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SMBC日興の相場操縦事件が示唆する、証券常識のない会社という「悪夢」! (下)
ブロックオファーの注文を大株主から受ける「エクイティ・プロダクト・ソリューション部」と、株取引資金を自社で賄う自己売買部門としての「エクイティ部」が、揃ってエクイティ本部の管理下にあった。大株主との取引で利益目標を積み上げたい部門と、先の読める自己売買の誘惑に駆られる部門が近い関係だったことが暗示的だ。
【前回は】SMBC日興の相場操縦事件が示唆する、証券常識のない会社という「悪夢」! (上)
今回逮捕された専務執行役員のヒル・トレボー・アロン容疑者が、エクイティ本部長だということが、そのストーリーを物語る。割り切ってしまえば、ブロックオファーと自己売買の双方で利益を計上できるから、株式トレーディングの腕を見込まれてUBS証券からヘッドハントされたヒル・トレボー・アロン容疑者にとって、断ちがたい誘惑だったと想像することは可能だ。
「生き馬の目を抜く」、と言われるゴールドマン・サックス証券から引き抜かれた山田誠容疑者は、その傘下のエクイティ部部長である。手腕を期待されて並外れた高給で引き抜かれていれば、危ない橋を渡ってでも社内の存在感を高めたいと思うのは人情だろう。
今回明らかになったのは、ブロックオファー取引に関して関連する情報を把握することや、対象となる銘柄の取引を明白に禁止している規定が、日本証券業協会には存在しないことだ。常識ある証券マンにとっては、既定のあるなしに拘わらず”やってはいけないこと”だった。
発覚した当初には「なぜ禁じ手に手を染めた」と指摘する声が強かったが、「明快な禁止規定がなければいいんだ」と暴走したのであれば、証券マンとしてのモラルや常識のレベルの話になってしまう。
伝えられるところでは、逮捕された4名はいずれも一貫して東京地検特捜部に対して「通常業務の範囲内だった」と容疑を否認しているようだ。通常業務と違法な取引との分別すら曖昧になるほど、日常的に違法取引を繰り返していた可能性すら感じられる。
そんなイメージを補強するように、SMBC日興証券の役職員絡みの不正事件で有罪判決が続いている。
2011年に未公開上場を知人に漏らして17年に有罪が確定していた元執行役員が、当時の勤務先であるSMBC日興証券(旧日興コーディアル証券)から求められた損害賠償請求事件で、最高裁は2月17日に上告を棄却し、元役員の敗訴が確定した。
同25日には、16年7月のインサイダー事件で金融商品取引法違反に問われた、SMBC日興証券の元社員に対する裁判で最高裁が上告を棄却し、元社員の有罪が確定した。
SMBC日興証券の幹部らによる相場操縦事件で、既に副社長が任意で事情聴取されていたことが報じられた。副社長は疑惑の本丸である「エクイティ本部」の統括者である。特捜部が法人も起訴対象と看做していることの表れだろう。
暫くの間は、SMBC日興証券から出て来るネガティブなニュースは、全て今回の事件と結びつけて語られるという腹の括り方が、同社の職員には必要かもしれない。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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