ドル保有のスワップポイントによる資産運用、米長期金利が1.5%超の間はメリットか

2021年3月6日 18:58

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 アメリカ大統領にバイデン氏が就任して以降、ドル/円の為替相場が反転し、1月6日の1ドル102.592円を大底にして急激なドル高・円安トレンドに突入した。それまでは一貫してドル安相場が展開されてきたが、まるでバイデン大統領がアメリカ経済をステップアップさせるかのように、いわばご祝儀相場のようなドル高トレンドには注意すべきかもしれない。

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 実は、トランプ前大統領の就任時にも、急激なドル高・円安があったことを覚えているだろうか。就任前まで一貫したドル安・円高が進行しており、もはや100円割れは確実と思われていたところ、トランプ氏就任を合図に一気に10円以上もドル高に振れたのだ。

 ただし、トランプ氏の大統領就任時と今回のバイデン氏就任時とでは、バックボーンとなるファンダメンタルが異なっている点に注意したい。

 まず注目すべきは、米長期金利の推移である。トランプ氏が大統領に就任した2017年1月、米10年債の金利は2.6%と上昇トレンドにあったが、就任後すぐに金利が下落しはじめ、半年かけて2.0%と3割近く低迷している。しかし、ドル円相場は1ドル100円台から一気に112円後半まで上昇してピークアウトした。

 その後米10年債は、2018年11月まで1年かけて3.2%まで駆け上がるが、ドル円相場はゆるやかに下落トレンドへ移行していった。つまり、長期金利とドル価値が連動していなかったということだ。

 だがバイデン氏就任のケースは全く逆で、米10年債の金利は2018年10月まで上昇トレンドを形成。3.1%超のピークを付けてから下落相場に入り、コロナ禍による量的緩和・低金利政策によって、2019年12月(大統領選挙後)までに7割強も下落して0.826%を付けた。

 一方、ドル円相場は2018年11月に1ドル114円から103円割れまで落ち込んだ。そしてバイデン氏の就任を機に、米10年債が3月5日付けで1.58%まで跳ね上がっており、今回は明らかに米長期金利を原動力にドル高・円安が進行している格好だ。

 次にドル高ファクターとして、原油の先物価格の推移も確認する必要があるだろう。

 まず、トランプ氏就任の2017年1月から半年間、ドル円相場は10円以上のドル高となったが、反対にWTI原油先物は1バレル55ドルあたりから42ドルま下落した。一方、2019年の大統領選挙の結果が出た11月以降、原油は32ドル台からまっすぐ66ドルまで駆け上がってきた。

 それ以前はコロナショックでマイナス20ドルを付けたこともあるほど低迷しており、継続的な上昇トレンドではあるのだが、今回の原油価格上昇がドル円相場を押し上げた一因であることは明らかだ。

 もちろん、この他にもドル高の要因は多面的に確認できる。コロナショックによって株式相場は大幅に下落をしたが、いち早く回復基調を整えたのがニューヨーク市場であり、2020年12月の高値更新とダウ平均の3万ドル突破は、世界中の投資資金をかき集める要因となった。つまりドル買いの始まりだ。

 また、新型コロナワクチンの接種開始が早かったアメリカに対し、日本が大きく遅れをとったこともある。オリンピック開催も今一つはっきりしないこと、たとえ開催しても大きな経済効果が期待できない現実など、2021年に入ってからはドル高・円安の要因が目白押しだ。

 やや論点がずれてしまったが、総括するとトランプ氏就任時のドル高と、バイデン氏就任のドル高は全く内容が違うということだ。トランプ氏の場合は、彼が打ち出す経済対策の明快さ・積極性が評価され『アメリカの独り勝ち状態』が明確となったが、今回はあくまでもFRB(米ドル発行権を持つ民間銀行)主導の経営戦略の側面が強い。

 コロナ禍でかつてない超低金利へと舵を切らざるを得なかったFRBは、他国通貨の金利よりも一足先に金利のより戻しを図った。これにより一時的にドルが買われているのが現状であり、為替金利の上昇が一服すれば、再び超ロングレンジのドル安トレンドへ落ち着く公算が高いだろう。

 また、原油価格の高騰は金融主導による米シェールガスへの優遇措置ととらえることもできる。価格が上がったことで米シェールガスは採算ベース(1バレル50ドル)をクリアしたこと、OPECプラスの減産縮小をついて意図的に原油価格を釣り上げているともとれる。だが脱炭素への取組が世界全体で加速することから、原油の下落トレンドも変わらない。

 となれば、今回のドル高・円安はそう長くないと考えてもよさそうだ。つまりドル買いで売買益を稼ごうという発想はハイリスクかもしれない。デイトレ式のFXトレードは、基本的に長期スパン型資産運用には不向きな面がある。

 そこで資産運用のポイントだが、米ドルの長期金利が1.5%を超えている期間中、資産の一部を米ドルに変換して、『円とドルの金利差によるスワップポイント』をコツコツ稼いでおくぐらいが適切かもしれない。ポイント還元を利用した貯金ぐらいの位置づけで、この期間中のドル保有はメリットがありそうだ。(記事:TO・記事一覧を見る

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