東洋水産の急回復計画にも、重荷は「電気・ガス燃料費増」

2022年10月25日 08:07

印刷

 東洋水産(東証プライム)の今期計画は、脱コロナ禍を示す流れとして注目に値する。1948年に、水産業を祖業に設立された。だが今は即席麺が主体。国内2位。米国やカナダで圧倒的な首位。

【こちらも】海外に足元の収益を委ねるユニクロの現状と、新商品開発の枠組み

 「赤いきつね(1978年)」「緑のたぬき(1980年)」「麺づくり(1992年)」「マルちゃん正麺(2011年)」は、麺好きの私の『食史』の一面であると言って決して過言ではない。

 そんな東洋水産の前3月期は、6.1%の増収も「18.4%の営業減益、22.9%の最終減益」と沈んだ。対して今3月期は「12.0%の増収(4050億円)、22.7%の営業増益(365億円)、20.5%の最終増益(270億円)」計画で立ち上がった。そして開示済みの第1四半期は前年同期比「23.3%増収(1031億2700万円)、27.7%営業増益(107億2700万円)、34.3%最終増益(86億4900万円)」と、通期予想を十分に裏付ける出足となった。

 だが第1四半期を詳細に読み込んでいくとセグメント別では、表現が適当か否かはともかく主軸は「玉石混交」状態。

【水産食品事業】: 新型コロナ感染症拡大防止対策の外出自粛が緩和傾向となり、主力のコンビニエンス向け商品が販売数量増。売上高17.8%増も、セグメント利益は原油高の影響による仕入れコスト増や物流コスト増で10.7%減益。

【国内製麺事業】: カップ麺(赤いきつね、緑のたぬき)は価格改定(値上げ、6月)も、減収。袋麺は4月の新シリーズ効果で増収。全体的には2.5%増収(216億5500万円)、が利益は広告宣伝費や動力費(製造工場の電気・ガス・燃料費)増で52.2%減。

【低温食品事業】: 外出自粛緩和で外食向けや事業所給食向けの増加。価格改定(4月)等もあり1.4%増収も、利益は0.2%増にとどまった。

 対して利益面を牽引したのは・・・

【海外即席麺事業】: 新型コロナウイルス感染症拡大前と比べ、継続的な需要増。米国では袋麺シリーズ・カップ麺シリーズが好調に推移。メキシコも同様に好調。原材料費上昇はあったが2.5%増収、119.3%増益。

 東洋水産では第1四半期の開示後も、「中間期・通期予想に関しては、新型コロナウイルス感染症の収束時期等が不透明であり、現時点では合理的な算定が困難。期初予想を変更できない」と発信している。

 つまり「新型コロナウイルス感染の今後」、それに伴う我々の懐には厳しいが「価格改定の浸透」の如何。また原油高・物流費高の今後。今期予想の達成・上方修正は「コロナ禍」を脱する確実な歩みを示す、といえる。その意味で同社の収益動向をウオッチしたい。(記事:千葉明・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事