JR東の新幹線荷物輸送「はこビュン」、事業化へ向け過去最大量のトライアル実施

2023年8月10日 08:24

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はこビュンを用いた輸送のイメージ(画像:JR東日本の発表資料より)

はこビュンを用いた輸送のイメージ(画像:JR東日本の発表資料より)[写真拡大]

  • 23年8月末実施予定のトライアル概要(画像:JR東日本の発表資料より)

 JR東日本とジェイアール東日本物流(以下、JR物流)は9日、新幹線を用いて荷物輸送を行う「はこビュン」で、車両基地間の多量輸送トライアルを実施すると発表した。車両基地を活用した輸送は2回目で、2023年6月以来の実施となる。今回は上越新幹線の臨時列車を用い、過去最大量の荷物輸送を予定。生鮮品や精密機器など多様なジャンルで、約800箱の荷物を輸送するという。

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 はこビュンは、新幹線の定時性・安定性を活かし、室内の空きスペースで荷物を運ぶサービスだ。21年4月に北海道・東北新幹線において、駅弁や魚介類の輸送でスモールスタートし、同年10月に「はこビュン」と命名してサービスを開始している。

 荷物は、利用者が取扱対象駅に持ち込んで輸送を依頼。納品先は、駅構内や駅周辺の店舗・場所を指定できる。現時点では、東北・北海道新幹線、上越新幹線、北陸新幹線の3路線の一部エリア、計6駅でサービスを提供。朝採れ野菜や、水揚げしたばかりの魚介類を都心の駅構内で販売したり、百貨店などへ納品するなどの活用を想定しサービス展開している。

 23年6月のトライアルでは、東北新幹線はやぶさの臨時列車を活用。青森県の新幹線車両基地で魚介類やスイーツ、生花などの荷物を積み込み、大宮駅と駅周辺店舗に商品を納品している。新幹線の車両3両を使い、約600箱の荷物を輸送。ほか5両は旅客用として通常営業した。

 今回の上越新幹線のトライアルでは旅客販売せず、上下線で荷物輸送のみを行う予定。また車両基地間の輸送を基準とし、新潟と東京の新幹線車両センターを用いる。途中駅で一部荷物の積み込みがあり、下りの到着場所は新潟駅にはなるが、基本は駅ホームよりも広い車両基地で積み込み・積み下ろしを実施して、多量の荷物輸送の検証を行うという。

 働き方改革関連法の施行に伴う”物流の2024年問題”が取りざたされて久しい。24年4月より、自動車運転業務の時間外労働上限が年間960時間に制限されることで起こると想定される諸問題で、物流の停滞や物流業者の売上減などが懸念されている。国土交通省によると、24年度の輸送能力は19年度比較で14.2%不足する可能性があるという。もともとの業界課題であるドライバー不足も相まって、30年度には34.1%の不足が見込まれている。

 はこビュンは、長距離区間の輸送を新幹線で行い、到着地からの配送を物流業者が担う。業者はJR物流に限らない。トライアル時点から、荷主として佐川急便や日本通運、ヤマト運輸などが参画している。今回のトライアルも同様で、実施は23年8月31日を予定。JR東日本らは今後もトライアルを継続的に行い、多量輸送の事業化を目指していくという。(記事:三部朗・記事一覧を見る

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