インフレ抑制策を急ぐFRB 加速する円安相場はどこまで進むか

2022年1月8日 07:13

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 年明け早々、米FRBは急速なインフレ景気を懸念して、さらに金融引き締めの政策を急ぐと公表した。これを受けて5日のダウ平均は、392.54ドルの下落(前日比-1.07%)となった。ちなみに、これまで急上昇で相場を駆け上がったナスダックの株価指数は、前日比-3.3%と大幅に下げている。

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 FRBが前倒して量的緩和を終了させること、そして年内に3回の利上げを行う予定があることを踏まえて、昨年末からドル相場は全面高を展開している。ドル円においては12月3日の1ドル112.559円の底値から一直線に116円を突破した。116円を付けるのは、2016年12月以来5年降りである。

 なお、債券市場は年3回の利上げを期待し、長期金利も1.7%を挟む相場展開を見せる。コロナ禍の景気下支え策として買い越してきた国債などの保有資産についても、今後放出していくべきとの意見が強く、目下のところインフレ対策を最優先とするFRBの動向にマーケットが機敏に反応した形である。

 さて、今後のドル円相場の行方だが、ここに興味深いファンダメンタル分析がある。j-cast.comの経済アナリスト・志摩氏のレポートに、『現時点の日本円は円安に振れ過ぎている』とのことだ。志摩氏の理論を要約すれば、2022年の1ドル115円は、平成不況下での115円と円の強さが違うと言うのだ。その理由の1つに、両国のインフレ率の格差がある。

 例えば2000年時の115円を基準として、22年後の115円を見る場合、その間のアメリカ経済と日本経済の状況も踏まえる必要がある。日本は長期デフレでインフレ率はゼロ%以下、一方アメリカは平均して年2%以上のインフレ率。つまり、過去20年間でドルと円の通貨価値に48%(2%の20乗)もの格差が付いていると言うのだ。

 なるほど、20年前の115円を100とするなら、2022年の115円は75円程度に換算できるだろう。相対的に見ると、ドル円の数値は実質とかけ離れて円が弱い現状を指摘している。ならば、その行き過ぎた円安が寄り戻されるような流れになるのか、と言うと実情はそうもいかないらしい。

 同氏によると、日本経済は確実に低迷の一途をたどっているとのことだ。その理由の1つに、以前ほど円安による貿易黒字の拡大が見られなくなったことがある。生産拠点を海外へ移転させた企業が多く、かつてのようには売り上げが国内へ入ってこない。円安が日本経済に好条件をもたらすというセオリーは、近年において既に通用しなくなっているのだ。

 日本経済は、長引くデフレ不況下で大きく勢いを落としてきた。20年前と比べれば国際競争力が大幅に低下しているため、大きく円高へ反発する力はないだろうとの判断だ。

 2022年のドル円相場は、110~120円と予測するアナリストが大半だ。この分析はおおよそ正しいと思われる。ただし、日銀の金融緩和・マイナス金利がこのまま継続するならば、1ドル130円台も頭に入れた方が良いかもしれない。(記事:TO・記事一覧を見る

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