剥きやすく柔らかいカンキツの品種改良 画像解析と機械学習で可能に 東大

2022年2月13日 08:27

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深層学習による剥皮の難易もしくは果実の硬軟の分類と、分類に寄与した特徴の可視化(画像: 東京大学の発表資料より)

深層学習による剥皮の難易もしくは果実の硬軟の分類と、分類に寄与した特徴の可視化(画像: 東京大学の発表資料より)[写真拡大]

 果樹の効率的な品種改良のためには、剥皮性(皮の剥きやすさ)や果実硬度などのデータを大量かつ高精度に集めることが必要になる。だが例えば、カンキツの育種においては人の感性によってそれらの指標が評価されてきたため、ゲノム解析に必要な定量化は困難であった。

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 東京大学の研究グループはこれまで、カンキツ果実の断面画像解析により形態の特徴を定量化する技術を開発。10日、その技術と機械学習を組み合わせることで、カンキツの剥皮性と果実硬度に関連する特徴を解明したと発表した。

 カンキツの育種において、剥皮性と果実硬度は重要な要素である。だがそれが、カンキツのどの部位の形態による影響が大きいかは明らかとされていなかった。また剥皮性と果実硬度そのものの評価に関しても、育種家の感性による部分が大きく定量化はなされてこなかった。

 そこで今回、農研機構のカンキツ研究拠点で栽培されている108品種のカンキツを評価対象として、断面画像解析を実施。画像解析にはプログラム言語としてPythonが用いられており、果実の様々な部位の特徴が定量的かつ自動的に評価された。そして画像解析データをもとに、機械学習の一手法である深層学習によって各部位の特徴と剥皮性と果実硬度との相関を調査。

 その結果、例えば果芯の崩れが大きい果実は剥きやすく柔らかい傾向があるなどの知見が得られた。他にも、果実の面積と種子の面積は果実硬度とのみ相関があるなど、果実の部位によっても特性への影響は異なる結果になったという。

 今回の研究では、これまでブラックボックスとされてきた、育種家の感性でなく果実の形態的な特徴から品種の特性評価が可能となった。果実のデータを自動かつ大量に収集できるようになったため、ゲノムジュ応報を活用した効率的な品種改良が可能となる。また技術の汎用性の面からも、カンキツ以外の果実の品種改良への応用も期待される。

 今回の研究成果は10日付で「Frontiers in Plant Science」誌のオンライン版に掲載されている。

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