鎌倉新書の一転「収益急回復」の裏側を覗く

2021年8月11日 16:36

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 「終活」関連事業を、ポータルサイトを軸に展開し成長階段を駆け上がってきた鎌倉新書が8月5日『鎌倉新書、常陽銀行の「ジェロントロジー」における取組に参画―地方銀行と初の提携で介護・相続・供養領域の相談先を担うー』と題するリリースを配信した。ちなみにジェロントロジーとは、「長寿に伴う認知機能の変化が経済行動等に与える影響を研究する学問」を指す。具体的な提携の枠組みは後述するが、この提携は鎌倉新書の今後を展望する意味で興味深い。

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 鎌倉新書の2021年1月期は、「0.8%減収、66.8%営業減益」と急反落した。コロナ禍の影響に加え、家族葬に象徴される「簡素な葬儀」という時流に晒された結果だ。が今1月期は「26.3%の増収(40億9000万円)、170.8%の営業増益(7億2000万円)」計画でスタート。開示済みの2-3月期も「前年同期比30.9%増収、4700万円の営業損失から1億5000万円の黒字転換」と、明らかな回復を示唆する立ち上がりとなっている。どう捉えればよいのか。

 鎌倉新書では前期の厳しい状況下でシンプルな葬儀志向の流れに対し、「家族葬のメリットデメリットを訴求するなど最適な弔い方を選択できる体制を整えている。また家族葬の受け皿として、お別れ会のプロデュースなどもしている」とした。

 「お別れ会」は終活のマッチング事業を展開してきた同社には、新規事業。プロデュース事業。「家族葬に参列できなかった友人や知人が集まる場で、どんなお別れ会をするのが最もふさわしいのか」「概要・時期・人数・予算」等を、プロデューサーが直接提案して実現する。例えばこんなお別れ会が実行されている。故人は、元少年野球の監督。野球のグラウンドを模した祭壇を作り、参加者始球式を行うという仕様。

 清水祐孝CEOは「従来の事業との相乗効果が期待される。ビジネスの展開の仕方は異なるが親和性が高い。『いい相続』といった事業も立ち上げている。担当スタッフが葬儀後の相続について専門家(士業)の紹介にはじまり、諸々相談にのる。その延長線上には、介護、保険、不動産に関する終活の悩み事が存在する。これらに網羅的に対応できる様々なビジネス展開を図り、『終活インフラ』企業へと舵を切る」としている。

   今回の常陽銀行との提携も、そうした流れの一環。高齢者の口座管理をする常陽銀行には高齢化社会の進捗の中で、1歩・2歩踏み込んだ対応が求められる。その中には「介護(施設)」「相続」「供養」に関する情報提供は、必須要件。そこを鎌倉新書が担う。リリースでは「全国の金融機関や自治体との連携を進めていく」としている。

 そうする一方で、こんな終活の在り方を具体化している。「いいお墓:オンラインお墓見学・相談サービス」「いいお坊さん:オンライン法要」「いい相続:オンライン三者面談」、「いい仏壇:オンライン店舗見学・相談サービス」。

 今期の収益計画は、第2ステージの鎌倉新書への号砲。新たな位相への止揚の歩みの表示といえる。

 清水氏は、「地域のサービスパートナーの拡大、関係強化で“いい相続”をはじめとした終活の提供サービスの幅を広げ、業容拡大に努める」ときっぱりと言い切っている。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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