化学繊維に代るクモ糸シルクタンパク質繊維を開発 ゼロカーボンへ前進 京大ら

2022年6月2日 11:27

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研究の概要(画像:京都大学報道発表資料より)

研究の概要(画像:京都大学報道発表資料より)[写真拡大]

 京都大学、Spiber、Symbiobeなどは5月26日、化学繊維に代るクモ糸シルクタンパク質繊維の開発に成功したと発表した。この繊維は、海洋性紅色光合成細菌が大気中のCO2とN2から合成したタンパク質を原料としているため、ゼロカーボンに貢献することが期待できるという。

【こちらも】遺伝子置き換えでクモ糸タンパク質を高割合で含むシルク繊維を大量生産

■ゼロカーボンとは?

 現在、CO2の排出による地球温暖化が全世界規模で社会問題化している。

 ゼロカーボンは、企業・家庭などから排出されるCO2を削減し、森林などによる吸収により、CO2の排出を実質的に0にすることを意味する。

 京都府や京都大学などはこのような観点から、これまでゼロカーボンバイオ産業の創出に取り組んできた。

 化学繊維は、石油などを原料としており、その製造から破棄にいたるまで大量のCO2を排出する。

 今回研究グループが開発に成功したクモ糸シルクタンパク質繊維は、海洋性紅色光合成細菌が大気中のCO2とN2から合成したタンパク質を原料にしている。そのため、CO2の排出を大幅に削減することが期待できる。

 なお、クモ糸シルクタンパク質繊維は、軽くて丈夫なうえに、環境中で微生物などによって自然に分解されるという非常に優れた繊維だ。

■クモ糸シルクタンパク質繊維の開発方法

 研究グループはまず、海で光合成する細菌、海洋性紅色光合成細菌にクモ(ジョロウグモ)の糸を構成するタンパク質を合成する遺伝子を組み込み、最適な条件下で培養。これを集菌、破壊、抽出、精製し、高純度のクモ糸シルクタンパク質を生成した。

 そしてその後、SpiberやSymbiobeなどの技術を持ち寄って、これを繊維化することに成功。

 今後は海洋性紅色光合成細菌の培養の規模を大きくし、クモ糸シルクタンパク質繊維の生産を拡大することで、さまざまなものづくりに貢献することが期待できるという。

 CO2排出削減には産業分野でのCO2排出削減が欠かせない。今後のクモ糸シルクタンパク質繊維の普及に期待したい。(記事:飯銅重幸・記事一覧を見る

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