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酒はコミュニケーションを円滑化し所得を向上させるのか? 東大らの研究
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東京大学などは25日、飲酒は必ずしも所得や労働時間に影響を与えないことが解ったと発表した。これまでの研究では、適度の飲酒は、ビジネスにおけるコミュニケーションを円滑化し、所得を向上させる可能性があることが指摘されてきた。
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■これまでの研究の問題点
飲酒と所得の関係については、これまでも盛んに研究がおこなわれてきた。だが飲酒と所得の因果関係を特定することは、難しかった。これは飲酒自体が、個人の所得、職業、性格、生活環境などに影響されているためだ。
そこで研究グループが着目したのが、体質だ。日本を含む東アジア人の中には体質的にアルコール耐性が低い人達がいる。これは遺伝的にアセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH2)と呼ばれる、アルコールを分解し無毒化する酵素の働きが、弱かったり、欠けたりしているためだ。
体質なら個人の仕事、職業、性格、生活環境などに影響されないと考えられる。
■アルコール耐性と所得・労働時間の関係を調査
研究グループは、日本人約2,000人、台湾人約1,000人、韓国人約500人の働く成人男性を対象に、アルコールパッチテストを実施。アルコール耐性と所得・労働時間の関係を統計的に分析した。
その結果、アルコール耐性がある男性とアルコール耐性が低い男性との間で、所得と労働時間について、統計的な有意差は確認されなかった。
ただアルコール耐性がある男性は、アルコール耐性が低い男性に比べて、飲酒頻度と1回当たりの飲酒量が多いことは確認された。これは飲める人は飲むという、これまでの研究成果を再確認するものだという。
なお、上記のアルコールパッチテストで、アルコール耐性がある男性とアルコール耐性が低い男性の割合は、耐性がある割合が約50%~60%、耐性が低い割合が約40%~50%となり、これまでのゲノム解析に基づく割合と概ね一致した。
研究グループでは今後、自然科学分野の研究者と連携しつつ、より大規模なデータを使って、より確度の高い研究がおこなわれていくことが期待されるとしている。もう家族に「仕事だから」という酒の言い訳は通用しないかもしれない。(記事:飯銅重幸・記事一覧を見る)
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