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「傘を忘れたときに限って雨が降る」、「トーストを落とすと必ずバターを塗った方を下にして落ちる」といった失敗の経験則を「マーフィーの法則」と呼ぶのは、日本でも広く知られている。今回は、この法則のイギリス版、「Sod's law」を取り上げよう。
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■Sod's law
Sod's lawとは、何かが悪くなる可能性がある場合、確実に悪くなるという法則だ。いわゆるマーフィーの法則だが、これは北米で知られる「Murphy's law」をそのまま訳したものだ。
Sod's lawはそのイギリス版と言えるのだが、まったく同じ概念ではないことに注意したい。マーフィーの法則より悲観的な概念と言えるだろう。
たとえば、マーフィーの法則の場合、その基本概念は「何か悪くなる(間違う)可能性のあるものは、いつかは悪くなって(間違って)しまう」である。機械が壊れる可能性があるならば、いつかは壊れるときが来るだろう。運転中に事故が起きる可能性があるならば、その可能性が現実になる日が来るかもしれない。
Sod's lawの場合、単に悪くなる(間違いが起こる)だけでなく、それが常に最悪の結果で、また、最悪のタイミングで起こることを指している。
たとえば、「重要なプレゼンの日に限ってモニターが故障してしまう」というのはマーフィーの法則だ。悪いことが起きる可能性があれば、それが起きるという例である。
Sod's lawの場合、 単にモニターが故障するだけでなく、それが重要な取引相手が見ている最中に起きたり、モニターの故障が原因で契約に失敗したり、さらにその結果、会社が倒産してしまったりまで展開してしまうのだ。単に悪いことが起きるだけでなく、とことん最悪のことが最悪のタイミングで起こり、最悪の結果を生むという考え方である。
■Sod's lawの由来
Sod's lawという名前の由来だが、はっきりしたことは分からないものの、いくつかの説がある。一つは「sod」が「sodomite」(男色家) から来ているというもの、もう一つは「God's law」が変化したというものだ。「sod」はイギリス英語で不快な人物を指すスラングでもあるため、それと関係があるという説もある。
ちなみに、「Murphy's law」の「Murphy」とは、この法則の考案者であるアメリカの航空学者、Edward A. Murphy Jr.の名前に由来する。ところがイギリスでは、この不幸な法則に「Murphy」という名を使うのは適切でないという考え方があることに注意したい。
というのも、「Murphy」はもともとアイルランドの姓なので、アイルランド人への侮辱と捉えられる可能性があるからだ。この法則は、イギリスでは1970年ごろから知られるようになった。アイルランドとの関係が悪化していた時期でもあっただけに、「Murphy」という名前が意図的に避けられた可能性も考えられる。(記事:ムロタニハヤト・記事一覧を見る)
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