イプシロンマシンによる地球外生命探査の方法 カリフォルニア工科大の研究

2022年2月18日 11:28

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 これまで宇宙生物学においては、地球外生命探索のために、宇宙において生命の材料となる元素や分子の存在を徹底的に調査してきた。だがこのアプローチは、あくまでも宇宙における生命の存在形態が、地球のそれと類似しているという前提に基づく調査だ。人類が想定しえない形態の生命が存在している場合(例えば金属元素を体の構成要素とした生命体が存在している場合など)には、その調査は全く意味をなさない。

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 カリフォルニア工科大学の研究者らがネイチャーアストロノミーに公開した論文では、従来と全く異なるアプローチで地球外生命の探索を行う方法が示された。この方法によれば、人類の想定を超えた範囲での生命存在の証拠を捉えられる可能性がある。

 その手法は、一般的にはイプシロンマシン再構成(epsilon machine reconstruction;EMR)と呼ばれる。今回の研究で採用した手法を具体的に言えば、3種類の波長(450nm付近、560nm付近、760nm付近)における太陽光の反射光強度の時系列変化を、地球と木星で計測。それらの変化の複雑さを指標化して比較するものだ。

 EMRとは、ある値の時系列変化の複雑さを示す指標を求めるアルゴリズムで、地球と木星の反射光強度の時系列変化の比較によって、これが複雑なほど生命存在の可能性が高いと判断できることが判明したと言う。

 この論文によれば、地球の反射光強度の時系列変化の複雑さは、上記3波長のいずれにおいても木星のそれに比べて約50%高い結果となっている。

 またありのままの地球の状態と、植物相、海洋、砂漠、雲の存在形態を変えた11種類の条件の仮想地球モデルにおける複雑さの違いについても、評価している。最もシンプルな仮想地球モデルと、ありのままの地球とでは複雑さに5倍もの差がつくことも明らかになった。

 この手法を太陽系外惑星に適用する場合、自転周期や公転周期などの要素を配慮する必要があり、あらゆる惑星の生命存在可能性を知るためのツールとしていくにはまだ工夫が必要だ。だが少なくとも、地球型生命体以外の生命存在可能性をキャッチできるツールとして、有望視できることに間違いはない。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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