【映画で学ぶ英語】『波止場』の映画史に残る名言

2022年12月10日 14:22

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 1954年に公開された映画『波止場』は、ニューヨークの港で働く元ボクサーの姿を描いた犯罪ドラマ。ホーボーケンの波止場を牛耳るギャングの暗躍に立ち向かう労働者・テリー役を演じたのは、当時演技派として注目されるようになったマーロン・ブランド。彼はこの作品で、アカデミー主演男優賞に輝いている。

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 今回はこの映画の名言で、could have + 過去分詞という構文の使い方を学習しよう。

■映画『波止場』のあらすじ

 元ボクサーのテリー(マーロン・ブランド)は、波止場で荷役をする日雇い労働者。とはいえ、兄のチャーリーが波止場の仕事を仕切るギャングの幹部であるため、比較的待遇はよい。

 ある夜、テリーはギャングの親玉・ジョニーの命令で仲間の労働者・ジョーイを屋上に呼び出した。ところがテリーの目の前でジョーイは、ジョニーの手下によって突き落とされ、殺されてしまう。

 ジョーイは、ジョニーたちギャングの実態について、ニューヨーク港湾管理当局に証言しようとしていたのだ。

 報復を恐れて口をつぐむ日雇い労働者たち。テリーには裁判所の召喚状が来るが、彼も証言することをためらっている。

 だが、正義を貫き通そうとするジョーイの妹・イディ(エヴァ・マリー・セイント)のひたむきな姿に心打たれたテリー。彼の心のなかにも、ギャングの言いなりになって生きる現状に対する疑問が芽生えてくるのであった。

■映画『波止場』の名言

 テリーが証言するのを止めさせようと、ジョニーはチャーリーを説得に差し向ける。車の後部座席で話し合うチャーリーとテリー。テリーがボクサーをしていた頃のことを思い出すチャーリーに、テリーは次のように言う。

 You don’t understand! I coulda had class. I coulda been a contender. I could've been somebody, instead of a bum, which is what I am.

 「分かってないな。俺はひとかどの、トップを狙える人物になれたんだ。今のやくざ者のような俺ではなくてだ」

 テリーは、チャーリーの指示で八百長試合に加担したため、ボクサーとしてのキャリアを台無しにされたのである。

■表現解説

 このセリフは、could have + 過去分詞の構文の典型的な例だ。だが構文の使い方の前に、細かい単語の意味を確認しておこう。

 Have classとは、ここでは「礼儀作法を身につけている」という意味。

 Contenderは「競争者」だが、特にトップの地位を目指して競争する人物を指すことがある。ここでは、ボクシングのチャンピオンのことを示唆しているのだろう。ちなみに「首相候補者」と言うのなら、prime minister contendersとなる。

 Be somebodyは「重要な人物である」という意味で、これに対してbumは「怠け者、浮浪者」である。

 さて、could have + 過去分詞であるが、これは「仮定法過去完了」と呼ばれる構文だ。助動詞canの過去形couldと、完了形(have + 過去分詞)の組み合わせで成り立っている。

 意味はこのセリフのように、「~することもできたのに」と現実には起きなかったことを含めて、過去の可能性を表現するのに使われる。

 If+過去完了の節を伴うと、なぜそうならなかったのか、原因を表現することができる。She could have swum faster if her leg hadn’t hurt herという文は、要するに「足が痛かったので速く泳ぐことができなかった」という意味である。

 「You could have told me/言ってくれればよかったのに」と批判的な意味でも、「I couldn’t have done it without you/あなたがいなかったら、できなかった」と感謝の意味でも使えて、便利な表現だ。(記事:ベルリン・リポート・記事一覧を見る

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