アルコニックスは反発の動き、25年3月期1Q大幅増益で通期も大幅増益予想

2024年8月29日 09:48

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

 アルコニックス<3036>(東証プライム)は商社機能と製造機能を併せ持ち、M&Aも積極活用しながら、非鉄金属の素材・部品・製品の生産から卸売まで全てをONE-STOPで提供する「非鉄金属等の総合ソリューションプロバイダー」である。25年3月期は需要・市況の回復、価格転嫁やコスト改善の進展などの効果により大幅増益、そして連続増配予想としている。第1四半期は商社・流通分野における販売数量の増加、ニッケル原料取引の収益率改善、製造分野における価格転嫁の進展などにより大幅増益だった。積極的な事業展開により、通期ベースでも収益改善基調だろう。株価は地合い悪化の影響で急落する場面があったが、目先的な売りが一巡して反発の動きを強めている。高配当利回りや1倍割れの低PBRなど指標面の割安感も評価材料であり、出直りを期待したい。

■非鉄金属等の総合ソリューションプロバイダー

 商社機能と製造機能を併せ持ち、M&Aも積極活用しながら、非鉄金属の素材・部品・製品の生産から卸売まで全てをONE-STOPで提供する「非鉄金属等の総合ソリューションプロバイダー」である。

 18年12月に摩擦調整材カシューパーティクル製造販売の東北化工を子会社化、19年2月にカーボンブラシ製造販売の富士カーボン製造所を子会社化、19年7月にメキシコFUJI ALCONIXがメキシコFNA社の自動車部品用精密金属プレス部品事業を譲り受け、19年10月に香港でリチウムイオン電池材料事業の合弁会社を設立、19年11月に中国で建設用仮設資材の輸入・製造・販売の合弁会社を設立、20年3月に子会社の平和金属を完全子会社化、20年8月に子会社のアドバンストマテリアルジャパン(AMJ社)がタングステン化合物メーカーの台湾・Lianyou Metals社に出資、20年12月に空調機器向け配管部品製造販売の富士根産業を子会社化した。

 21年3月にメキシコFUJI ALCONIXがメキシコFNA社から工場用地・建物を取得、22年4月に精密コネクタ金属端子部品プレス加工のジュピター工業を子会社化、商社流通セグメントに所属する国内関係子会社(平和金属、林金属、アルコニックス・三高、アルミ銅センター)の財務・経理・総務・労務等の管理業務を集約してシェアードサービスの子会社ACメタルズを設立、22年7月に各種レーザー機器・装置製造・販売の金門光波を子会社化、22年11月に金属加工メーカーでリチウムイオン電池用機構部品の製造に強みを持つソーデナガノを子会社化、DKSHマーケットエクスパンションサービスジャパンの金属製品事業(チタン展伸材の欧州向け輸出など)の全てを取得、23年7月に子会社のマークテックが粉体物性測定(微粒子)受託事業に参入するためハイテクノライズを設立した。

 24年1月には子会社ソーデナカノと合弁で米国にリチウムイオン電池用部材を製造するSoode Kansas Corporationを設立、また中国にメッキ材料製造の新会社を設立(26年7月事業開始予定)した。24年7月にはグループ企業再編の一環として、子会社のアルコニックス・エムティが同じく子会社のアルコニックス・東北化工を吸収合併した。また、金属精密機械加工部品などの製造を展開する坂本電機製作所を子会社化した。

 ベンチャー投資としては21年12月に、投資事業(アルコニックスグローバルイノベーション投資事業有限責任組合、21年8月設立の子会社アルコニックスベンチャーズが運用)を開始した。先端材料・高成長事業および素材・モノづくりに関連のあるベンチャー企業または事業を投資先として成長支援し、投資先が生み出すアイデアや技術を取り込んで新規事業開拓と更なる業容拡大を目指す方針だ。

■製造も収益柱に成長

 報告セグメント区分は、商社流通の電子機能材事業(化合物半導体、電子材料、チタン製品、ニッケル製品、レアメタルなど)、商社流通のアルミ銅事業(アルミニウム製品、伸銅品、非鉄スクラップ、各種配管機材など)、製造の装置材料事業(非破壊検査装置、マーキング装置、カシュー樹脂、カーボンブラシなど)、製造の金属加工事業(精密機構部品、精密研削加工部品、精密金属プレス部品、金属加工部品など)としている。

 24年3月期のセグメント別経常利益(消去前)は、商社流通が20億40百万円(内訳は電子機能材が17億40百万円、アルミ銅が3億円)で、製造が34億21百万円(内訳は装置材料が9億55百万円、金属加工が24億65百万円)だった。レアメタル・レアアースの取り扱いが特徴とされているが、製造も収益柱に成長している。

■中期経営計画

 中期経営計画(25年3月期~27年3月期、1年ごとに見直すローリング方式)では、最終年度となる27年3月期の目標値として、売上高2200億円、営業利益120億円、経常利益120億円、EBITDA164億円、ROE(株主資本利益率)12.1%、ROIC(投下資本利益率)6.7%、DOE(株主資本配当率)3.0%以上を掲げている。セグメント別経常利益は、商社流通が38億円(電子機能材が26億円、アルミ銅が12億円)で、製造が82億円(装置材料が25億円、金属加工が57億円)としている。製造が全体の68%を占める計画だ。

 基本戦略として、既存事業の収益力強化と新規事業の成長加速を両輪として、事業収益面の増強(事業戦略)、投下資本の効率的活用(財務戦略)、戦略に適合した人財戦略の3戦略を推進し、ROEの向上を図るとしている。なお3年間合計のキャピタルアロケーションのイメージとしては成長投資200~240億円、維持投資100~140億円、株主還元50~70億円、借入返済20億円としている。

 23年2月には、非鉄リサイクル事業を展開するグループ会社の移転および拡充を目的として土地取得(北九州市若松区)を発表した。本件土地取得を契機にグループを横断した総合リサイクルセンターを建設し、環境配慮型企業グループの実現を目指すとしている。

 サステナビリティ経営に関しては、23年7月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への賛同を表明した。23年8月には、グループ全体としての内部統制体制の在り方をより明確にするため、内部統制システムの基本方針を改定した。24年3月には経済産業省が定める健康経営優良法人認定制度において健康経営優良法人2024(大規模法人部門)に認定された。24年5月には従業員向けインセンティブ・プランの導入を発表した。また24年7月には新卒初任給22%引き上げを実施する。

■25年3月期1Q大幅増益、通期大幅増益予想据え置き

 25年3月期の連結業績予想は、売上高が24年3月期比5.8%増の1850億円、営業利益が31.8%増の72億円、経常利益が32.2%増の72億円、親会社株主帰属当期純利益が181.6%増の45億円、そしてEBITDA(参考)が14.1%増の117億円としている。配当予想については、24年3月期比3円増配の58円(第2四半期末29円、期末29円)としている。連続増配で予想配当性向は38.8%となる。

 需要・市況の回復、価格転嫁やコスト改善の進展などの効果により大幅増益予想としている。セグメント別利益(消去前経常利益)の計画は、商社流通が27.4%増の26億円(電子機能材が26.4%増の22億40百万円、アルミ銅が33.2%増の4億円)で、製造が34.5%増の46億円(装置材料が36.1%増の13億円、金属加工が33.8%増の33億円)としている。積極的な事業展開で収益改善基調だろう。

 第1四半期は、売上高が前年同期比8.2%増の458億50百万円、営業利益が13.0%増の18億02百万円、経常利益が35.8%増の20億78百万円、親会社株主帰属四半期純利益が50.2%増の12億89百万円だった。

 商社・流通分野における販売数量の増加、ニッケル原料取引の収益率改善、製造分野における価格転嫁の進展などにより大幅増益だった。営業外では為替差損益が2億78百万円改善(前期は為替差損1億43百万円、当期は為替差益1億35百万円)した。

 セグメント別利益(消去前経常利益)は、商社流通の電子機能材が65.1%増の7億20百万円、商社流通のアルミ銅が144.2%増の4億49百万円、製造の装置材料が61百万円(前年同期は99百万円の損失)、製造の金属加工が15.8%減の8億47百万円だった。

 商社流通の電子機能材は、二次電池用材料や金属添加用合金鉄の販売が好調だったことに加え、ニッケル原料取引の収益率が改善したことも寄与して大幅増益だった。商社流通のアルミ銅は、ダイカストメーカー向けアルミ地金需要の好調、事業取得した医療用チタン素材の寄与、銅スクラップの需要回復、銅板条の販売量増加、費用増加分の販売価格への転嫁進展などにより大幅増益だった。

 製造の装置材料は、自動車・家電用カーボンブラシや米国におけるメッキ材料の販売が好調に推移し、製造原価上昇分の販売価格への転嫁も寄与して黒字転換した。製造の金属加工は、半導体実装装置用部品や金属端子部品の販売が好調だったが、半導体実装装置用部品で収益率の低い製品の出荷が多かった影響で減益だった。

 通期の連結業績予想は据え置いている。第1四半期の進捗率は売上高25%、営業利益25%、経常利益29%、当期純利益29%と順調だった。積極的な事業展開により、通期ベースでも収益改善基調だろう。

■株主優待制度は3月末の株主対象

 株主優待制度は毎年3月末時点の株主を対象として、保有株式数および保有期間に応じて優待商品を贈呈(24年5月15日付で一部変更を発表、26年度から適用、詳細は会社HP参照)する。

■株価は反発の動き

 株価は地合い悪化の影響で急落する場面があったが、目先的な売りが一巡して反発の動きを強めている。高配当利回りや1倍割れの低PBRなど指標面の割安感も評価材料であり、出直りを期待したい。8月27日の終値は1419円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS149円31銭で算出)は約10倍、今期予想配当利回り(会社予想の58円で算出)は約4.1%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS2180円07銭で算出)は約0.7倍、そして時価総額は約441億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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