米学費ローン免除無効判決がもたらす、景気への影響は

2023年7月8日 09:00

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●大学学費ローン返済免除が最高裁で無効判決

 米国最高裁は6月30日、バイデン政権が掲げていた大学学費ローン返済の一部免除策は無効と判断した。

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 バイデン政権は2022年の8月にこの計画を発表したが、共和党支持層の保守色の強い州から提訴されており、大学教育を受ける一部の人を優遇することで行政権を逸脱するという批判の声が大きかった。

 来年に大統領政権を控えるバイデン政権に大きな痛手となるばかりでなく、2023年後半からの景気への影響もあるだろうか?

●バイデン政権の一部学生ローン免除策

 米国では社会人になっても払い続けなければならない、高額な大学授業料の返済が大きな社会問題となっている。

 学生ローン返済が重荷となって、住宅の購入資金や貯蓄に回せないという中低所得層からの不満があった。

 中間層の支持を得たいバイデン政権は、年収12万5000ドル(約1800万円)以下の世帯に限り、1人当たり最大2万ドル(約290万円)の返済を免除すると発表していた。

 すでに2500万人以上が申請していたと言われており、政府負担も総額4000億ドル(約57兆円)以上になると言われていた。

●気になる景気への影響

 無効の判決が出る前には、この学生ローン免除策はインフレを加速させるという懸念があった。最大300万円近くの負債が消えるとなれば、その分が今すぐでなくても消費へと回ることは想像に難くない。

 また今回の無効判決は、学生ローンの返済が、コロナ禍で猶予されていた期限が9月末までとなり、10月から再開するというタイミングと重なってしまった。

 実質4000億ドルの経済対策がなかったことになり、さらに今まで猶予されていた返済の支払いが再開されるとなると、国民の家計は苦しくなる。

 一般家計に例えれば、ボーナスと退職金が減らされたのに、住宅ローンの金利が上昇して返済額が増加するようなものである。個人消費が柱の米国GDPを押し下げるという懸念がある。

 景気が減速し、FRBの利上げのペースに影響が出る可能性もある。

 学生ローンを払い終えた人や、大学に行かなかった人には関係のない政策ではあるが、米国景気全体にどの程度影響が出るかは、現状では見通せない。(記事:森泰隆・記事一覧を見る

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