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TAC、25年3月期黒字転換予想、中間期が計画を上回る大幅増益で通期業績上振れにも期待
TAC<4319>(東証スタンダード)は「資格の学校」運営を主力として、出版事業や人材事業も展開している。中期成長に向けて、主力の教育事業では事業環境変化に対応した新サービスの提供、出版事業では新規領域への展開、人材事業では医療事務関連の子会社を統合してサービス向上と業務効率性向上を推進している。25年3月期は黒字転換予想としている。重点施策として、既存事業の強化、個人教育事業の早期回復、株価純資産倍率(PBR)の改善などに取り組むとしている。中間期が計画を上回る大幅増益だったことを勘案すれば、通期も上振れの可能性が高いだろう。積極的な事業展開で収益回復基調を期待したい。株価は動意づいて21年以来の高値圏まで急伸する場面があった。その後は買いが続かず反落したが、1倍割れの低PBRもなど評価材料であり、上値を試す展開を期待したい。
■「資格の学校」を運営
財務・会計分野(簿記検定・公認会計士など)、経営・税務分野(税理士・中小企業診断士など)、金融・不動産分野(宅建・不動産鑑定士・FPなど)、法律分野(司法試験・司法書士など)、公務員・労務分野(社会保険労務士・国家総合職など)、その他分野(情報・国際、医療・福祉など)といった幅広い分野で「資格の学校」を運営する個人教育事業、法人研修事業を主力として、出版事業や人材事業(会計系、医療系)も展開している。さらに成長戦略として新事業領域への展開も推進している。
24年3月期セグメント別業績は、個人教育事業の売上高(現金ベース)が97億65百万円で営業利益が10億29百万円の損失、法人研修事業の売上高(現金ベース)が44億45百万円で営業利益が10億11百万円、出版事業(TAC出版、W出版)の売上高が42億46百万円で営業利益が8億47百万円、人材事業の売上高が5億10百万円で営業利益が63百万円だった。
■教育事業は事業環境変化に対応して新サービス提供を推進
24年3月期の教育事業受講者数は個人受講者が23年3月期比1.4%減の11万1093人、法人受講者が5.7%増の8万8847人、合計が1.6%増の19万9940人だった。分野別売上高は財務・会計分野が14.0%減収、経営・税務分野が1.2%増収、金融・不動産分野が0.9%増収、法律分野が1.9%増収、公務員・労務分野が9.7%減収、情報・国際分野が1.1%増収、医療・福祉分野が横ばい、その他が15.6%増収だった。
コロナ禍による事業環境変化に対応し、オンライン学習環境の強化(WEB SCHOOLの機能拡充など)や、法人向け研修における多様な受講方法の整備、新たなサービスの提供、オンライン受講の増加に伴う直営校の床面積の適正化などに取り組んでいる。24年3月期の個人教育事業におけるWEB通信講座の比率(現金ベース売上高比率)は23年3月期比2.3ポイント上昇して48.7%となった。法人研修分野においてもWEB会議システムを利用した研修が多くの企業で定着している。
新たな取り組みとして22年11月より、プロeスポーツチーム「忍ism Gaming」とスポンサー契約を締結し、プロeスポーツ選手が資格取得にチャレンジする「シカチャレ」を開始した。引退者のセカンドキャリアについて、資格という側面から貢献することを目指す。また22年11月には人生100年時代に役立つ「実用講座」を開講した。
23年1月には「TAC CBT(Computer Based Testing=コンピュータ試験)およびIBT(Internet Based Testing=インターネット試験)システム」によるテスト配信サービスを開始した。21年3月より日本全国の主要都市に直営校舎を持つ強みを生かした「TACテストセンター」サービスを行っているが、さらにCBTおよびIBTシステムを用いた試験問題の配信や採点等を行う「TAC CBTおよびIBT配信」サービスを加えることで、これまで培ってきた試験の申込受付や運営管理等のノウハウをパッケージ化した総合的なサービスを提供する。
24年2月には会計士や税理士をはじめとする士業の方のサポートを中心とする結婚相談所サービス「TACマリッジコンシェルジュ」運営の開始を発表した。これまでに培ってきた人材ネットワークを生かし、士業の方のサポートを中心とする結婚相談所を開設し、士業同士の婚活をサポートする。なお「TACマリッジコンシェルジュ」はIBJ<6071>が運営する日本最大級の結婚相談所ネットワークの正規加盟店である。
■出版事業は事業領域拡大
出版事業はTAC出版と早稲田経営出版(W出版)が展開している。両社の合算売上高の5億73百万円(TAC出版が4億94百万円、W出版が79百万円)は出版業界12位規模(出典:2023年度丸善ジュンク堂書店出版社売上ベスト300)で、資格書籍を主力とする出版社としては有数の規模となっている。
事業領域拡大に向けて、高等学校商業科で使用する文部科学省検定済教科書(高校1年生で履修する簿記およびビジネス基礎)分野に参入した。22年4月には高等学校商業科教科書「簿記」および「ビジネス基礎」を刊行、23年4月には高等学校商業科教科書「原価計算」および「財務会計Ⅰ」を刊行した。24年3月には、国内旅行ガイド書「おとな旅プレミアム 第4版」全32点を24~25年版に改定して発売すると発表した。
■人材事業は会計系・医療系人材紹介などを展開
人材事業は、子会社のTACプロフェッションバンクが会計系の人材紹介・派遣事業、医療事務スタッフ関西が関西エリアで医療事務に関する労働者派遣事業、診療報酬請求業務請負、診療報酬請求明細書(レセプト)点検業務を展開している。
なお23年4月に、医療事務スタッフ関西が、診療報酬請求明細書点検業務を展開するクボ医療を吸収合併した。業務の関連性が高いため、人的資源やノウハウを共有することにより、サービス向上と業務の効率性を高める方針だ。
■四半期業績に季節変動要因
四半期業績は資格講座の本試験実施・合格発表の時期との関係などで季節変動の特徴がある。第2四半期(7~9月)と第3四半期(10~12月)の公認会計士・税理士講座は、翌年受験のための受講申込が集中する時期となるため、現金ベース売上高が突出して多くなるとともに、翌四半期に向かって前受け金として繰り越されることから、発生ベース売上高の増加が少なくなる傾向がある。
また第4四半期(1~3月)から第1四半期(4~6月)にかけては、夏・秋の本試験時期に向けて全コースが出揃う時期にあたり、稼働率の上昇から前受金戻入額が増加することを通じて発生ベース売上高が増加する傾向にある。こうした売上の傾向に対して、売上原価や営業費用は毎月一定額計上されるため、四半期ごとの営業利益が変動しやすい。利益は期前半に集中し、下期は赤字となる収益特性がある。
■25年3月期黒字転換予想、さらに上振れの可能性
25年3月期連結業績予想(前受金調整後の発生ベース)は売上高が24年3月期比1.1%増の192億20百万円、営業利益が2億70百万円(24年3月期は3億07百万円の損失)、経常利益が2億20百万円(同3億29百万円の損失)、親会社株主帰属当期純利益が1億50百万円(同2億19百万円の損失)としている。配当予想は24年年3月期比2円減配の4円(第2四半期末2円、期末2円)としている。予想配当性向は48.4%となる。
第2四半期累計(中間期)は売上高(前受金調整後の発生ベース売上高)が前年同期比0.1%増の101億35百万円、営業利益が3.5倍の8億23百万円、経常利益が3.7倍の8億44百万円、親会社株主帰属四半期(中間)純利益が3.3倍の5億77百万円だった。
計画を上回る大幅増益(11月1日付で上方修正)だった。前回予想(5月15日公表値、売上高101億12百万円、営業利益4億95百万円、経常利益4億70百万円、中間純利益3億13百万円)に対して、売上高は23百万円、営業利益は3億28百万円、経常利益は3億74百万円、中間純利益は2億64百万円、それぞれ上回った。
個人教育事業が堅調に推移して売上高が計画を上回ったことに加え、営業費用についてオンライン受講の拡大に伴い教室受講を前提としたコスト構造の見直しを行った成果が出始めていること、さらに全社ベースの業務効率化の効果も寄与して売上原価と販管費が計画を下回り、各利益の増益幅が拡大した。また経常利益と中間純利益については、営業外収益に受取保険金約37百万円を計上したことも寄与した。
個人教育事業は現金ベース売上高が1.7%増の54億93百万円で現金ベース営業利益が3億63百万円(前年同期は2億29百万円の損失)、法人研修事業は現金ベース売上高が2.6%減の23億54百万円で現金ベース営業利益が1.1%増の6億27百万円だった。受講者数は個人受講者が0.6%減の7万3733人、法人受講者が4.1%減の5万2476人、合計が2.1%減の12万6209人だった。講座別(個人と法人の合計ベース)は、税理士講座が2.2%増、不動産鑑定士講座が16.0%増、FP講座が13.5%増、建築士講座が42.5%増、行政書士講座が13.4%増、CompTIA講座が12.0%増となった一方で、簿記検定講座が3.2%減、公認会計士講座が15.6%減、証券アナリスト講座が13.5%減、公務員の国家総合職・外務専門職講座が14.9%減、公務員の国家一般職・地方上級講座が9.7%減等となった。
出版事業(TAC出版、W出版)は売上高が6.5%増の19億88百万円、営業利益が26.1%増の3億92百万円だった。旅行ガイド等の売上が減少したが、前期末に計上された返金負債の戻入などが寄与して増収増益だった。人材事業は売上高が1.2%減の3億15百万円、営業利益が0.1%増の84百万円だった。TACプロフェッショナルバンクの会計系人材事業、医療事務スタッフ関西の医療系人材事業とも概ね堅調だった。
なお全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高(前受金調整後の発生ベース売上高)が50億23百万円で営業利益が3億18百万円、第2四半期は売上高が51億12百万円で営業利益が5億05百万円だった。
通期連結業績予想は据え置いている。グループの持続的な事業活動と中長期的な成長を推進するための重点施策として、オンラインでの学習環境強化と講座開発、営業人材育成による営業強化、需要の大きいDX関連研修の拡販、TAC出版書籍販売サイトのリニューアル、会計人材紹介事業の成約率向上、直営校の校舎規模の適正化、講座運営体制の抜本的見直し、全社的な作業効率の追求などを推進する方針だ。また株価純資産倍率(PBR)の改善にも取り組むとしている。
通期連結業績予想を据え置いたが、第2四半期累計(中間期)が計画を上回る大幅増益だったことを勘案すれば、通期も上振れの可能性が高いだろう。積極的な事業展開で収益回復基調を期待したい。
■株価は上値試す
株価は動意づいて21年以来の高値圏まで急伸する場面があった。その後は買いが続かず反落したが、1倍割れの低PBRもなど評価材料であり、上値を試す展開を期待したい。12月18日の終値は200円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS8円27銭で算出)は約24倍、今期予想配当利回り(会社予想の4円で算出)は約2.0%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS323円28銭で算出)は約0.6倍、そして時価総額は約37億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)
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※この記事は日本インタビュ新聞社=Media-IRより提供を受けて配信しています。
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