定のエリアにフォーカスして、飛び込みやビラ配りなどさまざまな手法を使いながら型を作るフェーズは、順調に進捗し始めていると思っています。
また、行政との連携も非常に順調に進んでおり、現在は23自治体と、前回決算から6自治体増えています。自分たちだけではサポートしきれないところを行政とタッグを組みながら、全国津々浦々で人手不足の解決に注力していきたいと思っています。
AA当たり流通総額 物流・食品製造業界にて受入負荷軽減プロジェクトが順調に進捗
AA当たり流通総額については、物流業界は引き続き高い成長率を保っています。そのような中で、毎回ワーカーが10人、20人、30人と来ると、「誰が受け入れを行うのか」という話になります。
この受入負担を削減するためにタイミーが派遣免許を持ち、リーダー社員を派遣したり、単発でできる受け入れワーカーを育成することによって、堅調にAA当たり流通総額を伸ばすことに成功しています。
加えて、マニュアル作成にもかなり力を入れています。実際にその現場で使えるような見ればわかるマニュアルだけではなく、安全教育を含めた動画マニュアルも作成し、現場の受入負担を大きく削減することに成功しています。
ただのITサービスというよりも、業務改善プロセスに対するDXを「タイミー」自らが推進できていると思っています。
AA当たり流通総額 バッジ限定公開機能の活用による時給上昇、稼働率上昇が顕著に
バッジ限定公開機能に関するデータです。
スライド左端のグラフは、バッジ保有者限定で求人公開する機能の活用による時給上昇を示しています。バッジ限定公開機能を通じて求人の50パーセント以上を採用した企業では、そうでない企業と比べて高い時給をワーカーに支払っていただいています。
また、稼働率のリフトアップも見えており、ワーカーとしても時給が高く、クライアントとしても経験を積んだ働きぶりの良いワーカーを呼ぶことができるという好循環が回っています。これはまさに、データアセットを用いた「タイミー」にしかできない機能だと思っています。
AA当たり流通総額 ユーザーの利便性、安心安全を追求したプロダクト開発
プロダクト開発については、今までもさまざまな機能をリリースしてきていますが、特に介護事業所で有資格者のマッチングが増えてきています。
そのため、資格者証の回収・確認を、あらかじめシステム上で完結できる機能を作ることによって、介護事業者が1個1個チェックしなくても済むようにしています。
このように業界に根づく機能を作ることによって、「タイミー」はすべての業界で受け入れられるサービスに進化していくと思っていますし、今後も加速する日本の人手不足を改善していきたいと思っています。
第1四半期の数字と今動いている戦術についてお話ししましたが、さまざまな種を順調にまくことができていると思っています。また、より高い成長率をキープしていくためにも、既存の延長線上にとどまらず、さまざまなチャレンジを繰り返していきたいと思っています。今後ともご支援いただければと思っています。
私からのご説明は以上となります。
質疑応答:AA数の動向について
質問者:第1四半期を振り返って、AA数の動向については不正利用対策の影響もあってやや鈍いというお話でしたが、一方ではクライアントマーケティング費用も先んじて減らしており、これらの影響を分解するとどのように見ていますか?
単に不正利用対策の影響で伸びが緩いのか、それとももう少しクライアントマーケティング費用を使っていれば伸び得ていたのか、そのあたりの感触を教えてください。
八木:結論としては、クライアントマーケティングをどんどん行っていけば、AA数も増えるかと言うと、完全に比例して伸びていくかたちにはなりません。
なぜなら、クライアントマーケティングの単価についても、規模がどんどん上がっていくと獲得単価のプレッシャーも強まるからです。また、今回の第1四半期は、不正利用対策による影響度がまだわかっていなかったため、それを見据えて若干絞っています。
したがって、第1四半期で費用を大幅に増やしていれば大幅に売上が上がったかと言うと、そうでもないと考えています。
質問者:フォローアップなのですが、その影響度がなかなか読みにくいと通期決算でもお話しいただきましたが、第1四半期の3ヶ月を振り返ってみて、結局はどのような認識でしょうか?
やはり、今後も中長期的にそれなりの影響が続くと見ているのか、あるいは短期的な問題で、今年の終わり頃にはある程度元どおりに戻っていそうなのか、定性的なコメントでも結構ですので何かご感触があれば教えてください。
八木:結論としては、深刻な状態がずっと続くわけではないと思っています。なぜなら、「タイミー」だけが審査が非常に厳しいとか、ファネル上にフリクションがあるわけではないからです。
スポットワーク協会をはじめ業界全体として、闇バイトを含めて不正利用に対策を講じていくかたちになっています。そのため、その流れがスタンダード化していけば、特段の大きな影響が続いていくようなことは想定していません。
不正利用対策の影響については、簡単なものにはなりますが、スライド9ページの右側に記載しています。やはり一定の影響は出ています。これだけが影響だと分解するのはなかなか難しい類のものではありますが、数字なども全部洗い出して見る中で、影響はあると考えています。
また、コストの具体的な金額は開示していませんが、実際の確認作業にはリソースがかかるため、しっかりコストコントロールを行い、想定の範囲内に収めたことにより、今回の第1四半期の決算結果となっています。
質疑応答:今後注力するKPIの変化について
質問者:今後は、不正利用対策を行うクライアントだけを吸収したほうが、ワーカーにとっても満足度が高いサービスになるのではないかと思っています。御社も同様の考えだからこそ、対策を講じているのだと思います。そうだとすると、KPIのフォーカスは、AA数の増加よりも、やはりAA当たりの流通総額に少しずつ重きが移っていくのでしょうか?
実際、第1四半期は、AA当たり流通総額もYoYでマイナス4.7パーセントと、去年に比べるとかなり改善しました。これは単に利用が促進されたというよりも、おそらく小規模の事業者数がそこまで変わらず、ダイリューションのインパクトが少なかったからなのだろうと推測しています。
このあたりも含めて、今後注力するべきKPIが、今回の不正利用対策を経て変化するのかどうかについて、コメントをお願いします。
小川:まずは不正利用対策の影響度がなかなかわかりづらかったところもあったため、クライアントマーケティングを様子を見ながら進めていっていました。その中で、もちろん想定の中で推移しているとは思っていますが、必要書類の提出を求めるなど、一般的にいうとファネルが悪化する施策を行っているため、YoYで見ると1アカウント当たりの獲得コストの悪化も起きることだと思っています。
小規模クライアントのところは、今はステイという状況になっているかと思いますが、戦略商圏のような取り組みを推進していこうと思っています。密集エリアについてはリアル店舗へ実際に出向き、本当にその店舗は存在しているのかどうかも含めてチェックを行い、健全な募集を増やしています。
したがって、「ここからはAA数を増やさずに、AA当たり流通総額に全振りする」ということではまったくありません。この部分に関しても、クライアントマーケティングだけではない他の手法を引き続きしっかりと開発する必要性があると考えていますし、ここが伸びない限りは、非連続な成長は起きないと考えているため、投資はしっかり行います。
受入負荷軽減プロジェクトなどを行いながら、AA当たり流通総額もしっかりと深掘りしていきたいと捉えています。
質疑応答:次年度の業界環境について
質問者:4月以降、「メルカリ ハロ」も有料化しますが、次年度に対しての業界環境についての見方をお持ちであれば、共有していただけますか?
小川:「メルカリ ハロ」では4月から、サービス利用料に加えて振込手数料も有料化されるとの発表がありました。「タイミー」は引き続き高い成長率を保っていると思いますし、TAM自体もまだまだ非常に大きいため、いろいろなプレイヤーが増え、しっかりと健全なコストで戦えることは非常にウェルカムだと思っています。
数字を見ていただければわかるとおり、メルカリや他の会社のサービスが参入してくることによって、「タイミー」の売上が削られたり、アカウントが取られてしまったりしたわけではなく、そこまで大きな影響はありませんでした。そのため、「メルカリ ハロ」が有料化したからといって、「タイミー」の売上が非常に上がるわけではないと思っています。
その中で、しっかりとしたコスト意識がこの業界に芽生え、健全な成長が行われるようになると思っており、そのようなところを注視している状況です。
質疑応答:マージン改善の持続性について
質問者:不正利用の話に関連した質問ですが、第1四半期は利益率が非常に強かったという印象があります。不正利用対策によるマイナス面があった一方で、やはりクライアントマーケティング費用の抑制というプラス面もありますし、商圏を絞るというお話も結果として効率化につながるのではないかというイメージがあります。
もちろんマージンは季節性があるので一定ではないのですが、結論として、今回の第1四半期のマージン改善は、かなりサステナブルなものなのではないかと感じました。このあたりのお考えはいかがでしょうか?
小川:自分たちもグロースをしっかりと意識していきたいと思っています。もちろんサステナブルな利益を出せる状況になってきているとは思いながらも、マーケットの期待として、これからももっと利益が出ると思われてしまうと、少しミスマッチがあると思っています。
あくまで、まだ投資を行うフェーズだと捉えているため、しっかりと利益を出せる状況を常に作りながら、果敢に挑戦していきたいと思っています。
八木:大きく分けると、「利益が出ていなかったものが出た」というよりも、「そもそも利益が出る構造や状態だったのだが、今まではトライアル的に投資を継続していたため、利益を出していなかった」というのが実態に近いと思っています。
そのため、若干の削減や規律を効かせるといったことについては、今回の不正利用対策の影響度がわからなかったため、いったんこのようなかたちになりました。その解像度がある程度上がれば、非連続成長を行うために、いろいろな武器やチャネルをしっかり開発していかなければなりません。
したがって、構造的には利益は出ますが、将来の成長のためにしっかりと投資を行っていきます。一方で、有事の場合や、外部環境・マクロ環境などが大きく変わった時には、利益のほうにすぐにスイッチできる体制をしっかり構築していきたいと思っています。そして既に、そのようなかたちができる状態にあると考えています。
質疑応答:飲食業界の見通しについて
質問者:飲食業界におけるコスト抑制のインセンティブが強いというマクロ要因かと思いますが、飲食業界の売上の伸びが鈍化しています。この先、飲食業界はこのままあまり伸びない業界になってしまうのか、まだまだ伸ばせるところにあるのか、飲食業界の今後の長期的なイメージをどのように考えていますか?
小川:「タイミー」がなかった時代にどのような手法で人を集めていたかというと、業界ごとに異なります。物流業界は派遣サービスを使っており、そのテイクレートが約36パーセントだったため、「タイミー」のほうが安いということで、30パーセントというレートについては特に抵抗なく使っていただいている状況です。
一方、飲食業界ならびに小売業界に関しては、求人媒体をメインに使っていたため、30パーセントが常にかかることに対して、「本当に困っている時しか使えない」というコメントが上がっています。そのため、サービス利用料に関して、自分たちとしてもプランを少し変えていく必要性があるかもしれないと検討しています。
つまり、物流業界の場合は、派遣と同じように、人がしっかりと集まるかどうかが非常に重要ですが、飲食業界の場合は、人が採用できるかどうかという点もかなり重要になってくると思います。
今は引き抜きなども無料で行っていますが、そのようなところに対してしっかりとうまみを感じていただけるような設計にするなど、経営としては通常のマネタイズ以外のことも考えていかなくてはいけません。
したがって、この業界がこのまま低い成長率でずっと続くのかというと、そこに対してもしっかりとメスを入れ、もう一度高い成長を目指していきたいと思っています。社内ではそのような取り組みをいろいろ検討しているところです。
質疑応答:事業環境全般への評価について
質問者:事業環境全般に関する評価をお願いします。テイクレートの部分を勘案してAA当たりの売上高を見ると、おそらく物流事業がQoQで見てほぼ同じくらいの水準で、飲食・小売などの他の部分もQoQで見ておおむね同じような売上高かと思います。
したがって、事業環境については、今のところQoQで大きな悪化も良化もさほどなかったと思っているのですが、このような理解で良いでしょうか?
八木:各業界の状況については、おっしゃるとおり、第1四半期や足元でなにか大きな変化が出ているわけではありません。
飲食業界については、YoYや2年前から比べると、お客さまのほうでコストプレッシャーがかなり厳しくなっているところはありますが、QoQや昨年の下期から比べると、事業環境自体に大きな変化はありません。
物流と小売についても、事業環境に大きな変化は出ておらず、人手不足により「タイミー」の利用は引き続き堅調に推移するだろうと考えています。
質疑応答:今後の成長の柱について
質問者:ホテル業界や介護業界で急成長しているとのお話がありましたが、今はおそらく「その他」に分類されているところでモデルケースを作り、伸ばしていきたいのだろうと思いました。
今後を考える上では、やはり次の成長の柱を作ることが1つのポイントになると感じています。このような考え方で良いのか、それとも人材セクター全体のマクロ環境の改善がやはり不可欠とお考えになっているのか、このあたりについて教えてください。
小川:AA数を伸ばす中で業界を増やすことは非常に重要な手法になると思っています。ホテルと介護業界に着手していますが、それ以外にも、ビルメンテナンスやイベント、食品製造というインダストリーも開発途中であり、それらの業界がしっかりと成長することが、AA数の拡大にも大きく寄与すると思っています。
戦略方針のタテ・ヨコ・ナナメの軸でいうと、ヨコの部分にあたるAAをしっかり増やすことで街の密集度を上げ、業界の開発にしっかりと投資を行うことで、AA拡大に着手していると捉えていただければと思います。
質疑応答:流通総額で期待できそうな業界について
質問者:AA当たり流通総額で見ると、やはり今までは物流業界が頭抜けていることと、その他の業界にはかなり雑多に入ってしまっていて、数字がかなり高めになっていると思います。それ以外のホテル業界や介護業界などで、物流業界に並ぶほどではなくとも流通総額という観点で期待できそうな分野がありましたらご紹介ください。
小川:やはり物流業界は特殊なインダストリーだと思っています。1拠点で100名以上の募集が毎日出るようなことは、AA当たり流通総額という観点で捉えると、他ではなかなか難しいと思います。
しかし、特に食品製造のようなところは物流に近い業界だと思っており、一部は期待できます。
質疑応答:あるべき投資の姿について
質問者:あるべき投資の姿についておうかがいします。八木さまからも生産性の改善があったというお話がありましたが、確かに営業人員だけでなく、エンジニアの採用も含めて、従来に比べるとかなり手控えたような印象もあります。
もちろんヘルシーなものであればまったく良いのですが、今後、売上高がより加速する局面において、御社では今、どのような分野で投資をかけていきたいとお考えでしょうか?
やはりカスタマーサクセスといったところをもう少し増やすべきなのか、それとも競合との差別化をより図る上でも、エンジニアリングにさらに力を注ぐべきなのかなど、今後かけるべき投資の内容と、どのような条件が整えばその投資がより加速するのか、そのあたりの考え方について教えてください。
小川:まず、プロダクトの投資は非常に重要だと思っています。さまざまな競合が増え、コモディティ化するサービスから、「タイミー」にしかない機能をどこまで作っていけるかが非常に重要になると捉えています。
非常に細かいことですが、介護に特化したかたちで資格者証のアップロードを行う機能は、やはり他社ではどんどん後手に回ってしまうような作りづらい機能です。このような部分を先んじてたくさん作れば、その結果「タイミー」が選ばれ続けることになるため、プロダクト力の強化はまだまだ非常に重要だと捉えています。
また、まさに人がタッチせずに、テクノロジーだけで完結するテックタッチも重要です。アカウント開設から投稿、さらに募集人数を増やすところまで、すべてAIのようなかたちでレコメンドしながらサジェスチョンを行うことを将来的には目指しているため、個人店などのアカウントが増える中では、なるべく省力化に注力するべきだと思っています。
しかし、やはり技術の進展もまだまだだと思っているため、技術にもしっかり投資をしながら、一定程度人手を増やして、営業人員はエンタープライズや注力アカウントにしっかりとフォーカスするという体制を作ることが理想とする姿かと思っています。バランスを保ちながら、技術投資と営業人員の投資を行っていきたいと思っています。
質疑応答:物流業界でボリュームディスカウントを実施した理由について
質問者:なぜ第1四半期に物流でプロモーションを行ったのでしょうか? テイクレートに影響が及んだと思います。これは一過性のもので、将来的には心配する必要ないと理解してよいでしょうか?
八木:結論としては、ずっと続くものではないと、会社としては想定しています。
物流業界でボリュームディスカウントを実施した理由ですが、スライド左のグラフを見ると、第1四半期には例年、テイクレートが若干下がる傾向があります。この時期は年末年始の一番の繁忙期で、主に物流会社で人手に困っている時です。
そこで、関係性をしっかりと構築して年末を乗り切るために、過去にもプロモーションやキャンペーンを行ってきました。
今回もそのようなことを、関係構築を含めてしっかり行いました。したがって、毎四半期でずっと出るというより、繁忙期においてスポットで出ることは将来的にあるかもしれませんが、基本的には期間限定ですので、どんどん下がっていくことはないと考えています。
質疑応答:競合について
質問者:いわゆる競合は「スポットバイトル」なのか、それとも「メルカリ ハロ」なのか、ビジネスに一番大きな影響を及ぼしてきそうな競合はどこでしょうか?
小川:そのような意味では、パーソルグループ傘下のシェアフル社が長らくサービスを提供しており、他社と比べてもしっかりとした機能・サービスを作っていると思っています。
しかしながら、「タイミー」は今、圧倒的なシェアを獲得できていると思っているため、どこか1つというよりは、そこまで大きな差はない状況になっているのではないかと捉えています。
質疑応答:セクター別のフィルレートについて
質問者:セクター別の稼働率はどのように考えればよいのでしょうか? また補足の質問ですが、飲食の成長性が再び上がってくれば、稼働率は落ちるのでしょうか?
小川:もちろんセクター別でも管理している状況ではありますが、セクターというよりはエリア性もかなり大きいと思っています。住宅街の近くなのか、学校があるのか、といったことが要因になりつつ、ワーカーの数と求人数のバランスでというかたちになるため、セクターのみでは一概に語れないところがあります。
また、飲食が増えてくる中で稼働率が下がるのかという点ですが、ダウンロード数を増やす体力はまだまだあるため、求人数が増えればワーカー数を増やすことでしっかりとキープできると思っています。
経営としては、稼働率は引き続き高い数字を維持することを最注力候補として、しっかりと投資していきたいと考えています。
八木:補足として、資格を持っていないと本当にできないセクターの稼働率は、やはり低くなりがちです。
そのようなセクターについては、介護業界での資格回収機能などをはじめとして、ワーカーサイドをしっかり集中的に集めて稼働率を上げたり、プロダクトを改善したりと、稼働率を上げるための改善を行っています。
このように、基本的にはセクターで大きな差はありませんが、難易度が高いものについては、なるべく稼働率が上がるような施策をいろいろな方向から行っています。
1つ例を挙げると、有資格でなくても行える業務を切り出すことで、無資格の一般の人でもできるようになれば稼働率が非常に上がります。そのような業務分解も、施策として多方面から行っているのが現状です。
質疑応答:クライアントマーケティング費用が減少した理由について
質問者:第1四半期の決算の予想と実際との対比についてです。勘違いをしていたらすみませんが、クライアントマーケティングに使うはずの費用2億6000万円が入っていなかったために予想より上振れたのだと理解しています。
こちらは、どのような状況で未使用になったのでしょうか? クライアントを増やしすぎると、ワーカー側のフィルレートが落ちる可能性があるから使わなかったなど、解説をお願いします。
小川:クライアントマーケティングは、主に例えば「Google」や「YouTube」など、検索に対するリスティング広告やテレビCMをイメージいただくとよいかと思います。基本的には、アド広告で、リスティングの広告が非常にウエイトを占めていたという状況です。
これまではLTV/CACを見ながら、獲得コストギリギリのところまで常に挑み続けて、リードを最大化して獲得してきたところがありました。
しかし、不正利用対策によりファネルが1つ悪化してしまったため、通常の自分たちで考えるLTV/CACの数値が悪化してしまいました。
そのため、もし従来どおりの投資をしてしまうと、ファネルが悪化しているにもかかわらず、より多くのボリュームを出してしまい、CAC/獲得単価がさらに悪化するかたちになってしまうため、あまりにも費用対効果が悪いという話になりました。
そこで、それ以外の手法をしっかりと考えなければいけないということで、戦略商圏のような密集エリアにしっかり投資を行い、また、新しいインダストリーに人を配置することなどにチャレンジし、その部分の予算をアロケートする動きを始めたところです。
では、第2四半期で同じように大きな利益が出るかというと、アロケートしたところで種がうまく育っているところについてはしっかりと投資を行うことで、トップラインがさらに伸びるように挑戦し続けたいと考えています。
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