保守派のツイート、リベラル派より中間層に届きやすい 東大らの研究

2021年10月7日 11:54

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ツイッター上のリベラルクラスターと保守クラスターの特徴(東京大の発表より)

ツイッター上のリベラルクラスターと保守クラスターの特徴(東京大の発表より)[写真拡大]

 東京大学や豊橋技術科学大学らでつくる国際共同研究グループは5日、1億2000万件を超える安倍晋三前首相にちなむツイートを解析したところ、保守派のツイートがリベラル派のツイートより穏健な中間層によく届いていることを明らかにした。ツイッターは浮動票の獲得に不可欠な若年層のユーザーが多いことから、今回の研究は、保守派が党派的言説の拡散や若年層の支持獲得で優位な立ち位置にいる理由を示唆したと考えられる。

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 毎日新聞によると、保守派とは、現状の制度や思想を尊重する立場である一方、英語の「自由な」に由来するリベラル派は、個人の自由を重んじる社会を変えていく立場を示す。選挙ドットコムが2021年1月に1000人を対象に行った調査によれば、保守派は全体の35.2%に上る一方、リベラル派は17.7%だった。残る47%は中間層との結果が出ている。

 政治的に保守が優位な中、研究グループは、ツイッターのリツイート機能に注目し、強い党派性のあるメッセージが中間層に及ぼす影響を調査。極端な意見を持つ党派的なクラスターから発信されるメッセージが中間層にどの程度届いているか、そのリーチに保守派とリベラル派で違いがあるのかを選べた。

 保守、リベラルの両クラスターが拡散したツイートが、党派性の薄い中間層に届いている程度を分析。中間層はリベラル派のツイートより保守派のツイートをリツイートする傾向がみられた。具体的には、保守派のツイートは23.3%が中間層によって拡散されているのに対し、リベラル派のツイートが中間層に拡散される割合は6.46%にとどまった。

 これらの現象が生じる理由について、研究グループは、フォローバックする確率にあると言及。保守派が中間層からフォローされる時にフォローバックする割合は61.8%であるのに対し、リベラル派がフォローバックする確率は51%と、10%程度低い結果となった。これにより、研究チームは、「リベラル派は保守派よりも内向きな傾向が強く、身内に向かって発信している」と結論づけた。

 研究チームによると、ソーシャルメディア上で保守派の方が中間層にリーチしやすいことは、若年層など、ネット上での無党派層の獲得競争で、保守派の方が優位な立場にあるという。これを踏まえ、研究チームは、リベラル派がソーシャルメディア上の影響力を高め、保守派と対抗するためには、フォローバックの割合を高めるなど、「中間層に受け入れやすいコミュニケーションを志向する必要がある」とした。(記事:小村海・記事一覧を見る

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