株価が鈴茂器工の先行きを期待している理由

2024年8月30日 09:13

印刷

「FOOMA JAPAN 2024」で展示された新製品 S-Cube(画像: 鈴茂器工の発表資料より)

「FOOMA JAPAN 2024」で展示された新製品 S-Cube(画像: 鈴茂器工の発表資料より)[写真拡大]

 寿司握りロボットで知られる鈴茂器工(6405)は5月13日に、中計の最終年度となる今2025年3月期の利益を下方修正した。売上高は9億6000万円増も「営業利益は3億5000万円減の19億円、営業利益率は3.1%P減の11.9%」にである。さて株価の反応はどうだったのか・・・

【こちらも】今期23期連続増配予定:ロート製薬の足元と氏素性

 修正発表日の終値1129円に対し翌14日の終値は1171円。かつ年初来安値999円(1月4日)に対し高値1547円(6月13日)まで、「なにかあったの」と言わんばかりに買い進まれた。何故か。

 要因はセクター別の当初予想と修正目標の売上高で確認できる。「国内事業:78億円->100億4400万円」「海外事業:42億円->49億3300万円」「新規事業:30億円->9億8300万円」。

 新規事業の出遅れ。2021年10月に鈴茂器工は日本システムプロジェクトを買収している。飲食店の一連の業務(受付・配席/オーダー・券売機/配膳/会計)をセルフ化するための多様な製品群に特化した、30年のキャリアを有する企業だ。その効果の発現が予想より遅れているためだ。

 詳細は後述するが、鈴茂器工は飲食事業のDX化を基軸にしている。株価動向は「寄与立ち遅れ」も「新たな展開」に、期待を寄せていると捉えるべきだろう。

 鈴茂器工と言えば寿司のシャリを握る「寿司ロボット」をはじめ、「おむすびロボット」「のり巻きロボット」「ご飯盛り付けロボット」などを次々に世に送り出してきた。

 創業者は鈴木喜作氏。祖業は和菓子・洋菓子の製造機器メーカー。最中のあんこ充填機なども開発。そんな鈴木氏によって1981年に世に送り出されたのが「寿司ロボット」。記したような一連の機器はいま、「開店寿司店」や「テイクアウト」「宅配」「スーパー」「コンビニ」「レストラン」「ホテル・旅館」などで活躍している。

 今期予想を含む5期間の「平均増収率は12.46%、営業増益率は23.16%」。が私は現社長:鈴木美奈子氏の姿勢(HPより一部引用)に接し、同社株の先行きに改めて期待を抱いた。

 『・・・増収増益を重ねてきた当社が、ここ数年、業績の伸びに陰りが出てきた要因の一つとして急速な様々な社会や環境の変化がある。そんな中、我々はどうしていかなくてはならないのか。今一度基本に立ち返る「原点回帰」であると考えた。

 寿司ロボットで寿司を大衆化した創業者の発想力と熱い思い、確固たる行動力。・・・ただし原点回帰だけでは更に前に進むことはできない。固定概念を捨てた上で新しいことに目を向け、トライする活力も必要。

 着眼点に長けた創業者の古き良きDNAを継承しつつ、(日本システムプロジェクトのM&Aに象徴される飲食業のDX化)新しいものを取り入れながら発展させていく・・・』。

 ちなみに、株価は口ほどにものを言う。本稿作成中の時価は1500円台前半。過去9年近くの(分割等を勘案した)修正値ベースの株価パフォーマンスは約3倍。寿司を身近な食べ物にしてくれたお返しに、中長期スタンスで株とも付き合ってみたいと思うが如何か・・・(記事:千葉明・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事