岸田首相の「四半期決算:見直し論」への、一考察

2021年11月10日 08:14

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 岸田文雄首相は、10月8日の所信表明演説の中で上場企業の四半期決算開示に関し「見直し」を表明した。8日付の朝日新聞には発言が、こう記載されている。「企業が長期的視点に立って、株主だけでなく、従業員や取引先も恩恵を受けられる『三方良し』の経営を行うことが重要。非財務情報開示の充実、四半期開示の見直しなど、そのための環境整備を進める」。

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 首相就任時の所信表明で出た発言である以上、金融庁の金融審議会を中心に今後議論が進められていくことになろう。

 こうした報道に接し、脈路なしにフッ・フッといくつかのことが頭に浮かんだ。

★四半期決算開示は1999年、東証の自主ルールとして登場した。順次、義務化の方向に進んで行った。金融商品取引法で義務化されたのは2008年。法的義務化の引き金は、06年のライブドアの粉飾決算事件だった。「四半期業績の虚偽記載について法的責任が問えない」という壁が、大きな契機だった。

★「株主・従業員・取引先の三方良し」では、故潮田健次郎氏の言葉を思い出した。1対10の無償増資(今の1対2株式分割)を、潮田氏率いるトステム(現在の住宅設備大手LIXILの母体)が実施した時だった。「貢献してくれた従業員には給与・賞与で報いる。取引先には商品の高品質で応じる。(今回の大幅無償増資は)株主・投資家に“投資のしやすさ”を提供するためだ」と聞かされ、妙に感心したことを今でも記憶している。

★東証はどう受け止めたのだろうか。周知の通り東証は今、市場の構造改革を進めている。「東証1部・2部・ジャスダック・マザーズ」の4市場を、「プライム・スタンダード・グロース(いずれも仮名)」に再編しようという流れだ。その狙いは何か。偏った見方かもしれないが、「海外投資家の一層の参加を促すための市場体制の構築」であろう。

 そんな最中の「四半期決算見直し」は、「情報公開(IR)の後退」という批判を招きかねない。「でも欧州では・・・」という声が返ってこよう。確かに2010年代前半に、EU・英国・仏国が廃止の動きを見せた。だが実態は大方の上場企業が「自主開示」を行っている。

★上場企業は四半期毎・本決算を「発表・役所提出」用に2通り作成する。作業に費やされる労働・時間コストが膨大なものであることは理解できる。が、個人的には、四半期ベースの決算を求める。発表時から遡ること1週間は「情報漏洩防止」「情報開示の公平性」からサイレント期間となる。決算に絡んでくるような問い合わせは、全て「ノー」。不便を覚えたこともあるが、それ以上に私の様な商売を営む身には「期初計画」に対し「進捗具合はどうか」を3カ月1回知る意味は大きい。

 岸田首相の提言の動向を、見守りたい。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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