電動化と自動運転が話題の自動車で、今後の覇権を左右するのはSDVか?

2024年6月19日 12:16

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 経済産業省が5月20日に公表した自動車産業のDX(デジタルトランスフォーメーション)戦略案は、経済を牽引してきた日本の自動車産業に、現在と同様の地位を確保しようとする「宣言」と言える。

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 電動化、自動運転という大きな変革の中にある自動車産業で、今俄かにクローズアップされているのが「SDV」だ。SDVは「Software Defined Vehicle」の略語で、「ソフトウエアが定義する車両」という邦訳がなされている。「クルマのスマホ化」と言った方が直感的かも知れない。

 現在の車は既にコンピューター制御されている部分が多いが、最大のネックは各分野のコンピューターが群雄割拠状態にあることだ。そのため、それぞれのコンピューターが出す指令が、その車の状況に「最適解」となっているか、というジレンマがあったことは否めない。SDVは、群雄が割拠する戦国を平定して、天下統一を成し遂げた中央政府が君臨する様にイメージされる。

 「つながる車」になったSDVは、インターネット経由で車両に搭載されたソフトウエアの書き換えが可能になる。車の機能は、タイヤやブレーキなどの物理的に消耗する部分と、車両全体を制御するソフトウエアで構成される。

 例えば、自動運転の「レベル3」で販売された車は、「レベル4」として承認されたソフトウエアに書き換えることによって、購入後の年数に関わらず最新の運転機能を持つことになる。既に米テスラや中国BYDがSDVを販売しているのに対して、トヨタやホンダは25年以降に本格投入の見込みだから、明らかに遅れをとっているのだ。

 このジレンマに経済産業省が打ち出した目標が、2030年に次世代車「SDV」を国内外で合計1200万台販売するというものだ。現在、日本車の世界シェアは概ね3割だから、2030年に販売が予想される4200万台の3割を、ガッチリ維持するという決意が感じられる。

 経済産業省は戦略案の中で、より高度なSDVを創り上げるためには、半導体、API、シミュレーション、生成AI、セキュリティ、ライダー、高精度3次元地図という7つの分野、手間暇と金が掛かるわりに企業の独自性をアピールすることが困難な分野については、国内企業の連携を促すという行事役を務めた格好だ。

 日々革新する技術によって「アップデート」された車が、安全・快適で効率的な移動手段となる時期は、そんなに遠くないと期待させるニュースだ。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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