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2022年の中国春節連休、国内で旅行需要回復の兆し
*14:29JST 2022年の中国春節連休、国内で旅行需要回復の兆し
■2022年の中国春節連休、コロナ禍前の7割に回復
中国政府による新型コロナウイルスに対する予防・対策—「ゼロ・コロナ政策」効果が顕著にあらわれる中、コロナ禍で大きな打撃を受けた観光業もある程度回復に向かっている。2021年下半期に新たな変異ウイルス-オミクロン株が登場し、景気回復は予想よりも遅れた。2022年2月に開催された北京冬季五輪は「スポーツの政治化」に対する圧力を受けながらも、無事全日程を終えた。印象に残る試合を世界各国の観客に届けることができ、北京冬季五輪の経済効果も中国の観光産業の回復を後押しすることが期待される。
中国文化・観光部データセンターの計算によると、2022年の春節連休の(7日間)国内観光客数は前年同期比で2.0%減の2億5,100万人、2019年の春節連休の同73.9%まで回復したという(図表参照)。国内観光収入は前年同期比で3.9%減の2,891.98億元(約5兆3,000億円)となり、2019年比で56.3%を回復した。旅行予約プラットフォーム「シートリップ(Ctrip)」のデータを見ると、農村観光での宿泊は前年比で倍増となり、親戚・友人訪問、都市レジャー、農村レジャー、氷雪レジャーが市場の主流となっているようである。北京冬季五輪の開催期間(2022年2月4日〜20日)は、ウインタースポーツ観光型の観光地の売上が大幅に増加した。また、春節連休期間では、全国の1棟貸し型の庭付き宿泊施設や別荘などの民泊施設の予約取引額は前年同期比50%増となった。
コロナ禍でOTA(Online-Travel-Agent)業界は大きなダメージを受ける中、インバウンド観光も未だ厳しい状態にある。一方で、オミクロン株による蔓延が続く感染状況下で、アジア各国または欧米諸国では外国からの観光客受け入れ制限を緩和する動きが見られている。
3月3日のロイターの報道によると、中国政府は2年間にわたって維持してきた「ゼロ・コロナ」政策から「ウイルス共生」へ向けての取り込み準備が始めるという。北京冬季五輪で使われた措置をモデルにした「トラベルバブル」を今年の夏に向けて複数の選定都市で実験すると伝えられている。社会活動の正常化に期待感が高まり、同日の旅行関連セクターが好調な値動きを見せた。規制緩和に伴う「リベンジ消費」への期待が高まり、旅行・観光業の業績も強い回復も見込まれる。
■三線都市以下に事業展開を拡大する「同程旅行」は7四半期連続黒字を達成
ここ数年間、中国経済の高成長と国民所得水準の上昇につれて、旅行に対する需要が高まり、イデオロギーの変化もさらに進んでいる。近年の極めて急速なテクノロジーの発展にもたらした便利性と多様性も日常生活に浸透していることになり、中国国内でよく利用されている3つの旅行プラットフォームサイトを紹介する。
中国のOTA(Online Travel Agency)における最大手の旅行予約プラットフォーム企業である、Ctrip(シートリップ)は、2003年度に米国ナスタッグ市場に上場して以来、急成長している企業だ。2021年に香港市場で重複上場されている。ホテルネットワークは、全世界に約140万軒以上の会員制ホテル情報を提供しており、フライト情報は200都市以上を網羅している。主な事業内容は、(1)国内外の宿泊や航空券の手配、(2)列車の予約代行サービス、)(3)旅行・観光によるパッケージツアー、(4)企業の旅行管理サービス、(5)その他のサービス(国外ビザ手続き、クーポン発行などのサービス)の5つで構成される。シートリップは海外においては「Trip.com」として展開しており、顧客への対応サービスは24時間対応している。ユーザーから安心感のあるサイトと評価され、日本国内でも利用することができる。同社の2021年第3四半期決算概況によると、省内のホテル予約は19年同期比で約35%増加し、地方ローカルのホテル予約は60%も増加した。海外航空券の予約「Trip.com」は、主に欧米市場の回復により、同比で約40%増加した。その中でもEU行きの航空券が170%急増している。
続いて、2位の「Qunar(チューナー)」と3位の「同程旅行」を比較してみると、事業内容はほぼ変わらず、それぞれの業務の特徴を有している。2015年に百度(バイドゥ)傘下だったQunarの株式の45%をCtripが取得し、バイドゥはCtripの株式の25%を取得した。それ以来バイドゥはCtripの大株主である。Qunarは、業界最低価格を目指し提供しているオンラインサイトであり、Ctripとともに国内OTA市場で58.2%の市場シェア率を占めている。
一方、同程旅行は、ここ10年はレジャー旅行第1位を戦略目標として業務展開している。2021年第3四半期業績の事業内容説明によると、同程旅行が、7四半期連続黒字を達成している一方で、CtripとQunarは、赤字の状態が続いている。同程旅行では、三線都市やそれ以下の都市での事業展開が引き続き拡大している。中国の都市は、人口や経済レベルなどの観点により、都市を6つの階級に分類されている。三線都市とは、一般的に東部地域の経済発展都市、中部地域の地域中核都市や経済力のある都市、西部地域の省都を指す。新疆ウイグル自治区の首府・烏魯木斉(ウルムチ)などが含まれ、レトロな地方都市のイメージである。なお、WeChat決済プラットフォームでは、約62.7%割合の新規利用ユーザー数が三線都市やそれ以下の都市のユーザーであることを示している。また、国内の宿泊予約サービス事業では夜間予約量が2019年同比で25%を増加し、パス乗車券の売上高も2.5倍と大幅な増加となった。
これら3社の中、Ctripと同程旅行は香港市場に上場しており、2021年第3四半期の決算書が公開されているため、以下比較してみる。
【21年第3四半期決算の比較】
企業名:Ctrip.com
上場有無:米国/香港(USTCOM/HK9961)
売上高:53億元
売上増加率:-2%
純利益:-8.49億元
純利益増加率:-150%
月間アクティブユーザー数:2億人
市場シェア率:40.7%
企業名:Qunar.com
上場有無:未上場
月間アクティブユーザー数:7,500万人
市場シェア率:17.5%
企業名:同程旅行
上場有無:香港(HK9961)
売上高:19.39億元
売上増加率:1.3%
純利益:3.52億元
純利益増加率:5.6%
月間アクティブユーザー数:2.77億人
市場シェア率:12.9%
今後、コロナ禍が収束すれば「リベンジ消費」で旅行・観光への意欲が爆発的に高まることが見込まれる。中長期的にはオンライン旅行予約プラットフォームセクターの業績も力強く回復することが期待される。
図表:グローバル・トラベル・ニュース(2019~2022年中国における春節連休による全国旅行統計)《RS》
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