【映画で学ぶ英語】『Coda コーダ あいのうた』の名言5選

2022年4月6日 11:33

印刷

 3月27日(現地時間)に授賞式が行われた第94回アカデミー賞で作品賞に輝いた『Coda コーダ あいのうた』。聴覚障がい者を親に持つが、自身は健聴者である子ども・CODA=child of deaf adultsを主人公にした青春コメディ映画である。現在は、Apple TV+で配信されている。

【こちらも】【映画で学ぶ英語】『ベルファスト』の名言5選

 本作のように動画配信で観られる映画は、英語や日本語の字幕を読みながら原語音声で繰り返し鑑賞できるため、英語学習に絶好の教材である。今回はこの映画の前半から興味深いセリフを5つ取り上げたい。

■ You know why God made farts smell? So deaf people could enjoy them too.

 主人公の少女・ルビー・ロッシの家族は、米北東部・マサチューセッツ州グロスターで漁業を営む純朴な人びとだ。

 父親・フランクは特に飾り気のない人物で、年頃の娘を前に食卓でオナラをしても気にしない。嫌がる娘に「神様がオナラにニオイをつけた理由がわかるか? ろう者も楽しめるようにだ」とジョークで切り返す。

 文のつなぎに使われているsoは接続詞で、so thatと同じく「~できるように」という意味である。

 このセリフは手話であるが、身振り手振りの豊かな表現もこの映画の大きな見どころのひとつだ。フランク役を務めたトロイ・コッツァーは本作の演技でアカデミー助演男優賞を受賞。本作で母親役を務めたマーリー・マトリンについで、史上2人目のろう者のアカデミー受賞者となった。

■ I used to get made fun of.

 歌うことが好きなルビーは、気になる同級生・マイルズに近づきたいこともあって合唱クラブに入る。しかし練習の初日、人前で歌うことになれていないルビーは、緊張のあまり教室から逃げ出してしまった。

 「歌うのが怖いひとは普通合唱クラブに入らない」といぶかる顧問の先生・ミスター・Vにルビーは、「他の子が気になった」と説明する。話し方がおかしいのを「いつもからかわれていたから」と言うのである。

 このセリフではused toとmake fun ofという2つのイディオムを学習したい。

 Used toは「常に~した、~する習慣だった」と、過去の習慣や状態を表す。否定文や疑問文で形式ばった場合にはdidを用いないが、現実には特に口語でdid/didn’t use toとなる傾向が強いことも覚えておこう。

 Make fun ofは「~をからかう」というイディオム。ここでは受け身の助動詞であるgetによって「からかわれる」という意味の受動態になっている。

■ Do you know what Bowie said about Bob Dylan? “A voice like sand and glue.”

 ルビーが自分に自信を持っていないことに気づいたミスター・Vは、デヴィッド・ボウイがボブ・ディランに捧げた曲の歌詞を紹介する。

 楽曲「ボブ・ディランに捧げる歌」(1971年のアルバム『ハンキー・ドリー』に収録)でボウイはボブ・ディランの声を「砂と糊のよう」と評している。「砂」はザラザラした気に障る感覚、一方「糊」は1度くっついたら離れない、強く印象に残る感覚を表すと思われる。

 歌手にとって重要なのは、「something to say 何か言いたいこと」(日本語字幕では「魂」)があるかどうかだ、とミスター・Vは言いたいのである。

■ Let’s Get It On.

 ルビーたちが合唱クラブの練習で最初に歌う曲は、マーヴィン・ゲイによるソウルの名曲「Let’s Get It On」だ。

 Get it onは「楽しくやる、乗ってくる、興奮する」といった意味で、withを伴って婉曲に「~と肌を合わせる」という意味になる。

 日本語字幕では「愛し合おう、ひとつになろう」など様々に訳されているが、原語はすべてget it onである。

■ Miles is auditioning for Berklee College of Music.

 ミスター・Vはルビーに歌の才能があることを見抜き、音大進学を勧める。合唱クラブで彼女のデュエットのパートナーになったマイルズは、バークリー音楽大学のオーディションを受ける予定だ。彼女にやる気があるならば、ミスター・Vは彼女の受験指導もすると申し出てくれた。

 このセリフで使われているauditionという単語は、「オーディションを受ける」という意味の自動詞。何のオーディションを受けるかは、このセリフのように前置詞forを用いて示される。

 ルビーがボストンの音大に進学すると、彼女は家を離れなければならない。家族を支え続けるために音大進学を諦めるか、自らの道を歩みだすかという選択が、映画後半のドラマを盛り上げることになる。(記事:ベルリン・リポート・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事