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宇宙の始まりに光を生み出したのは重力か? 加マギル大らの研究
宇宙の始まりは、私たちの想像をはるかに超える不思議なことが起こっていたらしい。カナダ・マギル大学の研究者らの研究によると、宇宙の始まりの際に起こった空間の加速度的な膨張(これをインフレーションと呼ぶ)の際、重力波が定常波となり、宇宙空間全体に非常に強い状態で充満。これが宇宙の電磁場を励起したことにより、光が生まれた可能性があるという。
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定常波は空間の一定の場所にとどまり、共鳴状態となった波を意味する。縦笛を例にとると、縦笛の複数の穴を指でふさぐことにより、共鳴状態を作り出す筒の長さ(音が共鳴状態を起こす空間領域)が決まる。この長さに、特定の波長をもつ音が共鳴状態を作り、音階となる。この音階での音波はエネルギーが増幅され、私たちの耳に鳴り響く。
これと似た現象が、初期の宇宙空間において、音の代わりに重力波で起こったというのだ。
宇宙は始まりのころ、まるで音を奏でる縦笛のような状態を、重力波によって作り出した。その縦笛がインフレーションを起こして、現在のような非常に微弱な重力波の世界をもたらしたという。
宇宙の始まりのころにあった定常状態の非常に密度の高い強い重力波は、電磁場を激しく刺激して、この宇宙を光というエネルギーに満ちた空間へと変貌させたというのだ。ただし宇宙が始まって約38万年の間は、光は宇宙空間全体にびっしりと充満していた電子にその行く手を阻まれて、宇宙空間を自由自在に飛び回ることができなかったのだが。
重力の刺激を受けた電磁場でもまた、電磁波の共鳴現象により、エネルギーの増幅が起こり、宇宙にある光はより強いものへと変化していったという。
光を含む電磁波は、宇宙が始まって38万年後の時代以前にまでさかのぼって観測することはできない。だがもしも、それよりも古い定常波をなしていたころの重力波を観測できれば、宇宙の始まる前の世界の状況が推測可能になるのかもしれない。
今回の研究の詳細は、米国の素粒子天体物理学ジャーナル「Physics of the Dark Universe」に公開されている。(記事:cedar3・記事一覧を見る)
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