DXに取組む企業は約7割に 課題は人材 経営者の理解が重要 DX白書

2023年2月17日 10:42

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 情報処理推進機構(IPA)は9日、「DX白書 2023」を発表した。IPAとは、経済産業省の管轄下で日本のIT産業の強化を図ることを目的とした、独立行政法人である。DX白書は、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進に関して、民間企業、官公庁へのアンケート等をもとに、その進展状況や日米比較、推進上の課題等に関してIPAが発行するレポートである。

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 白書によれば、日本においてDXに取組んでいる企業の割合は2022年度調査で69.3%にのぼり、2021年度から13.5%増加。アメリカは更に進んでおり、2022年度の割合は77.9%となっている。

 総括すると、日本でもDXの取組みは進展してきているが、中小企業や地方ではその取組割合が低下することや、推進上の課題として人材面の確保等が挙げられている。

 一口にDXと言っても、その目的や導入レベルは企業ごとに大きく異なる。単純に紙ベースの文書をデジタル化することをDX化と呼ぶケースもあれば、部門横断でのワークフローや自動化、更には企業横断の業界プラットフォームと呼べるレベルまでDX化もなる。また、活用する技術もOCRからAIまで幅広い。

 重要なのは、その企業がDXを進める目的を達成できているかという点である。白書の調査では、2022年度アンケートの結果「DXの取組成果が出ている」と回答した企業は58.0%となっており、前年度から8.5%増加している。このことから、レベルの差はあるが、生産性向上や、価値の創出といった経営目標に一定程度有効な取組みとなっていることがうかがえる。

 一方、課題の面に着目すると、最大の問題は経営リソース、特に人材面が挙げられるだろう。これは、白書だけでなく、中小企業基盤整備機構の「中小企業のDX推進に関する調査アンケート報告書」や、日本能率協会の「『日本企業の経営課題2021』 調査結果」でも指摘されている。

 DX推進における失敗で起こりがちなのが、経営課題や業務目標に紐づかないゴールを設定し、何かしらの技術を部分的に導入したため、成果が測れないことや見えないことである。これも、DXプロジェクトを進める人材(役員クラスから担当者クラスまで)の不足によるところである。

 スモールスタートで部分的にDX関連の技術を導入しても、継続的に管理する人材がいなければ、遅かれ早かれ社内のDX化は進展しないどころか、破綻する可能性が高い。RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)と呼ばれる各種処理をロボットが自動で行ってくれるツールが、多くの企業で導入されている。だがメンテナンスする人がいなくなったことで、ゾンビロボットが勝手に動いているという現象は、今や珍しくない。

 やはり、DXを進める上で最も重要なのは経営者の理解ということになる。リスキリングも含めた人材の活用、先行投資の判断、複数部署横断でのプロジェクト推進等、DXは全社を巻き込んで進めるべき施策だ。企業の経営課題の解決に貢献することこそ、その導入目的となるからである。(記事:Paji・記事一覧を見る

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