がん細胞が細胞死を制御する仕組み、一端を解明 副作用抑え治療に期待 東大

2023年9月6日 15:55

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TERTのミトコンドリア集積による細胞死制御モデルの概要(画像: 東京大学の発表資料より)

TERTのミトコンドリア集積による細胞死制御モデルの概要(画像: 東京大学の発表資料より)[写真拡大]

 東京大学は4日、がん細胞が細胞死を制御する仕組みの一端を解明したと発表した。タンパク質の1種であるテロメラーゼ逆転写酵素(以下、TERT)の細胞内における分布が、カギを握るという。

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 今回の研究成果は、がん細胞が細胞死を制御する仕組みの一端を解明するものであり、副作用を抑えながら治療効果を向上させる、新しいがん治療戦略の開発につながる可能性がある。

■がん細胞は死ににくく、治療には副作用が避けられない
 がん細胞は死ににくい。そのため、強力な治療が必要となり、他の正常な細胞まで傷つけてしまう結果、副作用が避けられない。

 このようながん細胞の死ににくさには、現在、TERTが関係していると考えられている。

 がん細胞に酸化ストレスを与えると、TERTが細胞死を制御しているミトコンドリアに集積するためだ。ただ、その詳細についてはよくわかっていない。

 なおTERTは、その働きとして、テロメアの修復がよく知られているが、その他にもさまざまな働きを持つ。面白いことに、ほとんどの正常な細胞には含まれていないが、ほとんどのがん細胞には豊富に含まれていることがわかっている。

■細胞内でのTERTの分布と細胞死の過程を可視化
 研究グループは、蛍光タンパク質を組み込むことで、細胞内におけるTERTの分布を可視化。細胞死の過程と同時に顕微鏡で観察した。

 その結果、酸化ストレスを与えた後、すぐにTERTがミトコンドリアに集積したがん細胞は、全てゆっくりと細胞死した。一方ですぐにはTERTがミトコンドリアに集積しなかったがん細胞は、迅速に細胞死したが、一部は生き残ることを突き止めた。

 このことから研究グループは、酸化ストレスを与えた後、すぐにTERTがミトコンドリアに集積するか否かが、がん細胞の細胞死を決定づけると結論付けた。

 今回の研究成果は、がん細胞が細胞死を制御する仕組みの一端を解明する重要な知見であり、副作用を抑えた、がん治療の効果向上への応用が期待されるという。(記事:飯銅重幸・記事一覧を見る

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