資産運用を効かせた財産相続法 暦年贈与 + つみたてNISA + iDeCo

2021年6月26日 11:18

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 財産相続において、さまざまな節税対策が実際に行なわれているが、単に税金の控除を利用するだけでなく、同時に資産運用してしまうという方法を選ぶのはいかがだろうか。

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 年間110万円まで非課税となる暦年贈与で、子や孫に毎年遺産分けを行ない、その贈与金をつみたてNISAとiDeCoで確実に資産運用するのだ。こうすると、非課税相続になると同時に、相続財産自体が利益を生んで相続額を増額させることができる。

 まずつみたてNISAだが、これは年間40万円までの資産運用が非課税となる制度だ。投資で得た利益には年間20.315%の課税がなされるのだが、つみたてNISAの専用口座を使うことで非課税になる。しかも、最長で20年間の利用が可能ということで、長期資産運用でのメリットは大きいのだ。

 ちなみに、つみたてNISAで投資をする場合、金融庁の定める安全性の高い投資銘柄のみで運用する必要があるため、年間利回りはそれほど期待はできない。つみたてNISAによる直近の平均利回りを確認すると、国内株式で約1.4%、米株式で3.8%前後、全世界株式で3.6%ほどが相場だ。

 銘柄選びで利回り率は変わってくるが、年間3%前後とあれば、ローリターンの資産運用と言えよう。しかしながら、非常にローリスクであることも確かで、複数銘柄でポートフォリオを組めば損益発生リスクを軽減できるはずだ。

 ここで、SMBC日興証券のシミュレーションを参考に説明しよう。2000年から2020年までの20年間で、国際株式によるつみたてNISAで毎月3万円(年36万円)を資産運用した場合、実際の日経平均をもとに計算すると投資総額720万円に対し、資産は約2倍の1,469万円(配当金はふくまない)になる。しかも、利益における年20%の課税もない。途中リーマンショックの大暴落を挟んでなお、この数値をはじき出したのは魅力的だ。

 つみたてNISAは年間40万円までの積立しかできないため、暦年贈与110万円を行なう場合、まだ年間70万円もの余白が残る。これをiDeCo(個人型確定拠出年金)でカバーすることができるだろう。

 iDeCoは、掛金が全額所得控除される私的年金の制度だ。掛金の上限は職種によって異なり、自営業など第1号保険者なら、毎月6万8,000円(年間81万6,000円)が上限。公務員や会社員など第2保険者は月に1万2,000円か2万円か2万3,000円(条件別で設定)が上限。専業主婦など第3号保険者は、月2万3,000円(年間27万6,000円)を上限として保険金が掛けられる。

 なお、iDeCoの平均利回りは直近で年3%前後、60歳まで掛金を積立るなら、まとまった額の贈与金が資産運用に回せるだろう。

 このように、贈与者1人に対して、これほどの資産運用利益が見込めるとあれば利用しない手はないだろう。暦年贈与はきちんと手続きを踏むことで、20年でも30年でも連続贈与ができる。そのお金を資産運用することで、世代を超えて財産を増やす結果をもたらすのだ。

 ただし上記の方法を行なう場合、つみたてNISAもiDeCoも贈与するものが管理することが好ましい。また自分が管理して資産を増やすことで、贈与の喜びを増し加えることにもなる。(記事:TO・記事一覧を見る

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