住友商事、水素活用しディーゼルエンジンの燃費改善 CO2排出量も削減へ

2023年4月13日 15:53

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住友商事が活用を決めたHydrogen On Demand Technologiesが開発する製品「D-HAT」(画像:住友商事発表資料より)

住友商事が活用を決めたHydrogen On Demand Technologiesが開発する製品「D-HAT」(画像:住友商事発表資料より)[写真拡大]

  • D-HAT内部の仕組みのイメージ図(画像:住友商事発表資料より)

 住友商事は13日、水素を活用して大型ディーゼルエンジンの燃焼効率を上げる装置「D-HAT」の活用について発表した。同社は、ディーゼルエンジンが必要な商用車・特殊車両のCO2排出量削減、燃費改善に取り組んでおり、その一環として活用する。

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 D-HATは、水を電気分解する装置で、住友商事が販売代理店を務めるシリコンバレーのスタートアップ、Hydrogen On Demand Technologiesが開発した。

 小型軽量の装置で、すでに多数の大型ディーゼルエンジンに搭載されている。蒸留水を補充するだけで、純度99.9%の水素が生成できるため、従来のような高圧水素タンクに貯蔵することも、水素ステーションに立ち寄る必要もない。

 ディーゼルエンジンは、軽油を燃焼させても70%程度しか完全燃焼していない。残りは部分的に燃焼して炭化水素として取り残され、エンジン内部を詰まらせたり、オイルを汚したりして排気ガスとして排出される。

 この30%の未燃焼部分を効率よく燃焼させるのが、水素となる。インテークマニホールドから水素を注入することで、95%まで燃焼効率がアップするという。燃焼室で水素は軽油より10倍速く燃焼するため、効率よく燃焼をアシストする。従来の軽油だけで燃焼するときより燃焼効率がアップし、パワー向上、燃費向上、そしてCO2の大幅減少につながるという。

 D-HATは、水を注ぐだけで水素を生成する。Hydrogen On Demand Technologiesが独自開発したPEMセル技術の陽子交換膜燃料電池が、電気分解プロセスを通じて蒸留水を確実に水素に変換するという。

 電気分解には、エンジンの補器であるオルタネーターからわずかな電力を引き出すだけで、毎分最大4リットルの水素の抽出が可能という。この水素だけでエンジンに供給し、燃焼をサポート。結果、軽油使用量とCO2を含む排気ガスの量は、いずれも10~15%削減するという。

 水素を供給するために、エンジン本体に特別な改造は必要ない。インテークマニホールドに専用の配管を使い、ジョイントするだけで完了だ。コンパクトで軽量なD-HAT本体は、ほぼすべてのディーゼルエンジンへの搭載が可能という。

 D-HATの活用に関しては現在国内外で実証実験が行われており、今後の普及が期待されている。(記事:小泉嘉史・記事一覧を見る

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