源泉徴収ありの特定口座による投資、損益通算と繰越控除の活用を

2021年5月18日 08:23

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 株式投資を源泉徴収ありの特定口座で行なっている人は、見逃してしまっているかもしれない節税制度を確認しておきたい。この源泉徴収ありの特定口座では、上場株式の売却のたびに利益が出れば20.315%の税金を口座管理の証券会社が預かり、損失が発生した取引時に徴収した預かり金を還付している。特定口座を利用することで確定申告が不要となり、納税の手間暇も省けるわけだ。

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 ただし、年間取引で赤字になった場合に注意が必要だ。それは株式の売却による所得では、損益通算と繰越控除という特例があることだ。この制度を利用せずに、無駄に税金を過払いしているケースがある。

 まず損益通算だが、株式投資は単に売却益だけが所得になるわけではない。配当や利子も所得として課税対象となる。またFXや投資信託、債券が生み出す利益や損失もあるが、これら金融商品の運用によって生じる利益・損失は互いに相殺することができる。

 特定口座で発生した利益は、他の資産運用で発生した損失と相殺し、すでに納められた税金から還付してもらうことができるのだ。その逆も同様で、特定口座の損失を他の利益から減額することもできる。

 次に、繰越控除も節税効果が高い。赤字申告をした年から3年間、この赤字額を繰越して、発生した利益から減額することができる。例えば50万円の損失が発生したとして、翌年20万円の利益が出ても、繰越控除で納税額がゼロ円となるわけだ。これが3年にわたって繰り越せるのだから非常に節税効果が高い。

 この手続きは、個人が確定申告することで調整できる。特定口座によって申告された内容に併せて、税務署で税計算がなされる仕組みだ。なお、すでに払い込まれた税金は還付申告で対応することが可能だ。税申告は面倒だと無視してしまうケースが目立つが、資産運用を効率的に進めていくには欠かせない対処だと言えるだろう。

 あとひとつ、源泉徴収ありの特定口座で注意すべきことがある。給与所得が2000万円以下で、資産運用益が年間20万円までの場合は確定申告をしなくても構わないという制度だ。つまり、年収500万円の人が株式のトレードで年間20万円の利益を出しても、4万円もの税金は払わなくても良いのだ。

 しかし、源泉徴収ありの特定口座では、とにかく利益が出れば税率に応じて自動的に納税されてしまう。本来であれば申告不要のケースでも納税してしまうため、この過払いの税金を何とかしなければならない。

 ただし、一旦特定口座から納税されたお金は、還付申告で返金されない点に要注意だ。その理由は、『給与所得が2000万円以下で、20万円以下の利益を得た人は確定申告をしなくても良い』とあって、非課税になる制度ではないからだ。自動的ではあるにせよ、一旦納税した場合は還付しないということで、あきらめるしかない。この損失をカバーするには源泉徴収ありの口座を解約し、他の口座を使う必要がある。(記事:TO・記事一覧を見る

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