ベトナム産EV車

2022年11月17日 08:25

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 Photo:2010年のハノイ市内は2輪車が目立った ©sawahajime

 Photo:2010年のハノイ市内は2輪車が目立った ©sawahajime[写真拡大]

●「ビンファスト」という会社

 ベトナム産初のEV車の販売を開始した「ビンファスト(英語:VinFast LLC)」は、ベトナム複合企業最大手、ビングループのメンバー企業で、2017年6月に設立された輸送用機器メーカーである。

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 「ビンファスト」の前身は、「GMベトナム」で、該社のHPによれば、『VinFast は、ベトナム最大の民間企業である Vingroup のメンバーです。当社は、ベトナムでの発売からわずか 21か月で、すべての競合セグメントでナンバー 1 の自動車販売業者になりました』とある。

 2017年に創業し、2018年にはパリ・オートショーに「Lux」を発表。

 2019年には「VinFast LuxSA2.0」「VinFast LaxA2.0」「VinFast Fadil 」の3セグメントでベトナム市場でベストセラーとなった。

 これだけを見ると非常に歴史の浅い会社に見えるが、前身であるGMベトナム (GM Vietnam) は、ゼネラルモーターズ (General Motors Company) のベトナム子会社で、シボレーブランドの自動車の製造および販売を行っていた。

 こんな経緯を見れば、該社は今まで自動車とは何等関係の無かった、新興EV進出企業とは一線を画す。

●EV車は途上国には手がけ易い

 失礼な表現ながら、一般論として述べれば、内燃機関を搭載した純粋な「自動車」を製造することは、途上国には非常に困難である。

 しかしEV車であれば、部品点数も少なく、部品工業の裾野が未発達であっても、「電動車」の製造は比較的容易だといえる。

 本当は、この単なる「モーターと蓄電池を組み合わせただけの乗り物」である「電動車」を、「自動車」のレベルにまで成長させるのが難しいのだ。

 今回紹介した「ビンファスト」の場合は、母体がGM子会社ということもあって、「自動車」の知識、技術は持ち合わせているので、そこいらの「新興EVメーカー」とは異なるのは明らかだ。

●ビンファストの現状

 ベトナム政府は3月からEV車購入時の特別消費税を15%から3%に引き下げた結果、ガソリン車と比較して10分の1以下になった。

 しかし、ビンファストのEV車販売台数は1~8月の累計が約2200台にとどまっている。

 充電インフラの整備の遅れが原因だが、自国産であってもいろいろと課題を抱えているEV車は、未だ従来の内燃機関と同様な使い勝手が実現されない限りは、過去に「自動車の生産」経験がある企業であっても、いろいろと困難が伴う。

●技術があっても生き残れないことも

 2021年12月26日付「電動車決議、参加企業の将来は?」でも1960年代初頭の日本のバイクメーカー百花繚乱の時代を例示したが、敗戦により翼をもがれた航空機メーカーの様な、高度な技術を持つ錚々たる企業でさえも、生き残れなかった事実がある。

 しかし、何の基盤も持たずにEV進出を目指す企業に較べれば、せめても「ノックダウン生産」や「現地生産」を経験すれば、「自動車を製造する」ことの難しさも理解しているだろう。

●日本製以外で選択するなら

 「ビンファスト」の場合も、EV車であったからこそ、自国産の車両を新規に販売開始することが出来たのだろう。

 EV車は、未だ「幼稚園、小学校」のレベルだからこそ、「大学、大学院」レベルの「内燃機関搭載の自動車」では全く勝負にならない戦いが、百花繚乱の新興EV車メーカーが相手だから、勝負も可能となった。

 販売実績では先行するが、2021年12月30日に47万台超のリコールを発生させた「テスラ」の安全面に於いての失敗を他山の石として、発火事故等を「統計上の確率を低減させる」姿勢では無く、「ZD(Zero Defects)=欠陥の完全排除」を目指せば良いだろう。

 筆者のスタンスは、「原則としてEV車は対象外」であるが、どうしても「EV車を選べ」といわれ、「日本製は除外する」とされた場合は、ポルシェタイカン(Porsche Taycan)の様な「自動車メーカーが製造したEV車」を選択する。

 しかし、こんな高額車では無く、一般的なEV車に限定されて、中国産、韓国産、ベトナム産からしか選べないなら、ベトナム産が第1候補となると思う。(記事:沢ハジメ・記事一覧を見る

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