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原始銀河の進化過程を「タイムマシン」シミュレーションで解明へ 東大
110億光年の彼方にあるCOSMOSフィールドの観測データが示す宇宙の構造(上)と、現在のこの領域が進化を遂げていると推定される宇宙の構造を示した解析結果(下)。(c) Ata et al.(画像: 東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構の発表資料より)[写真拡大]
今から約138億年前に宇宙は大きさを持たない存在から、量子論的な揺らぎによって、ごくわずかの時間(10のマイナス35乗秒)に猛烈な膨張(10の30乗倍)を遂げ、誕生したと考えられている。これが有名なビッグバン説であるが、なぜ宇宙が現在のような大規模構造へと進化を遂げてきたのかについては謎だらけである。
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だが現在では、コンピューター性能の著しい向上やプログラミング技術の進歩によって、数値解析シミュレーションを用いた様々な考察が可能となってきている。
東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構は、「COSMOSフィールド」と呼ばれる、地球から110億光年の距離にあるろくぶんぎ座方向の領域からの観測データを用いて、宇宙誕生の瞬間から現在に至るまでの宇宙の進化過程についてシミュレーションを実施。この領域で観測されていた原始銀河団のうち3つが、110億年後の現在までに、実際に銀河団へと成長する確率が高いことをつきとめた。
従来の数値解析シミュレーションでは、実際に観測されている宇宙の大規模構造をうまく再現できていない。だが今回の研究では、110億年前の宇宙構造の直接観測データを解析の制約条件とするため、赤方偏移量Z=2.3の時の宇宙構造を再現できるように、解析条件に制約を加えた。その結果、宇宙誕生時(Z=100)の瞬間から、現在(Z=0)までの時間経過を経た際の構造進化を再現する、信頼性の高いシミュレーションを実現したという。
この解析結果は、現在のCOSMOSフィールド構造を推定したもので、これを地球で直接観測できるのは110億年後であるため、人類はシミュレーション精度を直接確認できない。だが現在観測されている別領域の(つまりもう少し地球に近く、現在に近い時代の)宇宙の大規模構造と類似構造を解析結果が示したため、これが間接的に解析結果の信頼性の高さを示唆していると考えられるのだ。
なお研究の成果は、ネイチャーアストロノミーで2022年6月2日に論文が公開されている。(記事:cedar3・記事一覧を見る)
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