セルージョン、ニコン子会社と提携 iPS細胞による角膜治療を製品商業化へ

2022年3月8日 11:28

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角膜内皮代替細胞移植のイメージ(画像:セル―ジョンの発表資料より)

角膜内皮代替細胞移植のイメージ(画像:セル―ジョンの発表資料より)[写真拡大]

 再生医療ベンチャーのセルージョンは7日、ニコン・セル・イノベーションとの業務提携を発表した。ニコン・セル・イノベーションは、再生医療用細胞や遺伝子治療用細胞などの受託開発・生産を行うニコンの100%子会社。業務提携では、iPS細胞を用いた眼の角膜治療用再生医療等製品「CLS001」の商業化を目指し、製法開発や受託生産に取組んでいくという。

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 セルージョンによれば、角膜移植の待機患者は、日本で約1万人以上(推計)おり、世界では1,300万人以上(2013年時点)存在するという。一方で、眼球を提供するドナーやアイバンクの不足、角膜移植専門医の少なさなどが原因で、待機患者の解消には至っていない。

 そうした課題を背景にセルージョンは、iPS細胞由来の角膜内皮細胞を用いた治療の開発に取組んでいる。同社は、慶應義塾大学医学部発のベンチャーで2015年に創業。主事業として、角膜移植待機患者の約半数が患っており、治療に角膜移植が必要な「水疱性角膜症」の治療法の開発を進めてきた。

 水疱性角膜症は、角膜の最も内側で角膜内の水分調節機能を持つ角膜内皮細胞が減少。機能不全が起こり、視力障害を起こす病気だ。角膜内に溜まった水分が排出されなくなるため、角膜が浮腫んで厚くなり混濁する。角膜内皮細胞は再生機能がなく、治療せずに放置すると失明に至る。白内障などの外科手術に伴う合併症や、遺伝が原因で発症するという。

 商業化を目指すCLS001は、水疱性角膜症の治療で角膜内皮細胞の代わりに使える細胞。iPS細胞をもとにセルージョンが独自開発した。また同社は治療法として、眼球内にCLS001の細胞を注射して移植する新手法を開発。移植後約3時間はうつ伏せ姿勢の維持が必要となるが、従来の角膜移植の手術に比べ、患者の負担やリスクを抑えられるという。CLS001と同治療法を組合せ、水疱性角膜症の治療用再生医療等製品として展開する方針だ。

 2021年7月には、ヒトでの安全性を評価する医師主導臨床研究の実施計画に対し、厚生労働省厚生科学審議会などが承認。CLS001の製品開発に向け、今後は慶應義塾大学病院での臨床研究を予定しているという。今回の業務提携には臨床試験への協力も含まれている。

 また21年12月には、東京大学エッジキャピタルパートナーズなど7社から総額11億円の第3者割当増資を実施。新規投資家には医薬品卸業者の東邦ホールディングスが参画しており、増資と併せてCLS001の販売・流通体制整備などに向けた資本業務提携を行っている。

 同社は今後、ニコン・セル・イノベーションの製造技術も活用しながら、水疱性角膜症の新しい治療法の提供に向けて、CLS001の商業化を加速していくという。(記事:三部朗・記事一覧を見る

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