関連記事
トライステージ、中計に基づく各種取り組みを続々と実行し、ダイレクトマーケティングのDXを推進
目次
倉田育尚氏(以下、倉田):それでは本日の内容をご説明します。私どもの会社概要とビジネスモデル、成長戦略と業績の推移、そして株価と株主還元の順でお話しさせていただきます。
会社概要
倉田:会社概要についてです。株式会社トライステージは、2006年3月の創立で、今年で16期になります。創立2年後の2008年に東証マザーズに上場しました。東京を本社所在地として、大阪と福岡に支店があります。連結子会社は国内に4社あります。
事業概要
倉田:事業概要とビジネスモデルについてです。私どもトライステージは、ダイレクトマーケティングを行う、いわゆる通販を実施する企業を総合的に支援しているグループ企業です。取引先の商品やサービスに適した企画を立案し、コンテンツ、つまり表現物を開発します。その次に最適なメディアを選定し、さらに受注システムを構築し、それをマネジメントしていく事業を行っています。
その後、CRM施策を通して、一度ご購入いただいたお客さまの2回目、3回目の購入ニーズや、違う商品の購入を促していくような活動につなげています。これらすべての領域でマーケティング活動を支援し、クライアントの売上が最大化されるようにサポートしています。
事業系統図
倉田:事業系統図についてご説明します。テレビ事業を行うのがトライステージと、グループ会社のトライステージメディアです。Web事業はアドフレックス・コミュニケーションズというグループ会社で展開しています。
スライドの中央左側のDM事業は、ダイレクトメールの事業で、メールカスタマーセンターになります。その下は、小売事業を行う「日本百貨店」です。海外事業は、インドネシアのPT. MERDIS INTERNATIONALがありましたが、10月に売却が完了しました。
当社グループの売上構成
倉田:グループの売上構成についてです。2021年2月期ではグループ全体の売上高は477億円となり、構成比は、テレビ事業の売上が237億円で約50パーセント、DM事業の売上が182億円で約38パーセントと、この2つが大部分を占めています。
現在進めている2022年2月期では、Web事業が売上を大きく伸ばす計画です。テレビとDM、そしてWebの3事業が通販事業を支援する主力の事業となります。
トライステージグループの強み
倉田:当社グループの強みについてご説明します。私どもは、通信販売を支援する第一人者として、先行者メリットがあると考えています。創業時から蓄積しているメディアのデータやノウハウを活用し、さらにデジタル技術をかけ合わせ新しいサービスやシステムを提供していくことで、競争力を維持し、拡大していきたいと考えています。
テレビ事業のビジネスモデル
倉田:主力事業について、また各ビジネスモデルについてご説明します。テレビ事業は先ほどお伝えしたとおり、トライステージとトライステージメディアで運営しています。トライステージメディアは我々の活動に必要なメディアを仕入れる機能を持つ会社です。
テレビ事業は通販事業を行うクライアントにいろいろなソリューションを提供しているのですが、まずクライアントにテレビの最適な放送枠を選定し、加えて放送する番組の映像を制作します。事業で重要な受注体制を構築し、受注管理から顧客管理まで一貫してマネジメントを行っています。クライアント数は100社から150社といったところです。
テレビ通販の購入フロー
倉田:こちらのスライドでは、テレビで通販番組を視聴したお客さまが購入するまでのフローをご説明しています。主にフリーダイヤルでの電話注文をすることになりますが、当社ではテレビの放送素材にQRコードを入れています。
最近はこのQRコード経由で、オンラインでの注文も増加しています。当社ではオンラインとオフライン、どちらにも対応した受注体制を取り始めています。
テレビ事業の強み
倉田:テレビ事業の3つの強みについてご紹介します。1つ目が「データに基づく最適なメディア提供」です。当社が保有している放送枠は月間で2万枠ほどあります。
この放送枠の一つひとつに、過去からのデータがずっと蓄積されており、どの放送枠でどのような商品がどれくらい売れたかといったデータが付いています。これによってクライアントにとって効率のよい放送枠を、いつもご提供できる体制になっています。
強みの2つ目は「ロジックに基づく売れる映像制作」です。いろいろな業種の商品で制作しており、年間1,000本くらいの実績があります。その映像は放送局が考査しチェックしていくわけですが、どのような表現がNGなのか、どのようなエビデンスが必要なのかといった考査対応のノウハウもあります。
制作した映像を我々独自で解析し、制作物を常によりよくしていくためのPDCAも回すようにしています。
3つ目は「テレビ通販のための受注体制」です。全国で提携しているコンタクトセンターと、各クライアントのテレビの放送について「このような放送枠で来月から行います」という予定を事前に共有します。
過去の実績から放送枠呼量を予測し、どれくらいの電話が鳴るのかといったことを事前に準備して、それぞれのセンターで最適な体制を構築しています。
これらのサービスを支えるデータマーケティングの基盤が「Tri-DDM」というシステムです。「DDM」はダイレクトデータマーケティングの略で、2年前から開発を始めています。こちらについては、後ほど詳しくご説明したいと思います。
質疑応答:テレビの通販枠確保体制について
坂本慎太郎氏(以下、坂本):ダイレクトマーケティングなど一貫して支援されているというお話について「テレビの通販枠を2万枠確保」と記載されていたのですが、これは御社が買い切っているわけではなくて、「ここにCMを出したいよ」とか「ここで通販を行いたいよ」という方がいたら提供できるというイメージで合っていますか?
倉田:放送局には4月と10月に番組の改編期があります。その4月の改編期と10月の改編期に半年分の必要な放送枠を契約し、買い切るというかたちです。
坂本:確保してそのまま買い切ってしまうということですね。
倉田:はい。そのため、6ヶ月間は我々が責任をもって販売していくというかたちを取っています。
坂本:売りにくいこともあると思うのですが、仮に売れなかったりした場合は外に再販したりとか、後はテレビ局に返したりなどという、そのあたりの体制はどうなっているのでしょうか? 確実に今の分をきっちり売り切るというイメージなのでしょうか?
倉田:昔はけっこう売り切れなくて、その場合は値引きして販売ということになり、粗利率が安定しませんでした。今は担当している営業がクライアントの先の計画のヒアリングをしっかり行い、必要な枠量を4月や10月の改編前に固め、それでメディア部門を買ってきますので、毎月少し買い足すという感じです。
坂本:逆に足りないなら買い足しするということなのですね。
倉田:はい。そのような方法で今は行っています。
坂本:ありがとうございます。よくわかりました。
Tri-DDMとは?
倉田:それでは「Tri-DDM」について少しお話しします。クライアントの顧客のデータや商品のデータ、それから当社が保有する放送枠のデータのほか、コンタクトセンターの電話の本数や内容、受注率といったデータなど、これらのデータをすべてこのプラットフォームに入れています。
あとは、外部にある電話のトラフィックデータやエリア情報などを全部統合して分析し、可視化してクライアントと共有し、そのデータをベースにPDCAを一緒に回していくということを進めています。
この「Tri-DDM」での分析と施策という体制が、当社の競争優位性を支える特徴の1つとなっています。今後はAIなどを活用して、商品やサービスごとに最適な放送枠を自動で選定するシステムを開発中です。
テレビ事業の強み・今後の方向性
倉田:「Tri-DDM」をどんどん強化してサービスを提供していきたいと思っています。今はまだマーケティングに必要なソリューションを提供しているというイメージですが、今後「Tri-DDM」を強化することで、マーケティングの活動全体をシステム化し、高速でPDCAを回していきます。それによりマーケティング効果の向上やコストダウンといった両面からお得意先を支援するかたちで、市場での当社のシェアアップ、それから利益の安定を図っていきたいと考えています。
質疑応答:テレビ事業のビジネスモデルにおけるキャッシュポイントについて
坂本:今のお話にあった、「Tri-DDM」を活用して精緻にマーケティングを行い、コストダウンと広告効果を発揮する、という部分について質問です。テレビ事業のキャッシュポイントは、11ページに記載のあったサービス代金で、原価足すマージンというかたちだと思うのですが、この一貫しているビジネスモデルの中で、どの部分の利益が一番大きいのでしょうか?
メディアの選定から番組作成、受注管理までトータルで請け負うというのも基本なのかもしれませんが、各工程の中で単品で、メディア選定だけ、あるいは受注管理だけというかたちで請け負うことはあるのでしょうか? ビジネスのイメージがありませんので、そのあたりも教えていただけたらと思います。
倉田:キャッシュポイントとして一番大きいのは、メディア取引のマージンです。今は年間150社くらいのお取引とお伝えしましたが、そのうちの3割くらいはフルサポートというかたちで請け負います。
残りのクライアントに関しては、例えばメディアを提供するだけ、あるいはメディアとクリエイティブだけといったさまざまなかたちで請け負います。「コールセンターは私どもにありますよ」というお客さまもいらっしゃいますし、クライアントの状況はさまざまです。できるだけ「Tri-DDM」の利益も出したいので、フルで請け負わせていただきたいというのが現状です。
坂本:結局は単品でも請け負う体制はとられているということなのですね。
質疑応答:テレビ通販の商材について
坂本:もう1問お願いします。テレビ事業のクライアントはダイレクトマーケティングの実施企業ということなのですが、これは商材がいろいろあると思います。
ずっとテレビ通販を見ていると、長期で売れる商材があればマーケティングも楽だし、利益もずっと上がり続けるのではないかと思えてくるのですが、御社は商品開発のサポートは行わず、あくまでもテレビに載せる商品について、通販事業で一貫したサービスを行う部分が主力なのでしょうか? また、最近売れている商材があれば教えていただけたらと思います。
倉田:開発から入るというのはなかなかないです。やはりお客さまが開発された商品をお手伝いするのですが、ただ価格の相談や、どういうオファーで最初は売ったらよいのかという、商品の掲示方法の相談などは受けます。商品が出来上がった後のテレビ通販上での見せ方という面では、いろいろアドバイスをしています。
売れ筋はいろいろありますが、おっしゃるようにリピート商材というのが一番ダイレクトには向いていると思います。特にコロナ禍ではステイホームの状況もありましたので、ダイエット系の器具や医薬品のような商品が売れました。
坂本:確かに繰り返し買われそうな商品のテレビ通販が目に入りますが、一方で、高枝切鋏のように1回だけ買うようなタイプの商品も「ずっとテレビ通販に出ているな」と思ったりもします。「1回しか買わないけれどやはり売れるから販売しているんだろうな」などと思っていました。
倉田:1回購入された方は当然2本目を購入するというわけにはいかないのですが、まだまだ潜在需要があるということで出稿されていると聞いています。
坂本:そのあたりを見ながら御社もアドバイスしたりなど、いろいろなかたちでサービスを提供するというイメージでしょうか?
倉田:そうですね、エリアを変えてサービス提供するなどしています。
坂本:そこに価値が出てくるわけですね。
WEB事業のビジネスモデル
倉田:Web事業についてご説明します。Web事業はアドフレックス・コミュニケーションズというグループ会社の事業になります。トライステージと同様、ダイレクトマーケティングの支援というポジションです。アドフレックス社の場合は、クライアントは通販企業だけではなくて金融業やアパレル業など多岐にわたっています。
アドフレックス社は、独自のAIサービスでクライアントのインターネットへの投資効率を最大化していくという事業を行っています。トライステージと連携し、テレビとWebのクロスメディア展開といったサービスも、徐々にクライアントに提供し始めています。
主力のAIツール Optmyzr(オプティマイザー)
倉田:アドフレックス社の主力サービスが、AIを使ったリスティング広告の最適化です。アドフレックス社では、世界で成功しているAIツールを次々にテストし、その中から厳選したツールを提供していく戦略を取っています。今年の8月に「Optmyzr(オプティマイザー)」という、リスティング広告を自動で最適化するというシステムをリリースし、ローンチしました。
この「Optmyzr」はGoogleの創業メンバーの1人が開発したと言われているAIツールなのですが、グローバルでは大変多くの企業が使用しているものです。交渉などで非常に早い意思決定ができるということで、日本での独占契約として今回締結することが出来ました。
アドフレックス社は、「Optmyzr」で新規顧客の開拓に当たっています。それから「YouTube」との検索連動の相性が非常によいことがわかってきましたので、「YouTube」施策の導入をこれから進めていきたいと思っています。
WEB事業の強み
倉田:アドフレックス社には「Optmyzr」以外にも、いくつか世界で実績があるAIツールがあります。各領域に精通したコンサルタントが営業しており、クライアントの事業計画から施策の実施まで一気通貫でサポートしていくかたちが、Web事業の強みとなっています。
質疑応答:競合他社比で見たWeb事業での強みについて
坂本:こちらご質問をさせていただきたいのですが、Web事業には同業他社が複数あると思いますが、他社と比較して御社の強みや特徴などがあれば教えていただけますでしょうか?
倉田:アドフレックス社の場合は、広告主側に非常に寄ったポジションをとっています。GoogleやFacebookなどの媒体社側は、当然ワンクリックで収入が発生するモデルになっています。
一方で、アドフレックス社は広告主側に立っていかに無駄なクリックをなくし、低単価でクリックしてもらうかという目線でAIを使い、お得意先の投資効率を上げていきますので、立ち位置が違うと思います。
質疑応答:「Optmyzr」の運用方法について
坂本:もう1問お願いします。Googleのアルゴリズムの変更や、Cookie問題などで、今回の四半期の決算は海外を中心に業績を落としている企業が見受けられます。「Optmyzr」はどういった属性をもとにリスティング広告を行っているのかについて、教えていただけたらと思います。
倉田:「Optmyzr」はCookieに依存しないかたちでの運用になっています。属性や変数については、性別や年齢などのいわゆるGoogle属性に加えて、時間帯、それから広告の構成要素、キーワードといったものを広告主側のアルゴリズムでチェックしていく方法をとっています。
坂本:そうするとCookie問題はあまり関係ない、あるいは影響を受けにくいということでしょうか?
倉田:影響はほとんどないと聞いています。
質疑応答:コンサルティングにおける顧客の課題解決方法について
坂本:後はコンサルティングについての質問です。AIソリューションの価値を引き出す、専門性が高いコンサルティングをされているというお話ですが、どのようなコンサルティングを行って顧客の課題を解決しているのでしょうか? 1例があれば視聴者の方もイメージが湧きやすいと思いますので、教えてください。
倉田:いろいろな課題が出てくるわけですが、仮に、あるアパレルの方のお客さまの一例をお話しします。ホームページに課題があったというケースです。
ホームページに来られたユーザーの嗜好性や興味などを、ホームページの回遊しているページから見抜いて、リアルタイムでホームページを一人ひとりに合ったかたちに変更して送っていくというサービスを導入しています。
こちらは、人が通常行う「接客をどうするか」という全体の設計について、役割をAIにシフトし、さらに高速で分析させるといったイメージです。
DM事業のビジネスモデル
倉田:DM事業についてですが、これはメールカスタマーセンターになります。メールカスタマーセンターはDMの発送代行を行っています。この事業で取り扱いの年間通数が3億通以上という、トップクラスの会社になります。DMは企業が個別に送るよりも、いわゆる発送代行社を使っているほうが大口の割引が適用されて、通常よりも安くDMを発送することができるという仕組みになっています。
メールカスタマーセンターでは約800社のクライアントに日本郵政やヤマト運輸の大口割引を適用していただき、競争力のあるサービスを提供しています。トライステージのクライアントについても、先ほどお伝えしたCRM施策を取ってDMを出す作業の時に、このモデルを活用しています。
DM事業の強み
倉田:メールカスタマーセンターの取り扱う商品は、1つはDMで、もう1つは商品DMになります。DMは大口取引のスケールメリットを活かして、これからも拡大していきたいと思っているのですが、今後の戦略商品としては商品DMになると思います。
商品DMは、ポストにそのまま投函する箱型の発送物なので、留守宅でもそのままポストに入れられるものです。通販の事業者がサンプルの商品などを送る際に一番最適な仕組みとなっています。こちらについては今、倉庫での作業や管理の工程を整理し、ワンストップで発送まで持っていくサービス体制を強化しています。
質疑応答:DM事業の外注について
飯村美樹氏(以下、飯村):このDM事業について質問なのですが、DMの発送代行の取り扱い件数が、年間およそ3億通というすごい実績です。これだけの大口取引によるスケールメリットが強みということですが、これほどのボリューム感でしたら印刷も自社で、という方向にはならないのでしょうか? 外注のほうが安いのでしょうか?
倉田:数社の印刷会社と提携はしているのですが、DMの種類ごとに、例えば特殊な印刷について、それぞれ印刷会社も得意技を持っている状況ですので、各社に適したところで外注していくほうが効率的だと判断しています。
飯村:「箔押しにしてほしい」など、いろいろきっと、それぞれご希望がありますよね。
倉田:めくって開けるタイプのものなど、さまざまにあります。
飯村:紙の特性といった点を失念していました。納得しました。
グループビジョン
倉田:成長戦略についてご説明します。私どもは今年4月に3ヶ年の中期経営計画を発表し、「ダイレクトマーケティングに、DX・イノベーションを。」というグループビジョンを定めました。
いわゆるDX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉は最近よく耳にしますが、当社のグループではデータとデジタルの技術を活用し、製品やサービス、それからビジネスモデルを変えていこうという方針で使っています。
このDXによって新たな付加価値を生み出し、クライアントに提供するサービスをしっかり強化することで、パートナー企業との関係を長く続けられることを目指しています。
事業戦略概要
倉田:中計の事業戦略概要についてです。まず当社グループを取り巻く環境です。1つは、ダイレクトマーケティングの市場は年々拡大しています。その市場成長はEC、いわゆるインターネット上の取引が牽引している状況です。
2つ目は、テレビなどのオフラインメディアに加えて、インターネットを利用したクロスチャネルでのマーケティングが行われる重要性が、非常に出てきていることが挙げられます。
一方で、オフラインメディアのデータはあまり活用されていないという現状もあります。当社グループでは、我々が持っているデータや、外部にあるデータをDX・イノベーションによってしっかり活用していきたいと思っています。
まず、オフラインメディアのデータを活用したマーケティングをしていきます。そしてAIを活用してデジタルマーケティングのサービス強化をします。さらに、私どものグループが持っているオンライン、オフラインのメディアやDM等のインフラを強化する戦略をしっかりと推進していきます。
事業戦略概要:基本戦略
倉田:3つの基本戦略を策定しています。基本戦略の1つ目は、データマーケティング強化による顧客への提供価値を上げていくことです。2つ目はクロスチャネル・AIマーケティングサービスによって顧客を拡大していくこと、そして3つ目は新規事業、いわゆる事業の強みとDXによって新規事業を立ち上げていくことを策定しています。
基本戦略① データマーケティング強化①
倉田:すでに実行している具体的な施策についてご紹介します。
1つ目のデータマーケティング強化の戦略については、「Tri-DDM」をどんどんアップデートしています。現在35社から40社くらいのクライアントが利用いただいており、すべての業務に関わるインフラとして活用できるデータ基盤になります。
これまでは営業担当がエクセルで集計して提供するやり方でした。これを全部自動処理して、我々とお客さまが非常に速いスピードで情報を共有して見ることができます。情報が瞬時に出て、目標達成度合いを日々チェックできるため、お客さまの先の施策が非常に早く打てるようになっています。また、リアルタイムに事業の状況が見えるため、我々からも的確な提案ができます。
リニューアルに関しては、クライアントの「使い勝手がよい」「このような情報がほしい」といった意見を聞きながら、常にアップデートしています。メニュー構成や画面の仕様変更など、利便性を向上させています。
基本戦略① データマーケティング強化②
倉田:もう1つは「Tri-DDM」の中で追加機能になっているAIによる受注予測です。これはまだテスト中ですが、間もなくリリースできるため、先にご紹介します。
これまでは営業が過去の放送データなどを見て、手作業で受注予測を算出していました。そのような「この放送枠で流れた場合はどのくらいの受注があるか」「電話が鳴るところから結果としてどのくらい受注につながるか」をAIで予測して、コールセンターと共有します。
放送に対してどのくらいの人数のオペレーターが必要かが事前にわかり、コールセンターは人員配置にブレを生じさせことなく対応することができます。これが軌道に乗ると、放送枠の価値がさらにはっきりしてくるため、当社の業務効率も改善されると考えています。
飯村:ぼんやり「何時くらいがよい」とされていたものが、さらにもっと細かくということですね。
倉田:そのとおりです。2万枠の中からどういうチョイスが一番よいかといったことまで、情報が出てくるように開発しています。
基本戦略② クロスチャネルサービス①
倉田:テレビとインターネットの広告を連動させたクロスチャネルのサービスについてご説明します。これは、今年4月にリリースした運用型テレビCMです。売ることを追求するということで「ウルテレ」というサービス名です。
通常、テレビ番組の制作はとくに初動で費用が掛かりますが、制作会社の協力を得て、パターン化することで少し安く費用を設定できるようにします。番組の制作から放送、検証までをパッケージ化して、テレビというメディアのハードルを下げて使いやすくしていくことが、「ウルテレ」の狙いです。
これまでテレビメディアを活用していなかったお客さまに対してアプローチしていきます。こちらはまだ始まったばかりですが、現在4社の放送を実施しています。
基本戦略② クロスチャネルサービス②
倉田:クロスチャネルサービスという、QRのトラッキングサービスについてご説明します。テレビの素材の中に記載したQRコードから入ると、お客さまが一番見せたいサイトにアクセスできます。通販企業のWebアクセス数解析ツールと「Tri-DDM」を連携させて、インターネットでの注文がどの放送のQRコードから入ってきたかがわかります。
「Tri-DDM」の画面上で、QRコードを通じて放送媒体の効果がチェックできるということになります。
飯村:やはり、みなさまスマホを触りながらテレビをご覧になっていますよね。
坂本:おっしゃるとおりです。よく「ダブルスクリーン」と言われています。
飯村:電話よりも心理的距離が近いイメージがありますが、そのあたりはいかがですか?
倉田:当社が創立した頃は、注文は固定電話が主流でしたが、今はシニアの方でもほとんどがスマートフォンです。番組を見ながらスマートフォンで検索されることも多いと思います。
現在、このQRコードを10社くらいのお客さまが試しており、実際、放送量と比較すると、全体の売上のボリュームを下げることなく3パーセントから9パーセントくらい売上が上がるという結果も出ています。電話が落ちてQRコードが増えるということではなくて、全体が上がっており、少し底上げのかたちで実績が出ています。
坂本:QRコードにしていないと、ワードで検索するとおそらく他の商品を買ってしまいます。そのためにQRコードが付いているということですね。
倉田:おっしゃるとおりです。一番見せたいサイトに飛んでいくことができます。
基本戦略② クロスチャネルサービス③
倉田:10月にリリースしたばかりの「ODASO」というサービスについてです。これは「開発者が名前を付けていいよ」というルールになっているため「ODASO」という名前になっています。
坂本:オダさんが作られたということでしょうか?
倉田:はい、自分の名前を付けています。これは、すでにテレビCMを実施しているお客さま向けのサービスで、テレビCMの放送をリアルタイムで感知して、Web広告の入札をその時点で強化していくことで、先ほどの各社の入札が上がってくる中でも、一番手に入札していこうというサービスです。
坂本:なるほど、おもしろいですね。
倉田:こちらはCMの放送時刻の特定と、連携のリアルタイム性に特徴があります。
坂本:もちろん、出てくるものは同じ商品ですか? それとも、この商品プラスアルファがそのWebサイトに載っているのでしょうか?
倉田:ほとんどは同じ商品です。
坂本:そこにLPなど介入できればおもしろいと思います。
倉田:15秒、30秒くらいでは難しいですので、Webサイトでも伝えたいものをしっかりと伝えていこうという方針です。
坂本:Webサイトにより詳しい説明があり、同じものを売っているということでしょうか?
倉田:おっしゃるとおりです。
基本戦略③ 売れる映像のDX化
倉田:映像の共感度分析というサービスについてご紹介します。これは、売れる映像をDX化しようということで、使用者の共感度をデータ化して分析しているサービスです。
映像が放送された時に、コールセンターにかかってきた呼量というものがあります。例えば30分番組だと、始まったタイミングから30分間、番組が終わるまで毎分どれくらいの電話が鳴っているかという波形が出ます。
こちらにモニターアンケート調査を掛け合わせて、どの映像がどの部分で共感して購入の欲求が高まったとか、逆にどこがネガティブだったかといったことを分析して、編集していきます。よくないところは外して、改善していくことを行っています。
去年12月くらいから始めており、これまで76映像をお客さまからいただいて分析しました。この調査結果も、お客さまには「Tri-DDM」を通じてお返しすることにしています。
飯村:その76映像を精査した時に、ある程度の傾向はありましたか?
倉田:やはり共感度ポイントが高いところはありました。もちろん、素材ごとに出てくる結果は違いますが、特にネガティブなところがわかる点が成果として非常に大きいです。編集で取り除いて違うものを出すように改善すると、全体の効果が高まっていくことになります。
新サービスリリース状況まとめ
倉田:新サービスのリリース状況のまとめ一覧です。基本戦略3の「新規事業⽴ち上げ」の中で、会員制の放送枠の購入サービス「ソクレス」というものがあります。
加えて、「テレビ通販コンタクトセンター診断サービス」は、我々の直接のお客さまではなくても、現存するコンタクトセンターやコールセンターに「もう少し改善の余地がある」「こんなふうにしたらよい」という診断を出すサービスです。
このような新しい施策やサービスをスタートさせ、使いながらブラッシュアップしていくことで、競争力を高めるべく取り組んでいきたいと思っています。
直近3か年の売上⾼推移+当期⾒通し
倉田:直近3年間の売上高と業績の見通しをご説明します。前期2021年2月期はテレビ事業で不採算取引、いわゆる放送枠を余らせたりすることがないかたちで進めることができました。さらにDM事業、小売事業で新型コロナウイルスの影響を受けたとことで、売上高は減少しています。当期は、Web事業の伸びにより増収の計画を立てています。
直近3か年の営業利益推移+当期⾒通し
倉田:営業利益のグラフをお示ししています。直近3年間で成長事業への先行投資と、不採算事業からの撤退を行ってきました。
収益性が安定し、成長に向けた基盤が整ったというタイミングになります。前期はコロナ禍においてテレビ事業への好影響があり、これは放送枠としては割と仕入れやすかったと見ています。
さらに、貸倒引当金の戻入があったため一時的なプラス要因が大きく伸びていますが、当期は成長に向けた取り組みを実施し、前期と同水準の営業利益を確保したいと考えています。
坂本:海外事業についてはJML株の譲渡というかたちになっていますが、理由と言いますか、海外事業の難しかった点を教えてください。
倉田:やはり成長するASEANをにらんで展開していたのですが、日本で我々が行っているビジネスモデルの横展開が非常に難しかったと考えます。
現地の放送局やインフラの違いといった、日本のモデルをそのまま展開する環境として難しかったという点が一番大きかったと思います。
2022年2⽉期 上期 連結業績サマリー
倉田:連結の業績サマリーについてご説明します。上期は、営業利益ベースで通期業績見通しに対する進捗率が54パーセントと順調に進んでいます。法人税等の特殊要因があり、親会社株主に帰属する当期純利益が少し高く出ています。
これは、9月14日に公表した海外のMERDIS社の売却決議により、上期決算では単体で計上していた評価損に対する繰延税金資産について売却の意思決定に伴い、2億7,200万円を計上しています。
一方で、売却は10月に完了しており、1月に予定している第3四半期では、まだ金額は固まっていませんが、特損が発生するというかたちになります。結果として通期の連結業績に関しては、影響がほとんどないと読んでいます。
中期経営計画における経営指標等
倉田:中期経営計画についてご説明します。中計では、連結の営業利益と当期の純利益を経営指標としています。成長戦略と赤字事業の黒字化を実現することで、最終年度の2024年2月期は、連結営業利益を20億円、当期純利益は昨年実績で8億4,800万円のところを、2024年2月期には13億円を目指しています。
配当などの株主還元については、業績や財務状況等を勘案して、引き続き柔軟に対応していきたいと思っています。
⽬標とする経営指標等(参考-セグメント)
倉田:スライドにお示ししている図は、セグメントごとの3年間の動きを位置付けたものです。左側のバブルチャートは縦軸が売上、横軸が営業利益率、バブルの大きさが営業利益額を示しています。
赤色で示したものがTV事業です。白抜きの部分が前年度、色を塗っているところが中計の最終年度を表しています。TV事業は、先ほどご説明した中計を進めることで売上を上げていきます。
水色でお示ししたWeb事業は、AIマーケティングサービスの拡大やクロスチャネルで売上、利益ともに大きく伸ばしていきたいという計画になっています。DM事業についても商品DM等の取り扱いの拡大で売上、利益ともに伸ばしていきます。
小売についてはこれまで同様、収益性やグループシナジーなどを考えながら、見極めの対象になると考えています。海外については、先ほどお話ししたように売却を完了しています。
中計の経営の指標である連結営業利益20億円の達成に向けて、注力事業のテレビ、Web、DMにリソースを集中させます。また成長戦略を推し進めると同時に、赤字の事業は、解消に向けて進めていきたいと考えています。
株価推移
倉田:株価と株主還元についてお話しします。株価は11月12日時点で385円です。時価総額は117億円になっています。単位は100株単位ですので、購入代金は3万8,500円になります。PERが11.49倍、PBRが1.34倍です。
株主還元
倉田:株主還元については、配当金と株主優待があります。当社の配当方針は経営の成績や財務状況を勘案して、適切な利益還元策を検討して実施していくこととしています。
2022年2月期の配当は前期と同額の1株当たり7円を計画しています。株主優待については、400株以上を保有の株主さまに、年2回クオカードを進呈しています。優待の次の基準日は8月末と2月末になります。
今年スタートした中計を順調に進捗させているため、3年後の目標達成に向けてグループでしっかりと連携して成長したいと思っています。今後とも、みなさまのご支援をよろしくお願いします。ご説明は以上です。
質疑応答:TVの営業利益率、販売チャネルDX化の取り組みについて
坂本:中計についておうかがいします。スライドの39ページで、2024年2月期に20億円の営業利益を掲げています。主力のTV事業で営業利益率が左側に若干寄っているため落ちているように見えますが、競争環境が厳しいのでしょうか?
また、TV事業とDM事業に「販売チャネルのDX化」が記載されていますが、この具体的な取り組みを教えてください。
倉田:TV事業の営業利益率についてはほとんど変わらないのですが、先ほどご説明したように、基準にしている白抜きの2021年2月期では、コロナ禍で放送枠が安く仕入れられました。
坂本:あとから見ると需要もあったということですね。
倉田:営業利益が少し高く出ているため、このような記載になっていますが、営業利益率に関しては同水準で伸ばしていく計画です。
販売チャネルについては、先ほどご説明した「ソクレス」という会員制サービスで、毎日新しい放送枠の情報をメールで送っています。最終的にはオンライン上で販売、購入できるかたちに進化させていきたいと思います。DMの販売チャネルについては、オンライン上で小ロットから見積もりを取れるかたちのシステム開発を考えています。
坂本:確かに、TV事業については、本当に進化すれば、ある程度素材が揃っていれば「今日この枠が空いているからいきたいです」と言うと、可能な感じがあリますが、そこまでは早くないでしょうか?
倉田:デジタルというか、Webと違ってどうしても購入から放送までのタイムラグがあります。そこを縮めるのは、放送局の考査の問題もあります。しかし最終的にはWebのように、デジタル上での取引がもっと進んでいくのではないかと考えています。
坂本:そうなると、マーケティングがかなり多様化するのでおもしろいですね。
倉田:おっしゃるとおりだと思います。
質疑応答:中計の中にM&Aが含まれているか
坂本:M&Aは中計の中に含まれた計画でしょうか? なかなかお話ししにくいところもあると思いますが、中計の中でM&Aが入っていれば「このへんを狙っています」というイメージを教えてください。
倉田:計画の中にはM&Aは入っていません。ただ、本当に成長のために必要なものということであれば、考えていくことはあると思います。
質疑応答:自社株買いについて
坂本:スライド42ページの株主還元についておうかがいします。安定して配当していく方針だと思いますが、2020年4月頃に自社株買いされています。これは、業績のトリガーがあって実施しているのか、それとも株価の数字を見ておられるのか、どのようなイメージか教えてください。
倉田:2019年と2020年に自社株買いしており、これはいずれも株主からの売却意向を受けて立会外買い付けとセットで行っています。
利益の還元策については、配当や優待、自己株取得といった選択肢としてはその施策を持っています。その時の株価や業績、タイミングなどを勘案して検討していきたいと思っています。
質疑応答:配当性向を切り替える場合の目安について
坂本:配当の部分について、安定して進めるという話はうかがったのですが、今後もし切り替えていくなら、配当性向はどれくらいが目安か教えてください。
倉田:配当性向については社内でも議論していることはなかなかないと思うのですが。
坂本:安定して配当していくというのが一番の考え方ということですね。
倉田:はい、そのとおりです。
質疑応答:配当の長期優待について
坂本:「配当の長期優待を付けてください」というご意見があります。
倉田:長期優待についてはよくご意見をいただくのですが、流動性や優待の継続性といったことの兼ね合いで、今は見送らせていただいている状況です。
倉田氏よりご挨拶
飯村:ご覧のみなさまに何か伝えたいことなどがあればお願いします。
倉田:繰り返しになりますが、「Tri-DDM」を基盤に、DX化を進め、サービスや商品をしっかりと強化させていき、グループ全体の機能を上げていきたいと思っています。今後ともご支援のほどよろしくお願い申し上げます。
スポンサードリンク