統計で推測する生き残るEV車メーカー数は?

2022年9月3日 17:29

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 Photo:「統計でウソをつく法」原書は1954年、日本語訳は1968年に刊行された初版版。©sawahajime

 Photo:「統計でウソをつく法」原書は1954年、日本語訳は1968年に刊行された初版版。©sawahajime[写真拡大]

●統計でウソをつく法

 表現は悪いが、統計学は使い方次第で、素人を欺く事も可能だ。

【こちらも】「自動車メーカーの責任」とは

 細工されていないコインをトスして表が出る回数と裏が出る回数は、トスする回数が1万回とか、十分に大きければ、5087:4913といった風に、ほゞ5:5となる。(~この例では表50.87%)

 しかし、20回とか少ない回数で試せば、偶然に14:6とか、倍以上の差が出る事が起こり得る。

 サンプル数が少ないために、14/20=70%と、極端な偏りが出た結果だけを採り上げて、「7割もの人が・・・」といった扱いで、本来は「半数の人が」としか言えない頻度を誤魔化す事が出来てしまう。

 少しずる賢い輩は、ここで「70%」はスッキリし過ぎているから、サンプルを22回にして15:7なら「68.18%」となる。こうすれれば、もっともらしい数値に出来るのだ。

 勿論、母数(サンプル数=この場合は22回しかトスしていない)は公表しない。

 「最低必要限度のサンプル数確保が必須条件」だというのは、サンプル数を少なくして、偶然に発生する特異な数値を「故意に用いる」事を防ぐ意味がある。 

 「統計でウソをつく法(写真1)」は、原書は1954年に刊行された古い本だが、統計学に対する心理的な障壁を取り除いてくれる、文科系の人にも気軽に読める本だ。

●婚活3条件を具体的に検証

 セクハラとの非難覚悟で、判り易い例を挙げて見たい。

 昔は、女性は結婚相手に求める条件として、「高学歴、高身長、高収入」と宣言していた。「自分自身はどうなのか?」という、本人の容姿や資質等の、そんな相手に相応しいか否かの、自分の条件を全く考えないで~。

 本来、「高学歴」とはどこまでを言うのか。大学卒なのか、大学院修士課程までか、博士課程修了までか?

 内閣府共同参画局の資料によれば、2019年には男性の56.6%が大学へ進学しているから、大学でも有名校と「誰でも入れる」レベルの大学は区別されるのだろうか。

 ここでは便宜上「人並み」「十人並み」、つまり10名の適齢期男性の「2人に1人」つまり1/2レベルとしておこう。

 「高身長」は、平均身長以上だとしよう。

 そして、「高収入」も、「億万長者」では無くて、平均収入以上か以下かと割り切ろう。

 要するに「平均以上か以下か」、こんな非常に杜撰な条件であっても、上記3条件をクリア出来るのは、1/2×1/2×1/2=1/8となる。

 8人に1人だから12.5%、100人男子がいれば、12~3人しか条件を満たさない。

 加えて、「3条件だけを満たした」が、思いっきり性格が悪かったり、ブサイクな男子もいるはずだ。

 ここにスタイルや顔の好みまで加わると、どれだけ難しい条件を提示しているかが理解出来ると思う。勿論、「振り返って、自身はどうなの?」とまでは言わないが。

●何でも自動車だと認識してはいけない

 一応自動車の形をしている。しかし、まともな内燃機関エンジンは作れないから、適当な電動モーターを動力源にした。

 今どき「鉛蓄電池」という訳にいかないから、品質管理能力がまちまちで、発火事故の危険を孕んだ製品も含まれているだろうが、適当に車載用蓄電池を見繕って調達した。

 その際、リチウムイオンバッテリー供給元の技術レベルまで確かめる事はせず、値段で決定した。過去、精密な機械設計なんぞはした事が無い。

 ・・・こんな業者が「EV車」ですといって、製造した「自動車擬き」の乗り物を造るのだから、単に駐車していただけで発火事故を起こしたりする。

●まともなEV車が造れる企業

 前述の「高学歴、高身長、高収入」では無いが、単純構造のEV車(=「車擬き」の代物)ですら、「安全な乗り物」の域に到達するメーカーがどの程度あるか疑問である。

 1960年代の2輪車全盛期に、日本には283社ものメーカーが存在した。しかしこの中で、現在も継続して2輪を生産しているのは、ホンダ、スズキ、ヤマハ、カワサキの4社しか残っていないのが事実である。

 撤退して行ったメーカーには、三菱が「シルバーピジョン」、スバルは「ラビット」、ダンプやパッカー等の特装車や飛行艇の新明和工業も「ポインター」を作っていた。

 それ程の技術を持った企業であってさえこの様な状況なのだ。バイクよりも難しい「まともなEV車」レベルに達するのは、数えるほどしか無いはずだ。

 中国には既に300社ものEV車メーカーがあると聞く。婚活3条件どころか、自動車の基礎が判っているか、安全性の重大さを理解しているか、機械設計の知識はあるか、精密機械の組み立て経験があるか、品質に信頼が置けるバッテリーを使用しているか、十分な資金力があるか等々、幾多の条件を当てはめて、どれ程の数の企業がクリア可能なのだろうか。

 数年後、果たしてどれ位のEV車メーカーが生き残っているか?

 HV車よりも格段に「技術要求レベルが低いEV車」(簡単に造れる)であっても、まともな車を造るのは難しいと警告しておきたい。(記事:沢ハジメ・記事一覧を見る

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