5億光年の彼方にある銀河で起こった超新星爆発 ESOが写真公開

2022年3月9日 16:56

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2014年(左側)と2021年(右側)に撮影されたカートホイール銀河。右側写真の左下部分に明瞭な白い点が移っている。これが超新星爆発の姿である。(c) ESO

2014年(左側)と2021年(右側)に撮影されたカートホイール銀河。右側写真の左下部分に明瞭な白い点が移っている。これが超新星爆発の姿である。(c) ESO[写真拡大]

 ヨーロッパ南天天文台(ESO)は7日、系外銀河での超新星爆発の模様に関する、珍しい写真で公開した。これは地球からおよそ5億光年離れた、ちょうこくしつ座方向にあるカートホイール銀河(日本では車輪銀河と呼ばれることもある)で起こったもので、2021年12月にESOの新技術望遠鏡(NTT)で撮影された。

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 NTTは、チリのラ・シア天文台に1989年に設置された口径3.6メートルの望遠鏡で、薄い鏡面でも光学精度が保てるよう能動光学が採用されている。

 大型望遠鏡は、薄い鏡面材では自重によるたわみが光学性能に悪影響を及ぼし、100%の能力を発揮できない。だが鏡面材を厚くすれば製造コストが莫大になるため、薄い鏡面材で鏡面を分割してそれぞれの鏡面をアクチュエーターなどの機構により微妙な制御し、100%の光学性能を引き出そうという考えが能動光学である。

 カートホイール銀河は、銀河の中央部により小さな銀河が衝突し、通過した後の姿だ。しかしその影響で、内部でたくさんの新しい恒星が誕生した様子が観察される。

 銀河内部における恒星の密度は非常に小さいため、通常は銀河同士が衝突しても、恒星同士が衝突することはほとんどない。したがってこの銀河での恒星誕生は、恒星同士の衝突によるものではなく、星間ガス同士の衝突によって、高エネルギーが発生したためと考えられている。

 2014年8月と2021年12月に撮影されたカートホイール銀河の写真を比較すると、後者の左下に明瞭な白い点が見られるのに対し、前者では同じ位置にそのような点は見られない。この白い点が超新星爆発である。

 この超新星爆発は、II型超新星に分類される。太陽質量の8~50倍程度の質量をもつ恒星が、急速に崩壊して起こす激しい爆発現象である。この輝きが続くのは数カ月ないしは数年で、宇宙のタイムスケールからすればほぼ一瞬に過ぎない。したがってこの瞬間を捉えることができた人類は、非常に珍しい幸運な時間に恵まれたとしか言いようがないのだ。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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