ダークマターを含まない超拡散銀河の起源 米カリフォルニア大の研究 

2021年9月8日 12:08

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左側は、シミュレーションで分析された超拡散銀河の1つ。右はほぼ透明な銀河群の画像。(c) ESA/Hubble

左側は、シミュレーションで分析された超拡散銀河の1つ。右はほぼ透明な銀河群の画像。(c) ESA/Hubble[写真拡大]

 従来は銀河の質量の約9割はダークマター(暗黒物質)であると考えられてきた。だが、最近になりダークマターをほとんど含まない銀河が発見され、新たな謎を呼んでいる。このような銀河を科学者たちは「Ultradiffuse Galaxies」(超拡散銀河)の略でUDGと名づけているが、なぜこのような銀河が形成されたのかについては謎に包まれていた。

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 米国カリフォルニア大学リバーサイド校は6日、このUDGが形成された原因に関する研究活動を公開したため、ここではその概要について紹介する。

 UDGは、質量から見れば矮小銀河に分類される規模で、そこに存在する星の数は数十億程度に過ぎない。だがその体積は、数千億もの星を有する我々の銀河系にも匹敵するほどのスケールを持つ。つまり、UDGは我々の銀河系に比べると密度が非常に希薄な銀河であるということができる。

 カリフォルニア大学の科学者たちは、UDGと同様の性質を持つ銀河(つまり急冷され、孤立した銀河)を想定したモデルを用いて、数値解析シミュレーションによって時間をさかのぼることを試みた。その結果UDGはもともとは銀河群を構成しており、衝突などの動的な事件を伴わない何らかの原因によって、まるで彗星のような軌道を描いて銀河群から飛び出して孤立状態となったことを解明した。

 つまりUDGの生い立ちは我々の銀河と何ら変わらないのだが(UDGは通常の銀河と変わらない体積を持つ)、あるタイミングにおいて銀河群から離れて孤立状態となった。そのような環境の中に置かれたため、非常に密度の希薄な状態へと進化を遂げたのではないかと結論付けている。

 銀河群の中においては、暗黒物質ハローが高い密度で存在しているが、UDGが進化してきた環境ではそれがほとんど存在していないということが、極めて密度が低い原因になると推論される。そのことがUDGが通常の銀河のように多数の星を生み出すことができなかったことにもつながっている。

 UDGの存在比率は銀河全体の約25%にも及ぶという。またUDGが多数見いだされる領域では、暗黒物質が非常に少ないことも明らかなため、この研究の成果が将来暗黒物質の謎を解明するための1つの糸口になるかもしれない。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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