銀河系外で最も明るいパルサー、大マゼラン雲で発見 国際研究チーム

2022年5月3日 08:33

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電波望遠鏡で撮影された新しいパルサー。電磁波の明滅だけでなく円偏光に着目した結果、このパルサーの発見に至った。(c) Yuanming Wang(画像: オーストラリア連邦科学産業研究機構の発表資料より)

電波望遠鏡で撮影された新しいパルサー。電磁波の明滅だけでなく円偏光に着目した結果、このパルサーの発見に至った。(c) Yuanming Wang(画像: オーストラリア連邦科学産業研究機構の発表資料より)[写真拡大]

 パルサーは規則正しい周波数の電磁波を発する天体で、かつてその信号は、地球外知的生命体からのものではないかと考えられていた時代もあった。現在では中性子星がその正体であることが知られている。一般に最もよく知られているパルサーは、おうし座のかに星雲M1の中心星である"かにパルサー"だ。この正体は、小倉百人一首の撰者として有名な藤原定家が書き残した明月記にも記されている、1054年に起こった超新星爆発の残骸である。

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 これまでに発見された最も遠いパルサーは、地球から約5000万光年離れた渦巻銀河NGC5907内にあるNGC5907-X1だ。発見当時は、これまでに最も明るいパルサーの10倍の明るさとされていた。オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)などの国際研究チームは2日、大マゼラン雲で発見したパルサーが、これと同等かもしくはそれ以上の明るさになると発表した。研究論文は、アストロフィジカルジャーナル誌で公開されている。

 今回の発見で注目すべきなのは、このパルサーが大マゼラン雲の中心から約1度という非常に目立つ場所にありながら、これまでなぜ発見できなかったのかだ。さらに驚きなのは、このパルサーが従来大マゼラン雲で発見されたパルサーの2倍以上の明るさを持つ事実だ。

 従来パルサーの探索は、電磁波の明滅のみに注目してきた。だがCSIROの研究者らは、明滅だけでなく、パルサーが発する電磁波の円偏光に着目して探索。従来見落としていたパルサーの存在に気付いたのだ。

 通常、光が発する電磁場は、光の進行方向と垂直に振動する横波だ。しかしパルサーは、電磁波を明滅させるだけでなく、その電磁波が発する電磁場が波の進行方向と垂直ではなく、円を描いていく円偏光が起きている。円偏光に着目した観測をもっと広範囲に広げていけば、さらに遠くにあるパルサーの発見も期待できるとCSIROの研究者らは主張する。

 平均的な中性子性は直径が10~20km程度しかないが、質量は太陽の約1.5倍もある。たった20kmにも満たない5000万光年以上離れた宇宙空間で明滅する小天体を、人類が発見できるかもしれない術を得たという事実は驚愕に値する。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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