鉄道運転事故、新型コロナの影響で減少 輸送障害は増加で30年前の5.4倍に

2021年10月24日 16:35

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 国土交通省の発表によると、新型コロナの影響で人身事故を中心に鉄道の運転事故件数が減少している一方、線路内の立入りなどにより輸送障害の件数が増加していることが分かった。

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■運転事故件数は10年連続で減少

 22日、国土交通省鉄道局安全監理官室が、2020年度の「鉄軌道輸送の安全に関わる情報」を発表した。2020年度(2020年4月1日~2021年3月31日)における運転事故は前年度比132件減の483件となり、2010年度の872件から10年連続で減少した。事故の内訳では、列車事故が9件(前年度比:6件減、以下同じ)、踏切事故が165件(46件減)、人身傷害事故が283件(68件減)、物損事故が1件(2件減)。長期的に見ると減少傾向が続いており、発表にある1991年度の1,241件から約6割減となっている。

■死傷者数も長期的に減少傾向

 死傷者数は前年度比196人減の416人となり、2年ぶりに減少した。事故の内訳では列車事故が6人(前年度比:85人減、以下同じ)、踏切事故が117人(99人減)、人身傷害事故が285人(84人減)。このうち死者数は、列車事故がゼロ(前年と同じ)、踏切事故が74人(10人減)、人身障害事故が162人(7人減)となっている。

 1991年の信楽高原鐵道事故(死者:42人、負傷者614人)や福知山線岡踏切事故(負傷者341人)、2005年のJR宝塚線脱線転覆事故(死者:107人、負傷者562人)など大型事故があった年に死傷者数が増えることがあるものの、事故件数同様に長期的には減少傾向にある。

■新型コロナの影響で人身傷害事故が大幅減

 運転事故に占める割合で最も大きいものが人身傷害事故で、2020年度では運転事故全体の58.6%を占めた。30年間の推移を見ると、1991年度の409件から2001年度の316件まで減少傾向にあったが、そこから2010年度の463件まで増加。以後、2015年度(429件)まで7年連続で400件越えが続いていたものの、直近は5年連続で減少している。

 また人身事故における「線路内立入り等での接触」は年間200件前後で推移している一方、「ホームから転落して接触」と「ホーム上で接触」は2014年度の227件から減少傾向にあり、2020年度には97件(前年度比63件減)と急減した。新型コロナウイルスの感染拡大にともなうリモートワークの増加や行楽の自粛により、利用者数が減少したこともその要因となった。

■線路立入りなどで輸送障害が大幅増

 2020年度における輸送障害(列車の運休、旅客列車の30分以上の遅延等)件数は6,216件(前年度比:550件増、以下同じ)となり、2年ぶりに増加しただけでなく、ここ30年間で最も多かった2017年度の5,935件も超えている。1991年度の輸送障害は2,608件だったが、過去30年間で約2.4倍に増加しており、長期的に増加傾向にある。

 ただし内訳を見ると、2020年度は、鉄道係員、車両又は鉄道施設等の部内原因に起因する輸送障害が前年度比38件減の1,396件と減少。一方で、線路内立入り等の部外原因による輸送障害は同322件増の3,009件、災害原因による輸送障害は同266件増の1,811件と、増加した。1991年度は部内起因が1,241件、部外起因が560件、災害起因が807件だったため、2020年度は、部内起因が約12%増に留まるものの、部外起因が約5.4倍、災害起因が約2.2倍と大きく増加している。(記事:県田勢・記事一覧を見る

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