宇宙飛行環境におけるウイルスの脅威 ドイツ航空宇宙センターの研究

2022年2月23日 11:50

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 地上ではこの2年間、新型コロナウイルス騒動で人類は多くの被害を被ってきた。国際宇宙ステーションなどにおける長期宇宙滞在時のウイルスの脅威は、地上生活者同様に無視できない。それどころか、いったん新型コロナウイルスのようなウイルスが持ち込まれでもすれば、とんでもない事態に陥ることは想像に難くない。

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 このような問題に関するドイツ航空宇宙センターの研究論文レビューが、Astrobiologyで公開された。将来の火星探査ミッションなどにおいて、人間が長期間宇宙滞在する際に想定されうるリスクとその対策を検討すべく、実施されたものである。

 宇宙飛行環境でのウイルス拡散は、搭乗員の健康を蝕み、食料として栽培される作物の収穫量を激減させ、食糧危機を招く。人間の病原性ウイルスだけでなく、植物ウイルスなど多様なウイルスの影響も加味しなければならない。

 これまでも宇宙飛行環境が国際宇宙ステーションの搭乗員の免疫系に及ぼす影響は、調査されてきた。出発前に7日間のウイルス隔離期間を経ているにもかかわらず、過去6カ月間38回に及ぶミッション中、半分の搭乗員に微生物性疾患、口唇ヘルペス、アレルギーが発生していたと言う。

 過去の研究では、宇宙にもたらされた病原性細菌のほとんどが、人間の皮膚に由来していることが明らかとなっている。だが同じことが、ウイルスにも言えるかどうかは定かではなく、これからの研究課題だと言う。ただ閉鎖空間は、ウイルスが繁殖しやすい状況をもたらすのは明らかだ。

 これまで、紫外線や宇宙放射線、重力、閉鎖空間がウイルスや人の免疫状態にもたらす影響については、様々な研究が行なわれている。そこで重力がウイルスの活動をより活性化させる可能性があることや、ウイルス駆除に紫外線照射が威力を発揮することなどが明らかとなっている。

 一方で今回の研究によると、これらの情報は断片的であり、現在実施している飛行前の隔離と地上の免疫システムだけでは、宇宙飛行環境での搭乗員の健康保全には十分でない可能性があるとしている。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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