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中国の電力不足が示唆すること
中国にある発電所。[写真拡大]
●中国が深刻な電力不足
中国が深刻な電力不足に陥っている。
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特に遼寧省、吉林省などの東北地域での電力不足が深刻で、9月の終わりに第2級警報が出され、数十万世帯規模の大規模停電も起きている。停電・断水が常態化する恐れもある。
日系企業やテスラ・アップル向けの工場も操業停止に追い込まれており、サプライチェーンの混乱による世界経済への影響も懸念される。
年明けまで続くとの告知を出した会社が話題になるなど、長期化することは避けられそうにない。
天然ガスなどのエネルギー価格の高騰など、中国の電力を取り巻く環境は決して明るくない。中国恒大集団の問題以上に世界経済・マーケットに与える影響は大きい。
●電力不足の原因
そもそも中国は発電電源の3分の2を石炭火力に頼っている。
中国政府は、2060年までに二酸化炭素排出量を実質ゼロにすることを目標としており、石炭火力発電所の発電を抑制している。自国で生産していた石炭も供給が追い付かなくなっている。
外国から輸入しようとしても、石炭大国であるオーストラリアとの関係悪化により輸入制限をしており、輸入できない。石炭価格も上昇している。
頼りにしていた自然エネルギーも、風力発電の供給不安定さは世界中で起きており、未知数である。
●対岸の火事ではない!?
世界的にカーボンニュートラルを目指す方向に進んでいるが、二酸化炭素を減らして、自然エネルギーへの移行は一筋縄ではいかない。
二酸化炭素排出量の少ないLNGへの移行が天然ガスの高騰を招き、石油・石炭などのその他の化石燃料の高騰も招くという本末転倒になりかねない。
各国が目指すガソリン車の廃止も、電力の需要がさらに増えるだけで、電力の安定供給と二酸化炭素の排出削減を両立することは、容易でない。中国の電力不足は、その認識を広めたのではないだろうか?
ESG投資やSDGs投資は投資家へのアピールになるかもしれないが、インフレを招き、結果的に企業収益を圧迫してしまうという危険性もあると認識すべきなのかもしれない。(記事:森泰隆・記事一覧を見る)
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