月や地球のマントル内の炭素量はどのように決まったか 愛媛大の研究

2021年6月4日 08:32

印刷

核-マントル分化過程における炭素分配の想像図(画像: 愛媛大学の発表資料より)

核-マントル分化過程における炭素分配の想像図(画像: 愛媛大学の発表資料より)[写真拡大]

 愛媛大学は5月25日、実験室で太陽系誕生初期に存在していたと考えられている微惑星環境を再現し、月や地球が誕生した直後のマントル内の炭素量決定メカニズム解明に成功しと発表した。

【こちらも】月誕生の謎解明に近づくか 月から流出する炭素を世界で初めて観測 九大等

 地球で生命が誕生できたのは、マントル内の炭素量がそれに適していたためと考えられている。炭素量がどんなメカニズムで決まっていくのかを解明できれば、太陽系外の岩石惑星における生命誕生の可能性を推論することも可能になるはずであり、科学者たちにとっては非常に興味深い研究課題であった。だが、これまでこの疑問に対する答えは得られておらず謎のままだったのである。

 今回の研究では、コンドライトと呼ばれる熱による変成をほとんど受けていない、隕石の組成に近い試料を用いて、高圧条件下で液体鉄-マグマ間の炭素分配実験を実施。

 従来この種の研究では、地球全体が炭素で飽和している状況と同じ条件下で実験を実施していたが(つまりグラファイトカプセル内での実験を実施していた)、地球全体が炭素で飽和しているとは考え難く、誕生直後の地球の条件を再現しているとはいい難い面があった。そこで本研究ではグラファイトカプセルの代わりに、SiO2ガラスカプセルを使用して、炭素未飽和条件下における液体鉄-マグマ間の炭素分配実験を実施している。

 だが結果的には、グラファイトカプセルを用いた場合と変わらないデータが得られたという。つまり、微惑星がコンドライトと同程度の炭素量を含んでいた場合、マントルには飽和に近い量の炭素が分配されていたと考えられるのである。

 月も地球もマントル中の炭素量は飽和状態に近いものであったという今回の研究で得られた推論は、炭素量を決定するメカニズムの説明には十分な証拠になっているように思えるが、その正しさをより確実にしていくためには、より多くの高圧下での検証実験が必要であるとの研究者の見解も示されている。

 誕生直後の太陽系は、まるですすだらけのけむたい空間であったに違いない。すすのような粒子が大量に集積して、月や地球の源となった原始惑星が誕生したのだろう。その影も形も今からは想像もできない天体どうしが衝突を繰り返し、現在の月や地球の姿になったのであるが、その状況を実験室的に再現しようとする研究者たちのひたむきさには頭が下がる思いである。(記事:cedar3・記事一覧を見る

関連キーワード愛媛大学

関連記事