エウロパの水蒸気噴出を捉えるミッション NASAジェット推進研究所

2021年12月2日 07:40

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ボイジャー1号、ボイジャー2号、ガリレオが捉えた木星の衛星エウロパの画像 (c) NASA / JPL-Caltech

ボイジャー1号、ボイジャー2号、ガリレオが捉えた木星の衛星エウロパの画像 (c) NASA / JPL-Caltech[写真拡大]

 2024年にNASAはエウロパ・クリッパーの打ち上げを計画している。これは木星の衛星エウロパの探査を目的としたミッションだ。木星を周回しながら、エウロパの表面を50mの解像度で撮影するエウロパイメージングシステム(EIS)カメラなどを用いて、様々な観測を実施し地球外環境で生命がはぐくまれる可能性を探る。

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 NASAジェット推進研究所は11月30日、このミッションの概要について発表した。エウロパは地質学的には動的であり、地球のように地殻が活動しており、地熱が発生している。太陽光による熱量が十分にない状態でも、地熱により水が凍らず、炭素や水素、酸素、窒素、リン、硫黄など、生命の構成要素を海底で生成または循環させられる可能性があるという。

 エウロパが地熱を持つと考えられている根拠は、この衛星が非常に強い重力源である木星を、平均公転半径約67万kmという比較的近い距離で、しかも楕円軌道で周回しているためだ。強い重力源を周回する衛星では潮汐効果が出現する。潮汐効果とは、重力源との距離の差によって衛星の公転内周側と公転外周側で作用する重力に差が生じ、その重力差によって衛星が引き伸ばされる現象である。衛星が楕円軌道を描く場合、木星との距離の周期的変化で、潮汐効果も周期的に生じ、これが地熱を生み出すのだ。

 エウロパにより期待を持たせるのは、2005年に土星の衛星エンケラドゥスにおいて、NASAとESAによる無人土星探査機カッシーニが、水蒸気噴出を捉えたことによる。エンケラドゥスは、直径が500km程度しかなく(エウロパの直径は約3,200km)、しかも太陽からの距離はエウロパに比べれば非常に遠い。つまり大気の存在がほとんど期待できない環境で、水蒸気噴出を捉えることに成功しているからだ。

 科学者たちはエウロパに凍らない状態で水が存在していることは確実視しているが、水蒸気噴出を直接捉えるのは、不可能かもしれないとも考えている。なぜならば、エウロパでは60kmから150kmの深海において凍らない水が存在すると推定しているからだ。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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