障害者の就業に関する一考察:下

2021年3月10日 08:04

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 昨年9月30日付けの企業・産業欄に『世に有益な企業には株式市場も「エール」を送る!』と題する記事でウェルビー(東証M)を取り上げた。18歳以上65歳未満の障害や難病を持つ人に対する就労支援(履歴書の書き方から機能訓練・企業選択・面談フォロー等)を行っている。詳細を是非とも再確認してほしい。

【こちらも】障害者の就労に関する一考察:上

 ところで3月1日から、障害者(民間企業)の法定雇用率が2.3%に引き上げられた。障害者雇用に対しては「前向きに取り組みたい」とは思いながらも、「どう対応していったらよいのか」と悩む企業の担当者も少なくないと聞く。

 その意味で、興味深い企業が存在する。東証1部上場のエスプール。ビジネスセグメントは「人材ソリューション事業」と「農園事業」。+「EC通販のロジスティクスアウトソーシング(EC企業の発送代行)事業」。人材ソリューション事業の主力は人材派遣サービス。ここにきて、コールセンター事業が好調だ。「社員1人+スタッフ3人のグループ型派遣」が特徴。

 そして「農園事業」が、障がい者(エスプールでは、こう表現する)の就労をフォローする事業。東京・埼玉・千葉・愛知の1都3県に22の農園(屋外型・屋内型)を整備している。障がい者雇用に取り組みたい企業と就労したい障がい者を結びつける、いわば「貸農園」だ。エスプールの農園を知るアナリストは、特性をこう説明する。

★ストレスフリー: 開放的な広々としていて、都会の喧騒が苦手な障がい者も生活のリズムを整えやすい。

★グループ派遣: 主は雨天でも作業が容易なビニールハウス。ここに就労者2人にサポートスタッフ1人が派遣される。目が届き、就労者も働きやすい。グループ型派遣は、人材ソリューション事業で培ってきた10年のノウハウが生かされている。

★安全性: (危険な)農機具などは使わない。パミス(軽石)を使用した栽培法が行われている。

 2020年11月期の「19.9%増収、38.9%営業増益、46.0%最終増益、1.3円増配3.30円配」と6期連続の増収増益に続き今期も、「18.0%の増収(248億円)、12.2%の営業増益(25億円)、3.5%の最終増益(16億3500万円)、0.8円増配4.10円配」と連続増収増益増配計画で立ち上がっている。株価も2月初旬に1100円台まで買われ調整場面だが、4桁台実現は「障がい者雇用支援」展開へのエールと捉える。

 障害者雇用といっても一様ではないが、障害者を生かすことは国として必須の機能と考える。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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