惑星状星雲の観測データを用いた系外銀河の研究 英ハートフォードシャー大学

2021年10月2日 16:25

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銀河系内惑星状星雲の代表格であるこぎつね座の亜鈴状星雲M27 (c) NASA

銀河系内惑星状星雲の代表格であるこぎつね座の亜鈴状星雲M27 (c) NASA[写真拡大]

 少しでも天文学について、かじったことのある人ならば惑星状星雲と聞けば、銀河系内にある美しい姿をした天体をイメージできるであろう。例えばこぎつね座の亜鈴状星雲M27の淡い光を放っている姿は、多くの人々に愛されている。だが今回取り上げる惑星状星雲は、そのような銀河系内にある存在ではなく、地球からさらにはるかかなたの世界に浮かんでいる、銀河系外宇宙に属している存在である。

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 英ハートフォードシャー大学の研究者らは、21個の系外銀河に属している1350個の惑星状星雲を観測し、その結果をカタログ化したと発表。論文は、9月29日付けの「Astronomy&Astrophysics」に掲載された。

 ウィキペディアによれば、惑星状星雲は、「超新星にならずに一生を終える恒星が赤色巨星となった際に放出したガスが、中心の星の放出する紫外線に照らされて輝いているものである」とされている。いわば比較的小さな恒星の成れの果ての姿である。

 だが、銀河系外にある惑星状星雲が放出する波長 5007オングストロームの放射は、かなり遠距離にあっても地球からの受信が可能で、その星雲が属するホスト銀河までの距離の特定にも利用できるという。

 今回発表された数多くの観測データを分析していくと、惑星状星雲からの波長 5007オングストロームの放射の強度と、それが属している銀河との距離との間には、高い相関性が認められるるという。この情報に基づき、系外銀河までの距離を正確に知ることが可能となる。

 さらに惑星状星雲の観測データは、系外銀河の恒星ハローの構造を調べるのにも役立ち、暗黒物質の含有量の測定も可能という。

 惑星状星雲は、どの銀河にもありふれた質量を持つ恒星の、成れの果ての姿である。今回の研究成果を用いれば、あらゆる銀河において、距離の測定や暗黒物質の質量測定が可能になる。従来以上により詳しく、銀河の進化のプロセスを解明していくのに役立つことだろう。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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