AI活用の地球外生命体探索、8つの有力候補を検出 トロント大の研究

2023年2月10日 10:54

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自然現象とは考えられない8種類の電波パターン(画像: SETI Instituteの発表資料より)

自然現象とは考えられない8種類の電波パターン(画像: SETI Instituteの発表資料より)[写真拡大]

 宇宙のどこかに地球人以外の知的生命体がいるのかどうかは、現時点で答えが得られていない。未確認飛行物体に関する情報は、後を絶たないが、それが地球外の知的生命体の乗り物であると証明された事例もまだ1つもない。

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 最新の研究によれば宇宙は誕生から138億年が経過したが、その間も宇宙は膨張を続けているため、人類が観測できる最も遠くの天体までの距離は138億光年ではなく、約400億光年であるという。しかもそれより外側にも宇宙は広がっている。

 そんな状況でも、宇宙のどこかで知的生命体がいるかもしれないと考え、宇宙からの電波を地道に分析して、自然現象なのかそれとも非自然現象(つまりこれが知的生命体存在の証拠となる)なのかを識別している科学者がいる。昔SF映画に”コンタクト”があったが、その主人公もその科学者の1人であった。映画では人間の手で宇宙からの電波を逐一調べていたが、カナダのトロント大学には、この大変骨の折れる作業をAIの力を借りて進めている研究チームがある。

 研究チームは1月30日、その取り組みを公表した。それによれば、820個の恒星系からやってくる480時間以上の電波信号について、AIアルゴリズムにより、自然の天体物理学的プロセスで生成された信号とそうでないものを識別した。AIには自然現象に起因する電波パターンが収録されているため、このような識別作業は全自動で可能なのだ。

 この膨大なデータの中に、自然の天体物理学的プロセスで生成されたものではない信号が、2万0,515種類あったという。この信号を逐一人間の手で人工の電波による無線干渉の影響がないか調べたところ、そのうちの8種は人工電波干渉の影響を受けていなかった。

 つまりこの8種は、宇宙人が発した可能性があるのだ。その後、追跡調査としてこの8種の電波が発せられた方向から、これを再現できる信号が届いていないか調査しているが、いまのところ見つかっていない。

 映画”コンタクト”に描かれていたような優しきエイリアンとの出会いを期待したいところだが、その日が来るのはまだまだ先のようだ。なお今回の研究の詳細は、「Nature Astronomy」で公開されている。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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