ロケット残骸が月面に衝突へ 観測で貴重なデータ得られる可能性 豪紙報道

2022年3月3日 07:22

印刷

ロケットの残骸の衝突が予想されているヘルツシュプルングクレーター周辺 (c)  NASA/Lunar and Planetary Institutes

ロケットの残骸の衝突が予想されているヘルツシュプルングクレーター周辺 (c) NASA/Lunar and Planetary Institutes[写真拡大]

 3月4日、月面に使用済みロケットブースターが時速約9,700kmで衝突する。この月面における事件を、NASAの月面探査衛星で観測しようとする研究が行なわれている。豪州の専門家ニュース評論サイトTHE CONVERSATIONが報じている。

【こちらも】2013年のチェリャビンスク隕石、月誕生時の惑星衝突を示唆か ケンブリッジ大の研究

 月は誕生から約40億年以上にわたって、様々な天体の衝突を受け、無数のクレーターが存在している。だが人類が天体の衝突を予測して、その事象を観測できるチャンスはめったに訪れない。

 今回の衝突では、物体の質量や速度が明らかなため、その値によってどの程度の大きさのクレーターが発生し、その衝突エネルギーがどの程度になるのかを、実測により確認できる。過去に月や地球に天体が衝突したと思われる痕跡は多くあるが、実際に衝突した天体の大きさや質量は、クレーターやその周辺に残された痕跡から推測するしか手立てがなかった。

 もちろん古典物理学の法則に従って、人類の科学がこれらの謎を解明していくことは、たやすいことだ。だが厳密にいえば、人類がこれまで天体衝突に対して下してきた考察は、実測データがない状況での推測に過ぎなかったことは否定ができない事実である。

 その意味で、これから月面で起ころうとしている事件は、人類の科学の歴史上、記念すべきものとなるかもしれない。今回月面に衝突するロケット残骸の質量は約4.5トンで、月の裏側のヘルツシュプルングクレーターに落下すると予測されている。

 実は2009年にNASAが意図的に月面監視衛星を月に落下させ、観測を行なったことがある。だが当時は、衛星落下によってできた火口が粉塵によって覆われてしまい、期待したほどの成果は得られなかった。今回は衝突から約2週間後、NASAのルナーリコネサンスオービターが衝突ゾーンの上を通過するため、詳細な観測データが得られるのではとの期待が高まっている。

 今回のような偶然の産物による実証実験は、計画して実施する実験に比べれば、それにかかるコストは桁違いに安く済む。この神によってもたらされた偶然のチャンスを人類が逃す手はないだろう。(記事:cedar3・記事一覧を見る

関連記事