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光合成するウミウシ、心臓含む体を切断しても完全再生可能 奈良女子大の研究
自切直後のコノハミドリガイ(奈良女子大学の発表資料より)[写真拡大]
海洋生物「ウミウシ」の仲間「嚢舌類(のうぜつるい)」で、心臓を含む頭部から胴体を切断しても、残った頭部から体全体を再生する現象を奈良女子大学の研究グループが確認した。複雑な構造を持つ生物が、体の大部分を失っても生存し、再生する事例はまれだという。研究チームは、嚢舌類の自切、再生能力について調査を進め、将来的に再生医療の研究に生かす。
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ダイビング情報サイト「Marine Diving web」などによると、ウミウシは、殻が退化して消失した巻貝の一種。頭から生える触覚が牛の角のように見えることが由来で、英語でsea slug(海のナメクジ)と呼ばれる。
ウミウシは分類学上、貝殻が残る頭楯(とうじゅん)類や、アメフラシ類、日中は砂中に潜む背楯(はいじゅん)類など、8グループに大別される。今回研究対象になったのは、姿や形が千差万別の嚢舌(のうぜつ)類だ。
研究テーマに設定されたのは、動物が尾や足を自ら切断する「自切」と、切断後の再生。食べた海藻を取り込んだ葉緑体に光合成できる「コノハミドリガイ」と、「クロミドリガイ」の2種で、自切と再生が起きるかを調べる生態調査が実施された。
すると、被験対象個体の約3割に当たるコノハミドリガイ5個体と、野外で採取されたコノハミドリガイ1個体で、頭部と体の自切が確認された後、頭部は3週間で完全な体に再生するという現象が確認された。切り離された体部は、光や接触刺激に反応して110日間生存したが、再生は見られなかったという。
同様の自切と再生の動きは、被験対象個体の4%に占めるクロミドリガイ3個体でも確認された。再生に成功したクロミドリガイは、カイアシ類が寄生されているなどの特徴があったという。
2種のウミウシが自切した原因は分かっていないが、研究グループは、少なくともクロミドリガイでは、産卵を抑制する寄生者を排除する目的があったのではないかと推測。自切には、長い時間がかかるため、「捕食回避の可能性は低い」とした。
研究チームは、「心臓のような複雑な臓器を含めた体の大部分を再生する能力が確認されたのは初めて。再生能力が高い組織や細胞の採取や移植実験を行うことで、再生医療にも活用できる」と話している。研究成果を掲載した論文は、米科学誌カレント・バイオロジーに3月8日付で掲載された。(記事:小村海・記事一覧を見る)
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